ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

Past Lives/再会

2024年04月11日 | 映画館で見たばっかり篇
もしも経験値のある映画監督だったら、ラストあんな不粋なエンディングには持ち込まなかったことでしょう。ウディ・アレンの『マンハッタン』のように雨に濡れるNYを舞台に、24年ぶりに再会した幼なじみの韓国人男女を、リチャード・リンクレーターの『ビフォア・シリーズ』のような演出で描いてみせた本作は、アングロ・サクソン系の評論家筋にはなぜかすこぶる評判がよろしいのです。確かに現在の韓国映画界は才能あ . . . 本文を読む

オッペンハイマー

2024年03月31日 | 映画館で見たばっかり篇
実は本作の原作になっている『アメリカン・プロメテウス』を、映画鑑賞前の予習用として、数ヶ月前に図書館から借りてこっそり読んでいた私。どうせノーランのことだから、原形をとどめないほどに(複雑に)脚色しているに違いないと予想したからである。しかしこのアカデミー7部門受賞作品を実際に拝見させていただくと、(かなりハショってはいるものの)ピューリッツ . . . 本文を読む

落下の解剖学

2024年02月25日 | 映画館で見たばっかり篇
タイトルはオットー・プレミンジャー監督『ANATOMY OF A MURDER(邦題;或る殺人)』からの引用だろう。ジェームス・スチュアート扮する弁護士が、女房を寝とった酒場の主人を殺した軍人の無罪を勝ち取るお話だ。売れっ子作家の女房サンドラが同じく作家の旦那サミュエルを殺したのか、はたまた単なる自殺だったのか、を問うリーガルミステリーという点は共通してい . . . 本文を読む

瞳を閉じて

2024年02月12日 | 映画館で見たばっかり篇
ビクトル・エリセも今年で84歳、おそらく本作が遺作となることだろう。本人もその点は十分承知の助で、この『瞳を閉じて』を通して映画人生の集大成をやろうとしている。が、困った点が一つだけ。なにせ半世紀以上のキャリアの中で本当の意味で完成にこぎつけた長編作品は『ミツバチのささやき』の1本だけなのだ。次作『エル・スール』はプロデューサーに後半1/3をカットされ、本作におけるエリセの分身であるミゲル同様、本 . . . 本文を読む

コット、はじまりの夏

2024年02月01日 | 映画館で見たばっかり篇
両親からネグレクトされた物静かな9歳の少女が、夏休みの間子供のいない親戚宅に預けられ、自分の居場所を見つける単なるビルドゥングス・ロマンとして見たら、この映画面白くも何ともないのです。高々数週間を一緒に過ごしたくらいで、血も繋がっていない叔父さんのことを「パパ」と呼んですがりつく少女の姿にまったく共感できなかったのですが、映画をご覧になったみなさんもきっと「ベルリンでグランプリを受賞するほどの作品 . . . 本文を読む

哀れなるものたち

2024年01月28日 | 映画館で見たばっかり篇
スコットランドはグラスゴー出身の小説家アラスター・グレイの同名原作を映画化。ランティモスによれば、かねてから映画化の機会を虎視眈々と狙っていたそうで、原作者がランティモス監督『籠の中の少女』を観てえらく気に入ってくれたらしく、めでたくOKがもらえたそうなのだ。こんなおもろい小説なんで誰も映画化せいへんの?と以前からランティモス自身不思議に思っていたらしいのだが、それにはちゃんとした理 . . . 本文を読む

君たちはどう生きるか

2023年12月31日 | 映画館で見たばっかり篇
『君たちはどう生きるか』の“君”=宮崎駿自身のことであり、『俺はこう生きた』とタイトルするのがむしろふさわしい内容だ。宮崎駿が師匠として敬愛している大先輩故高畑勲に“サヨナラ”を言うために(引退宣言を撤回してまで)作られた、スタジオジブリの超内訳ネタアニメーションなのである。その製作風景を取材したNHK特番『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見なければ、口先だけの青サギ=鈴 . . . 本文を読む

ファースト・カウ

2023年12月27日 | 映画館で見たばっかり篇
『パーフェクト・デイズ』で寝落ちしたあなたは、本作では完落ち間違いないのでよっぽど体調がよろしい時の鑑賞をおすすめする。それぐらい眠気を誘う映画なのだ。基本台詞少な目でヒーリングな劇伴も最小限に押さえられ、かつ、本作に関しては森の中の薄暗いシーンが大変多いため、気がついたら場内が明るくなっていた、なんてことのないように十分な注意が必要な1本だ。冒頭けたたましいエンジン音をたてながらコロラド川を上っ . . . 本文を読む

PERFECT DAYS

2023年12月24日 | 映画館で見たばっかり篇
ヴィム・ヴェンダース(以下WW)によれば、ポスト・コロナにおいて人は“孤独”とどうむき合っていけばよいのか、その好事例を本作で描きたかったという。日常のちょっとした変化にも喜びを感じる主人公の姿は、WWの弟分にあたるジム・ジャームッシュ(以下JJ)監督の『パターソン』に重なった方も多かったことだろう。しかしその着地のさせ方には、JJの非常にパ . . . 本文を読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

2023年11月11日 | 映画館で見たばっかり篇
ネイティブの皆さんが円陣になって踊る〈花〉に見たてたラストの真俯瞰カットを見る限り、本作はその昔オイル利権を握っていた世界一裕福な先住民オーセージ族を次々と殺めていくホワイトたちの物語である。資産家の先住民の皆さんをまるで物を扱うように射殺したかと思えば、毒入りウィスキーや糖質タップリの食事でじわじわと弱らせていくえげつない手口。金のためなら手段を選ばない極悪非道の白人たちをこれでもかと醜く描いた . . . 本文を読む

ザ・キラー

2023年11月02日 | 映画館で見たばっかり篇
完璧主義の殺し屋(マイケル・ファスベンダー)が暗殺に失敗、雇い主から受けた報復への仕返しを殺し屋が実行していく、という非常に単純(シンプル)なストーリーだ。『ファイトクラブ』のようなオチを期待していた観客の皆さんは肩透かしを食らったように感じるだろうが、元々ストーリーテラーではない映像作家デヴィッド・フィンチャーの作風を知る者はほぼ納得の1本 . . . 本文を読む

ザ・クリエイター/創造者

2023年10月28日 | 映画館で見たばっかり篇
「この映画は日本へのラブレターなんです」ギャレス・エドワーズのこの発言は、衰退著しい日本に対する単なる社交辞令なのだろうか。お隣の中国に比べるとマーケットへの影響力は格段に見劣りするものの、なぜか本SFは日本のサブカルへのオマージュに拘って作られているようなのである。西洋、東洋、そしてAIと、3者の視点がチャプター形式で強調された本SFは、やはりエドワーズが敬愛する黒澤明『羅生門』へのリファレンス . . . 本文を読む

怪物

2023年08月31日 | 映画館で見たばっかり篇
長野県諏訪市のとある公立小学校で起きたパワハラ事件を巡る三者(母親、教師、生徒)の視点。“クィア”な存在に対する社会の偏見はどのようにして生まれるのか、という問いがそこから浮かび上がってくる、なかなか巧妙なシナリオだ。かつてオーストリアの巨匠ミハエル・ハネケは、ファシズムの精神的起源が宗教的不寛容にあることを『白いリボン』の中で暴露して見せた。是枝裕和と坂元裕二が、さら . . . 本文を読む

ミッション:インポッシブル デッドレコニンク PART ONE

2023年07月27日 | 映画館で見たばっかり篇
見てきましたよ『デッドレコニングPART ONE』。トム・クルーズが自身の体をはった命がけのスタントシーンがもはや名物化している本シリーズ。『運命のダイヤル』に81歳で出演したハリソン・フォードを引き合いに出して、本人は80歳までやり続けたいとコメントしているが、実際のところはどうなのだろう。61歳というトム・クルーズの年齢もさることながら、今回2部作という構成が、『ハリー・ポッター 死の秘宝』同 . . . 本文を読む

aftersun/アフターサン

2023年05月26日 | 映画館で見たばっかり篇
2022年のベストムービーにあげる評論家も多い、イギリス期待の新星シャーロット・ウェルズによる自伝的ヒューマンドラマ。しかし、公開初日に見た感想を正直に申し上げるならば、その評価少々盛られすぎのような気がする。何せ本人がカミングアウトしているのかどうかもよくわからないのだが、そのファッションや髪型からして監督シャーロットおよびその分身ソフィはレズビアンであり、その父親カラム(ポール・ . . . 本文を読む