ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

スラムドッグ$ミリオネア

2009年04月21日 | 映画館で見たばっかり篇
オスカーをとらなかったら、この映画に5ツ星をつける人が何人いたことだろう。普段は辛口の評論家たちも本作品に関しては口をそろえたようにベタボメするが、実際映画を見てみると「期待したほどではなかった」というのが正直な感想だ。世界的ベストセラーの原作を読んでから映画鑑賞したのいけなかったのだろうか。主人公の名前をはじめ、いたるところに修正が加えられているこの映画にある種の違和感を覚えたのである。

インド国内の宗教紛争に関係する主人公の名前の由来、魑魅モーホーが跋扈するボリウッド業界事情、狂犬病におかされて絶命する言語障害の少年、DVにさいなまれる隣室の少女、アンチエイジングに精神をむしばまれる元大女優・・・。原作に散りばめられた魅力的(だが残酷)なエピソードが、ことごとく削除され改ざんされているのだ。これはあくまでも自分の想像だが、(ダニー・ボイルがオリジナルにこだわったというよりは)製作的にレーティングやコンプライアンスにひっかかりそうな箇所を予めオミットしてから撮影開始したのではないだろうか。下手にキャストを増やした挙句、元々低かった予算を食いつぶす展開を避けたという見方もできるだろう。

そうでなければ、伏線をはりめぐらせた魅力的なストーリーの原作をあそこまで変えた理由が他に見当たらないのである。世界最大級のスラム街を描いているわりには、殺菌消毒されたような物足りなさを微妙に感じてしまうのだ。無学の主人公が英語を話せるようになった理由や、そもそもなぜクイズ番組に主人公が出場したのかに、原作の中ではより納得感のある説明が加えられているため(映画とはちがって)すんなりとストーリーに入っていける。別に原作至上主義を標榜しているわけではないが、この映画の脚色に関しては(面白さという点で)修正の必要性を感じないのである。

ストーリーについては原作に一歩(いや三歩ぐらいか)ゆずるものの、特に映画の中で流れるハウス風インド音楽の使い方が絶妙にうまい。『トレインスポッティング』でも感じた選曲センスの良さはダニー・ボイル作品共通の長所といえるだろう。音楽にあわせて大勢の出演者が踊るボリウッド的演出をエンドロールでのみ見せていたが、いっそのこと全編を通じてミュージカル風にしてしまった方が、(オスカーは逃したとしても)またちがった面白さを引き出せたかもしれない1本だ。

スラムドッグ$ミリオネア
監督 ダニー・ボイル(2008年)
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1 コメント

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はじめまして (zooey)
2009-05-09 23:07:20
私はこれ、映画を観てから原作を読んだのです。
それが正解だったと思います。
その反対だったら、確かに物足りなさを覚えたでしょうね。
私も原作と映像とは別物だと思いますが、
あの映画では、納得できないところが多々あります。

>伏線をはりめぐらせた魅力的なストーリーの原作をあそこまで変えた理由が他に見当たらないのである。

同意します!
TBさせて頂きますね。

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