ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

HANA-BI

2010年06月14日 | なつかシネマ篇
北野武は本当に優れた映画監督なのだろうか。ヴェネチア金獅子賞受賞の本作は、タイトルのつけからして外国仕様、台詞を極力排除した演出はフィルム・ノワール風で、いかにも海外マーケットを意識した作りになっているせいか、日本における興行はいま一つ観客の受けもあまりよろしくなかったようだ。北野自身が絵筆をとったといわれる、うまいんだか下手なんだかよくわからないアートも、芸術のフリをしたあざとい子供のいたずら描きのようで、素直には受け入れかねるのである。

海外のお土産屋で日本語で話かけられるとつい財布の紐がゆるんでしまうものだが、海外の○○賞に輝いた作品に対しては得てして国内の評価も甘いようだ。カイエ・ド・シネマにやたらと持ち上げられるボン・ジュノではないが、地に足がついていないまま映画を撮りつづけると北野武もまた“裸の王様”で終ってしまう危険性が十分にある。しかしながら、商業的に利用されているかもしれないという自覚はご本人にもあるらしく、最近では『アキレスと亀』のような自虐的な映画も撮っている。

余命わずかの妻(岸本加代子)を介護しながら、チンピラヤクザを殺しまくり自滅にいたる暴力デカ西(北野武)の転落人生。台詞と台詞の間に独特の余白があり、そこに殺伐とした風がびょうびょうと吹いている、そんな印象が残る1本だ。チンピラになめた口をきかれるたんびに血の雨を降らせる西は、本物のヤクザ屋さんの方がよっぽどガマン強いのではないかと思われるほどのキレっぷりである。

北野作品の特徴ともいえるこの暴力シーンのオンパレードは、好き嫌いがハッキリとわかれるところだろう。現在公開中の『アウトレイジ』にしても、カンヌでは途中退席者続出だったらしい。本作においては、下半身不随になった刑事(大杉漣)が絵を描くシーンや、妻役岸本との無邪気なやりとり、漫才ネタっぽいコメディシーンなどが、バイオレンス描写の中和剤としてわざとらしく挿入されているが、お世辞にもうまく融合できているとはいえない。

芸術なのか、それとも金満タレントの道楽なのか。真の評価は彼の死後ハッキリと固まることだろう。

HANA-BI
監督 北野 武(1997年)
〔オススメ度 

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