ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いおやじの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ベニスに死す

2017年10月03日 | 星5ツです篇
マーラー第5交響曲第4楽章アダージョが流れる中、主人公グスタフ・アッシェンバッハ(ダーク・ボガート)の乗った汽船が朝靄のたちこめるベネチアに入港する・・・。モネの「日の出の印象」を見ているかのようなこの冒頭の絵画的シーンによって、観客は美しくもどこか退廃的なヴィスコンティの世界に引きずり込まれていく。 トーマス・マンの原作では小説家だった主人公が、作家の意図を汲み、映画の中ではよりグスタフ・ . . . 本文を読む

家族の肖像

2017年10月03日 | 星5ツです篇
「ルードウィッヒ」を撮り終えた後、病に倒れたヴィスコンティの復帰第一作目である。老教授の孤独を描いたという点では、ベルイマンの「野いちご」とのいくつかの共通項を発見できる。本作品の中で、人間関係のわずらわしさを嫌い、自分の殻に閉じこもるエゴイストを演じているのが、元祖マッチョマンのバート・ランカスターだ。「山猫」以来のヴィスコンティ作品出演となるバートの演技は、汗臭さがすっかり消え枯山水の趣を . . . 本文を読む

縞模様のパジャマの少年

2010年11月06日 | 星5ツです篇
毎年恒例のホロコースト批判映画かと思いきやさにあらず。ホロコーストの残酷性についてはオブラート(そういえば最近見かけなくなりましたね)にくるまれ、間接的に描かれている。むしろ、ナチスドイツによる自国民へのプロパガンダの薄気味悪さを皮肉たっぷりに描いた点で画期的な1本といえるだろう。ナチス高官の息子ブルーノは、父親(デヴィット・シューリス)の仕事の都合でベルリンから田舎のお屋敷に引っ越すことに。父は . . . 本文を読む

永遠と一日

2010年09月07日 | 星5ツです篇
もしかしたら道端に転がっている一つの小石からも映画は作れるのではないか、そんな可能性をも感じさせる稀有な映画監督テオ・アンゲロプロス。 不治の病におかされた詩人アレクサンドレ(ブルーノ・ガンツ)は、ある朝人生最期の日を迎えたことを悟る。愛犬を預けようと娘の家を訪ねた帰り道、路上で自動車の窓拭きをする少年の一団を目撃する。ひょんなことからその中の一人を警察の手から救ったアレクサンドレは、彼らがアル . . . 本文を読む

霧の中の風景

2010年09月02日 | 星5ツです篇
生まれながらに父親不在、私生児として生まれた幼い姉と弟がその父親に会うためにアテネからドイツへ、あての無い旅に出かける。道中知り合った旅芸人一座の青年オレステスが拾ったフィルムの切れ端に、霧の中に浮かぶ1本の木が写っているというのだが、2人には真っ白な霧しか写っていないように見える。 旅芸人の青年オレステス、姉ヴーラ&弟アレクサンドロスの人物設定や不在の父親がキーとなる構成は、『旅芸人の記録』『 . . . 本文を読む

フォロー・ミー

2010年04月03日 | 星5ツです篇
イギリス人とアメリカ人の醒め切った夫婦の仲をユダヤ人がとり持つというのは、何やら当時の政治的な臭いを感じないでもないが、その生臭ささえも映画の隠し味に変えてしまうキャロル・リード、さすが『第3の男』を撮った英国の巨匠である。 チャールズ(マイケル・ジェイストン)は英国上流階級の会計士、各国を転々としていたアメリカ人ヒッピー・ベリンダ(ミア・ファロー)と偶然知り合い結婚する。やがて上流階級の生活を . . . 本文を読む

ペーパー・ムーン

2010年03月02日 | 星5ツです篇
原作名『アディ・プレイ』が気に入らず『ペーパー・ムーン』に改題したらそちらの方が有名になってしまったという1本。(愛妻ファラ・フォーセットを癌で亡くし現在家庭環境は薬物&暴力事件でメチャクチャな)ライアン・オニールとその実娘テイタム・オニールが、本当の親子だかどうだかいまいちはっきりしない偽モノ親子モーゼスとアディ役で登場している。 新聞の死亡記事をみつけてはその家族に聖書を売りつける詐欺師モ . . . 本文を読む

尼僧ヨアンナ

2009年12月28日 | 星5ツです篇
17世紀のポーランド、小高い丘に立つ壁に囲まれた尼僧院。地元の人々から“天使”と慕われていた院長ヨアンナと尼僧たちが悪魔にとりつかれる。前任神父の死の知らせを受けた敬虔な童貞僧スリンが悪魔払いのため尼僧院に単身のりこむという設定は、あの『エクソシスト』を彷彿とさせる。なにせ1961年に撮られた作品なので、悪魔にとりつかれた尼僧の首がぐるぐる回ったり、口から緑色のゲロを吐いたりするグロテスクなシーン . . . 本文を読む

息子

2009年11月08日 | 星5ツです篇
「1970年の『家族』の続編としてこの映画を撮った。20年間でこんなに日本が変わってしまったという思いをみんなで共有したかった」と山田洋次はインタビューで語っていたという。老親(三國連太郎)が、上京している2人の息子の家を訪れ、再び故郷の岩手に帰っていくというだけのストーリーなのだが、山田演出の魅力を随所に堪能できる作品に仕上がっている。 途中、三國扮する昭男が、熱海で行われる戦友会に出席するシ . . . 本文を読む

うつせみ

2009年08月21日 | 星5ツです篇
原題は『空家』(英題『3-Iron』(ゴルフの3番アイアンのこと))。韓国の鬼才キム・ギドクがヴェネチア映画祭で監督賞に輝いた本作品、映画タイトルは何でも良かった気がする。たとえば、『デジカメ』『洗濯』『修理』・・・。おそらくラストシーンのテロップから配給会社が後付けしたであろう邦題『うつせみ』は、さまざまな解釈が可能な本作品にかえってつまらない方向性をあたえてしまうという意味で、あまりふさわしく . . . 本文を読む

いつか読書する日

2009年03月17日 | 星5ツです篇
同じ交通事故でそれぞれの母親と父親を亡くした過去を持つ大場美奈子(田中裕子)と高梨(岸部一徳)。悲劇に終わった許されぬ恋の結末。そのトラウマを同じように引きずる二人は、互いに引かれ合いながらも行動に出ることができない。 朝は牛乳配達、昼はスーパーに勤め、孤独を穴埋めするかのごとく体をいためつけ、ストイックな生活を送る一人暮らしの美奈子。そして、いつか読書する時のために読まれもしない本を大量に部屋 . . . 本文を読む

ロゼッタ

2009年03月04日 | 星5ツです篇
この映画は途中からしか観てないという記憶がありましたが、再びTV放映を観てみると、しっかり初めから観ていることに気がつきました。序章からじわじわ盛り上がってクライマックスをむかえる普通の映画とは異なり、唐突に始まり唐突に終わる、厳しい現実生活の一部をそのまま切り取ったような作品です。 トレーラーハウスで暮らすロゼッタは、求職許可をもらえないため職を転々としている。アル中でセックス依存症の母親を . . . 本文を読む

誰も知らない

2009年02月03日 | 星5ツです篇
実際の巣鴨置き去り事件をモチーフに、母親(YOU)の無責任と世間の無関心の犠牲になる子供たちを描いた社会派作品だ。ご近所には内緒(お兄ちゃん以外は外出禁止令がだされている)でアパートに越してきた母親と父親の違う4人の子供たち。外に男を作って次第に家を空けるようになった母親は、旅行に出かけたきり戻ってこなくなってしまう。 長男の明(柳楽優弥)が学校にも行かず孤軍奮闘幼い3人の兄弟の面倒をみるシーク . . . 本文を読む

あ、春

2008年11月25日 | 星5ツです篇
死んだと母親から聞かされていた父親が生きていた。紘(佐藤浩市)は良家の娘・瑞穂(斉藤由貴)と逆玉結婚し、義理の母親(藤村志保)と子供の充と4人で瑞穂の実家で暮らしている。そこに紘の父親と名のる笹一(山崎努)が同居することになったから、さあ大変・・・。 俳優の厳しい指導で定評のある相米慎二が、佐藤浩市・斉藤由貴と再び組んで撮ったホームドラマは、平成不況の殺伐とした日本の風景の中に血のつながっていな . . . 本文を読む

西鶴一代女

2008年11月08日 | 星5ツです篇
これまでは、年齢のいった田中絹代を無理やりお姫さまに仕立て上げる作品が多かったゴテ健であるが、本作品では絹代にはじめて汚れ役を演じさせている。溝口健二と田中絹代が単なる映画監督と女優を超えた関係であったことは、映画関係者ならば誰でも知っている有名な話だが、一時は松平家のお部屋さまに取り立てられたお春(田中絹代)が紆余曲折を経て場末の売女にまで転落する一代記を見ていると、二人の関係になんらかの変化が . . . 本文を読む