黄昏の空のむこう側に

空に心を浮かべてみる

ある冬の朝の出来事

2017-06-13 15:46:24 | おはなし



小学校の一年生だったか、二年生の時だったか、冬の季節で、とくに早朝は寒くて膨らんだ雀のような姿で、私は学校まで徒歩で通っていた。

始業は8時半だったけれど、毎朝七時過ぎに登校して、一時間近くも前には学校に着いていたように思う。

何をするわけでもなかったけれど、私の他に一人いるかいないかの教室が好きだった。春や秋には体操着に着替えてボールで遊んだり、様々な高さに置かれた木の幹のようなものをぴょんぴょん飛んだりして、休み時間だけでは順番待ちなどで満足できなかった遊びをしていたように思う。



ある冬の朝、校庭に至る前の坂道で私は転んでしまった。私の家から学校は決して近い距離ではなかったから、学校が見えると嬉しくなって私は駆け出したのだった。

私の目は地面ではなく校庭とその先に建っていた南校舎に向けられていた。学校へ着いたら何をしようか?と心は今日という未知への興奮でいっぱいだった。そんな私の右足は排水溝にかけられた金属製の枠がギザギザに切断されている隙間に瞬時に落ちてしまったのだった。

ガクンと落ちた時の伸びた膝へかかった圧力と痛みで、幼かった私は悲鳴を上げた。そして冬の間でもスカートを履いていた私のむき出しの太ももの上に長く引き裂かれた傷から吹き出る血に恐怖して、私は大声で泣いた。

私は男の子と言い争って喧嘩しても相手を泣かしたことは何度かあっても泣いたことはなかった。が、その時だけは声をあげてわんわん泣いた。泣くのはとても恥ずかしいことだと、当時の私はかたく信じていたけど泣いてしまった。

下を向いて泣いていた私が気づかないうちに、その両腕は何処からか伸び現れきて、小さな私を抱き上げていた。私を抱えた身体は広い校庭を突っ切って校舎へ向かっていた。私を運んでくれたその人は用務員の細谷さんだった。



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