Love wishing to the "Book"

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都筑道夫 『退職刑事2』

2008年07月20日 01時55分32秒 | ミステリ


刑事である五郎の父親は、昔は硬骨の刑事として活躍していたが、現在は恍惚の退職刑事となった。
暇をもてあました父は、頻繁に五郎の家を訪れては、彼が現在格闘している事件の話を聞くことを楽しみとしていた。
また、その様に話を聞くだけで、父はどんな不可解な事件にも解答を見出してしまうのである。
そんな父を五郎も頼りにしているのであったが、さて、今回の事件は・・・?

「探偵」が自分の椅子から一歩も動かず、与えてもらった情報だけを手がかりに事件を解決する・・・
そんな形式の探偵を「安楽椅子探偵」と呼びます。
『退職刑事』シリーズはそんな安楽椅子探偵を主人公とした作品。
探偵を務めるのは元刑事の父親で、情報を与える「ワトソン」役が、その息子で現職刑事の五郎です。
安楽椅子は五郎の家の一室だったり、病室だったりするのですが、話の中でその場所はずっと固定されます。
五郎の父はその固定された場所で事件の話を聞くだけで、解決してしまうのです。
1は以前読んで、今回読んだのはその続編なんですが、主要な登場人物はひたすら父と息子です。形式も同じです。ちなみに短編集。

いやぁ、凄い。そんなことからこんなことまで分かるのかよ?!という驚きの連発!
「論理のアクロバット」と評されていますが、正にその通り。脱帽。
ほんの僅かな、しかも自分で見てもいないてがかりから様々な推理を導き出し、それらの積み重ねで解答を出す・・・美しい!
全く意味不明な事件や不可解な行動に、合理的な解決が与えられていく過程は非常に気持ち良いです。
パズルが少しずつ解けていく、そんな感覚が一番近いでしょうか。
先入観を無くし、物事を多角的に見る・・・そうすることで新たな道が開けることもある。
そんな事を学びましたw
あと父親と息子の会話の醸し出す雰囲気が非常に素敵だと思いました。
何というか、お互いをよく理解している親子って感じで。将来そんな関係になれたら良いですよね。

そんな本作ですが、短編のどれもがひたすら事件の話を聞いて解決する話なので、単調と言えば単調な気がします。
通しで読もうとすると途中でお腹いっぱいになってしまうでしょうw僕はそうなりました。1話1話に濃密な推理が凝縮されていますから。
他の本の合間合間に読むのが最も美味しい味わい方だと思います。