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西尾維新「戯言シリーズ」に関する私的考察(屍的絞殺)

2005-11-23 | 読書①NOVELS
二次曲線的に読者を増殖させた末に、ついに完結してしまった西尾維新の「戯言シリーズ」。
全9冊、「維新ワールド」を楽しませてもらいました。というより、不覚にもかなりドップリとハマってしまったといっても過言ではありません。
シリーズ通して考えると「ミステリ」とは違いますね。物理法則が歪む虚構世界でミステリーは成立できない。ただし、このシリーズはミステリとして面白い訳ではないので、この場合「ミステリではない」と断言するのは、誉めているのだけどね。
玖渚機関、四神一鏡、殺し名・呪い名が跋扈する、独自虚構世界のエンタテインメントとして、メチャメチャ面白い作品だということな。
1冊1冊についてどうのこうの言うより、トータル的に考察してみたいと思ったりする(メンドクサガリ)。
ただ、この作品も書店の週間売上ランキングのベスト上位にランクインされる人気シリーズであり、とことんデータを調べ上げたマニアなサイトも数多い昨今ゆえ、私的偏見的な意見として別の角度からライティングしてみたい。
個人的感想なのでツッ込まないでね。記憶間違いがあったらツッコミ可。
全巻読了者を想定しますんで固有名詞などは説明しません。悪しからず。

注意!以下にネタバレあり!禁 未読了者

しかしまあ、時系列をおさらいするために、とりあえず全編を、並べて揃えて晒してみよう。

第1巻「クビキリサイクル/青色サヴァンと戯言遣い」
 「いーちゃん」と玖渚友。孤島の密室殺人。立派にミステリでメフィスト賞受賞作。だれもが本格ミステリのシリーズ開始と思ったでしょ?私はそう思った。トリックがどうこうってよりも、最後の最後んとこで哀川潤による強烈な「返し」にブチ抜かれた。

第2巻「クビシメロマンチスト/人間失格・零崎人識」
 「いーちゃん」と零崎人識の邂逅の巻。大学の知人が密室で殺される。ミステリっぽい構成ではあるが、読み楽しむテーマはさっそく「謎解き」から逸脱開始。竹さんの表紙イラスト、巫女子ちゃんの超絶ハイテンションギャグにメロメロとなる。

第3巻「クビツリハイスクール/戯言遣いの弟子」
 「いーちゃん」が哀川潤の依頼で紫木一姫を救出のため私立澄百合学園内へ潜入。「四神一鏡」の戦闘訓練女子高。維新独自の虚構世界へ突入していく。「ジグザグ」みたいな超絶技が存在する世界で、密室の謎解きは意味をなさぬ。ここに登場する耀く萌えキャラ女子たちとの戦闘こそが今回のテーマ。個人的に子荻ちゃんのファン。謹んでご冥福をお祈り申し上げる。

第4巻「サイコロジカル(上)/兎吊木垓輔の戯言殺し」
第5巻「サイコロジカル(下)/曳かれ者の小唄」

 「いーちゃん」と玖渚友、斜道卿壱郎研究施設へ。かつての「チーム」の一員である兎吊木垓輔を救出しにいく。いちおう密室殺人モノっぽいが、「声紋チェックを突破できる声帯模写の特技」ではロジックはいよいよ破綻している。
注目すべきは兎吊木の科白「きみは玖渚友のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?」ってのが、最後の最後でジワリと効いてくる。「ER3」と「チーム」の実体が見えてくる。

第6巻「ヒトクイマジカル/殺戮奇術の匂宮兄妹」
 「死なない少女」と「殺し名筆頭・匂宮」と「ジグザグ」の三つ巴の構図だね。匂宮理澄と出夢のトリック、一人二役か二重人格か、いや実は二人一役かっていうの、なんだかわからないが萌え。一姫殺しはめっちゃショックだった。付いたあだ名が「萌えキャラ殺し」。この巻で「いーちゃん」は変化を始め、物語の最終テーマへ。狐さんの登場である。最重要キーワードであるバックノズルとジェイルオルタナティヴ。ディングエピローグへの収束。「初めまして、俺の敵」。戯言シリーズはミステリから離れるほどに面白くなっていくんだよな。

第7巻「ネコソギラジカル(上)/十三階段」
 いよいよ物語は終焉に向かって加速しはじめる。奇野によるみいこさんへの攻撃は、「いーちゃん」を動かす最大の効果を呼ぶ結果となる。ここに至り、崩子ちゃん萌太くん始動。「死なないで崩子ちゃん」と皆が祈った。

第8巻「ネコソギラジカル(中)/赤き征裁vs.橙なる種」
 「いーちゃんチーム」vs.「橙なる種」戦闘開始。「赤」と「橙」、「最強」と「最終」、第一戦は「橙」の勝ち。いよいよ「いーちゃん」アクティブに発動す。そして、「橙」の逃亡と十三階段の崩壊と暴走。

第9巻「ネコソギラジカル(下)/青色サヴァンと戯言遣い」
 そして物語は、やっぱり「青色サヴァンと戯言遣い」の愛の物語だったんだね。第1巻と同じ副題だけど、その重みがまるで違う。死を覚悟した玖渚の、「蒼」の呪縛からの開放は、痛々しくも切なく優しい愛情がダイレクトに伝わってくる。永遠の停滞はありえない。ならば、変化するしかないんだってことだ。

『キーワード』
さて、この物語の最大のキーワードは、「狐さん」の哲学である「バックノズル」と「ジェイルオルタナティヴ」。
バックノズルの方はほっといても大丈夫、というか、何が何のバックノズルかってのは捕捉し難い。問題はジェイルオルタナティヴだ。いったいいくつのオルタナティヴがあるのか、思いついただけ羅列してみる。
「いーちゃん」の妹 → 玖渚友
「いーちゃん」にとっての玖渚友 → 想影真心
狐さんの敵 零崎人識 → 「いーちゃん」
玖渚友にとっての「いーちゃん」 → 「チーム」
その他にもさまざまなオルタナティヴに満ちている。
そして、対する「いーちゃん」の、そして作者の探求して止まぬものは、「オルタナティヴの否定」なのではないだろうか。
最終巻で友が言う。
「いーちゃんのこと、好き」
代わりのものなんて ―― なかった。
「僕様ちゃんにはいーちゃんしかいなかった」
『代わりのものなんて、ない』。本当に大切な事には、オルタナティヴは否定される。
ならば、その時点でもはや狐さんの勝ち目はなかったのだろうか。

『ハッピーエンド』
私は、最後の最後まで、この物語がどんな結末に達するのか予測し得なかった。
ずっと、「死屍累々の荒野に一人残されるいーちゃん」というイメージが付きまとっていたのだ。しかし、そうではないという確信めいたものもあった。
そういう意味では、落ち着くところに落ち着いた、というべきなのだろう。
この物語は一見、めでたいハッピーエンドと思いがちだけど、作中に作者がどこかで述べたように、実はハッピーエンドではないのだ。犠牲者が出た時点で、もはやそれは純粋なハッピーエンドとはなり得ない。
死屍累々の荒野の上に成り立つハッピーエンドであることを忘れてはならない。ただ、だからといって生き残った彼らが責められる所以もないし幸せになる権利がなくなったわけでもなく、死者を無かった事にすることも忘却することもできないし、ならば、ただ、受け入れるのみである。

『京都』
以前、私が関西に住んでた頃は京都が好きで、よく遊びに行ってた。特に四条河原町近辺、新京極あたりは俺のナワバリ的遊び場だったから、特に思い入れが深いのが「クビシメロマンチスト」。
たとえば、偶然かもしれないがその表紙の巫女子ちゃんのファッションのように、和服のテイストを各人の個性でアレンジするファッションが昼夜街中を闊歩しているのは、京都のならではの風物詩だ。
京都のファッションは決して「流行り」を追ったりはしない。むしろ蔑んでいるともいえる。
流行よりも自分に似合うかどうかを優先し、京都の街とコーディネィトする。なによりも個性的なセンスの良さを競い合う精神が、京都っぽい。
作者は、そんな京都の精神的な空気をたっぷりと吸い込んだに違いない。

『続編・番外編』
最終巻のラストで、世界は平穏を取り戻したかのように見えるけれど、またいつか西東天が新たな十三階段を引き連れて「ディングエピローグへの収束」に挑戦する可能性もアリなんじゃない?
・・・とある夜更け、京都のはずれ、路地の角を曲がると視界に白いポルシェ。その後ろから白い着流しに狐面の男がひょっこりと・・・。
「くっくっく ―― また逢ったな、俺の敵」
「とりあえず ―― お久しぶりです、狐さん」
「『お久しぶりです、狐さん』 ふん。 ああ、まあな、確かに久しぶりだ」
ってなことに、・・・なんねえか。
続編は無理でも、いろいろと「零崎一族」みたいな番外編はなんぼでも出せそうだし。

感じた事の半分も文字にできていないけど、ながながと駄文にお付き合いいただきまして、ありがとさんでした。
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2 コメント

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Unknown (まじょ。)
2006-11-20 22:42:25
こんばんは!
西尾維新は一度手をつけてしまうと、もう止まらなくなりますね。あぁ、今日もこれからの時間どっぷりと西尾維新です。
最終巻で迎えたいーちゃんと青色を失った友の物語がとてもとても好きです。hoy.さんの云う「オルタナティヴの否定」って素敵ですね!
あっ、私のブログの方でhoy.さんのブログを勝手にリンクさせていただきましたので報告させていただきます!どうぞこれからもよろしくお願い致します!!
thanks! (hoy.)
2006-11-22 22:56:49
まじょ。様
西尾維新はハマりますねぇ!
ラノベで何度も読み返してしまうのは維新ぐらいです。
シッカリした創作世界と、メッチャ魅力的で異常なキャラたちに萌えまくり。
おたがいどっぷり浸りませう

リンクありがとさんです
こちらもリンク張らせていただきますね。こちらこそ、ヨロシクです!

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『ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い』 (◆PROVE◆)
西尾維新/講談社ノベルス…てなわけで、読みました!まとまりがありませんが、さっくりと感想を叫んで(え)みます。ネタバレ要注意につき以下反転。「――ハッピーエンド以外は認めねえっつーの」…くうう!赤い人っていうか哀川さん最高です最強です!いーちゃんと友の屋
「クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い」西尾維新 (うめみんのブログ)
西尾維新にトライ!
「クビシメロマンチスト」西尾維新 (うめみんのブログ)
次々読んでます。
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読んだあ。