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判例 5

2017-10-02 15:17:52 | マレーシア法務

皆様こんにちは。Tokyo Consulting Firm Sdn. Bhd.の佐藤です。

今回は人事評価に関する判例を解説していきます。

 

<概要>

2014年5月5日から、P社のSenawang拠点にて、C氏はFinance Sub Managerとしての雇用が始まった。当初、試用期間は3ヶ月であり、彼女の上司は、Senawang拠点のGeneral ManagerであるS氏と、KL本社で会社全体の管理をしているFinance ManagerのL氏の2名である

2014年7月24日に行われたC氏の最初の人事評価では、L氏によって「平均」と評価された。人事評価のフォームには、L氏から「試用期間の延長はいらず、Confirmation(試用期間を終え、正式に雇用を開始すること)に適している」「試用期間終了後、400RMの昇給を薦める」というコメントが添えられていた。しかし、「承認欄」には誰からの署名もなかった。

2014年9月12日、「試用期間の延長」というタイトルのレターが送られた。C氏の改善箇所が記載されたリストとともに、9月いっぱいまで延長されることが記載され、Senawang拠点の上司であるS氏によって署名もされている。しかし、C氏はこの延長を承諾せず、Letter of Acknowledgement(承諾証明)にも署名しなかった。

2014年10月14日、S氏はC氏に、12月31日に退職を申し出るよう口頭で要求し、C氏はそれを拒否した。10月中は定期的に、辞めるようプレッシャーをかけてきたが、拒否し続けた。

しかし、2014年11月3日、P社は「雇用終了」のレターを発行し、同年12月4日がC氏の最後の出勤日であると通達した。C氏は、出産を控えていたが、できる限り働きたいと考えていたため、2014年12月4日までではなく、せめて2015年2月まで働かせて欲しいとP社に希望した。会社は、同情の余地があるとして、2月までは難しいが、12月末までに雇用を引き伸ばし、12月分までの給与を払うことに同意した。

2014年12月末に解雇されることになったが、2014年7月24日の評価で一度Confirmationが認められたにも関わらず解雇をするのは、不当解雇に値するとして、C氏がP社を訴えた。

 

<従業員側の訴え>

 2014年7月24日の評価で、L氏から正式な雇用を認められており、400RMの昇給も約束されていた。しかし、10月14日に会社には辞職を申しでるよう強制された。

2014年7月22日にL氏から送られたメールには、KPIの結果が添付されており、評価フォームについては、形式上の目的で人事部とSenawang拠点の上司であるS氏に送られるとあった。

しかし、人事部の担当者やL氏に、その後の状況についてたずねようとしても避けられており、Senawang拠点のGeneral ManagerであるS氏に尋ねるように言われた。2014年8月15日と8月22日に、S氏に問い合わせたが、S氏は答えをくれず、L氏に尋ねるように言われた。評価から1ヵ月半後の2014年9月12日、P社から2週間の試用期間延長のレターを受け取った。しかしその内容は、最初の評価を否定するものだった。同年10月13日、C氏がS氏にConfirmationの状況について問い合わせたところ、C氏のパフォーマンスやKPIには何の問題もないと答えた。しかし、職務記述書に記載されている職務をはたしていないという理由で会社の期待にそぐわないと判断され、契約を終了する意向であると主張された。

 

<会社側の訴え>

 最初の評価で正式な雇用を開始すると通達されたとC氏は言っているが、その評価フォーマットには誰からの承認も降りていないため、これは無効である。

 その後8月14日のC氏とL氏の間で行われたミーティングでは、Confirmationに適していないと判断した理由について、C氏が業績を上げなければならないということと同僚との友好的な関係を築くことであるとC氏に伝えた。そのミーティングにて、2014年9月末まで試用期間は延長されたこと、そして改善できなかった場合には雇用契約を終了するということをC氏には口頭で伝えてある。よって、正式な雇用はされておらず、解雇までずっと試用期間であった。

また、会社の人事評価に基づき、正式な雇用には適していないと判断した。2回目の評価では、主要能力の達成度の項目が「期待以下」と評価されており、部門への個人な貢献度の項目も「平均以下」と評価されていた。評価フォームに記載されていたS氏によるコメントも、好ましくないという内容のものだった。KPIも満たしていなかった。また、S氏はC氏の日々の働き振りを見ていて、部下やコンサルタントに対する態度やリーダーシップの質、Finance Managerとしてのパフォーマンス能力について深刻な問題があると判断し、それをL氏に通達していた。S氏が行った、部下や他部署との360度評価でも、C氏は良い評価を受けていなかった。雇用するかしないかは、このような評価に基づいて、判断されている。

解雇通知にもあるとおり、9月からの人事部門やS氏との様々な話し合いのあとでも、何も変わることはなかった。解雇は不当な理由によるものではなく、また正式な手順を踏んで行われたものである。

 

<判決>

 従業員側の訴えを却下し、本件は正当な解雇とする。正社員へのConfirmationは行われなかったものとし、解雇も正当な評価をもとに判断されたことがわかる。また、正式な手順を踏んでいることからも、会社側による不当な解雇だとは言えない。

 

<裁判所の見解>

 Letter of Appointment(採用通知)には、正社員へのConfirmationについて、試用期間の終了前か終了時に書面での通達がなされると明記されており、S氏からの署名もある。Confirmation Letterは発行されていないにも関わらず、C氏はP社に正式に雇用されたと訴えているが、7月以降の昇給もなく、正式なレターも発行されていない事実から、C氏は正式に雇用されたとは言えない。

 試用期間中に行われた最初の評価に対しては、C氏を雇ったS氏による署名も承認もなかった。S氏は、雇用契約上に署名していることと、SenawangにいるC氏の上司であることから、L氏とは別に、C氏の評価に対して権限を持っている適任の人物である。そのため、S氏からの承認が無かった最初の評価は不完全だといえる。

正式な書面での証拠がない限り、従業員がConfirmationを主張することはできない。また、当初L氏が正式な雇用を始めても良いといったのは、L氏個人の判断に基づくものであり、会社の経営層は確実に同意できないものであった。C氏自身も、自分がConfirmationに適しているという証拠を提出していない。このことから、C氏は解雇までの間、正式に雇用されていたわけではなく、試用期間であったと判断できる。

評価については、C氏は自身の年間KPIを達成したといっているが、7ヶ月しか勤務していないこと、そして2014年12月の会社の測定が終了した時点での評価からみるにKPIは達成できていない。

また、自主退職するようにS氏に強制されたとC氏は言っているが、C氏自身の証言のほかに証拠となるものは何一つ提出されていない。いずれにせよConfirmationを許可しないということは、契約を終了するということになるため、そもそもS氏が自主退職を強制する理由がない。S氏との関係が悪かったがために証言した可能性があるため、このような裁判に持ち込んだと考えられる。

 

<判決のポイント>

 今回は、会社側が証拠として提出した書類が正式に効果のあるものだと認められ、逆に従業員側の言い分には証拠が無かったことから、C氏の訴えは却下されました。

 試用期間の後、Confirmationは書面で通知されるということが、採用通知に明記されていることや、Confirmationの可否や昇給の有無は、公平な評価のもと判断されているということが証明できるかどうかが、今回の裁判では注目されました。KPIの設定や、周囲からの評価を正式に行い、書面に残し、それを用いて従業員とのコミュニケーションをとることが重要です。

今回の場合、Confirmationの決定や評価の責任者が不明確であったこと、承認が降りる前にConfirmationの可否や評価内容を従業員に伝えてしまったことが、今回の従業員の訴えへとつながりました。正確な手順を踏んで従業員にその結果を通達することで、従業員が会社に持つ不信感を無くし、このようなトラブルを回避する必要があります。

 

それでは今週も頑張っていきましょう!


 

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