百醜千拙草

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新しいこと

2018-01-05 | Weblog
今年は心気一転、新しいことにもチャレンジ、と思っています。

バイオ研究業界もこれまで、テクノロジーの進歩にリードされて、基礎研究が発展してきましたが、基礎研究よりも実際に役に立つ応用の研究へのプレッシャー、それから真に革新的なテクノロジーが開発されてきていないなどから、ますます基礎研究をする人々は困難な状況に置かれているように感じます。

振り返れば、細胞培養技術、生化学実験技術、分子生物学の実験技術、それからマウスや他の動物での遺伝子操作技術、これらの技術の開発がそれに続く研究スタイルの流行を作り出してきました。しかし、大雑把に言うと、マウスの分子遺伝学実験技術の開発以後は、生物学のパラダイムを揺るがすような大きなインパクトを持つような技術の開発はなかったような気がします。大量平行シークエンシングの技術、定量的プロテオミクスの技術、iPS技術、CRISPR/Casなどの遺伝子編集技術、などなど、素晴らしい技術の開発は引き続いておこっています。しかし、それらが遺伝子組換え技術や動物の遺伝子操作技術のように、生物学の考え方を変えうるようなインパクトがあるかと言われると(iPSは別にして)それほどではないのではないかと思います。

かつては、そういう技術を人よりも早くに手に入れて、自分の分野で応用していくことで、アドバンテージが取れました。しかし、技術が汎用化した時点で、そのアドバンテージは失われ、それどころか汎用化したがゆえに、むしろマイナスの評価を受けることさえ起こるようになりました。その技術の有用性そのものではなく、希少性が失われたことによって、価値が下がるのだと思います。

過去15年ほど、マウスの遺伝学技術を使って先端の研究分野を切り開いた人々と近く接することがありました。マウス遺伝学的アプローチそのものに人々が飽きてくるにつれ、マウス遺伝学で一時代を築いた人々も、新しい研究システム、例えば、ヒトやその他の動物のサンプルを使った研究とか細胞レベルの研究であるとか、遺伝学よりもゲノム学的な研究とか、これまでの得意技の外のことを取り入れて研究を進めてきています。そう時代が要求しているのですから、それに応えようとするのは当然であるのですが、実験システムを変えるということは、実際には大変なことです。リスクを負う上に、そのことによって、これまで以上にインパクトのある結果を出さなければ意味がないのですから。

生産性を保ちつつも、大きくシステムを変えるのはチャレンジングです。そうはいうものの、私もこのまま同じことをやっていたは、ジリ貧なのは目に見えております。二、三、マウスから離れての研究アイデアがあるので、それを今年は試してみたいと考えています。ま、コケたら店じまいすることになるかもしれませんが、それもまた、一局。

コメント
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