4月中は、恐らく一日たりとも雨が降らなかったけど、5月になってからは、むしろ天気がぐずつく日が多い。日中晴れていても夕立に見舞われることもあるので、毎日折り畳み傘を持ち歩いている。
そんな中、今日は久しぶりにお目にかかった気もする、すかっと快晴。
記念すべき、フィンランドでの初舞台。演奏時間は短かったけど、色々と衝撃的に面白い出来事もあり、忘れられない一日となった。
で、演奏会と書いたけど、実は、演奏会ではなく、教会での宗教行事だった。詳細は、自分も今日初めて知ったんだけど(何しろ、前回の練習時に楽譜を渡され、集合場所と時間を伝えられただけだったので)。
日曜朝、音楽付きのミサのようなもので、オケ(と言っても弦楽のみ少人数)、オルガン、ソプラノ歌手が、交互に演奏し、合間に神父さん(?)のお説教のようなものが入る。ざっと一時間半ほどのイベントだったけど、オケの演奏時間は正味20分そこそこか。
なんでも、God service(or God's service?)という行事らしい。神に仕える者、神の僕、これがサーバント(servant)。そのサーバントが、サーバントとして為す行為、つまりこの礼拝こそが、サービス、というわけ。奉仕の対価は、信仰心の満足。日常的なサービスという言葉の意味合い(例えば「サービス産業」と言ったときのサービス)と、だいぶ違うと思った。
会場は、なんとテンペリアウキオ教会。ちょっと前までは自分の中で一観光名所だったこの場所が、フィンランドでの初舞台となるなんて、とても予想しなかったことだ。
オケで演奏したのは、コレルリの合奏協奏曲、通称クリスマス協奏曲として知られる、わりと有名な曲だ。
この曲は、バイオリンとチェロのソロがある。前回の練習時は、チェロ全員(といっても三人)でソロパートを弾いていたので、本番もそういうことなんだろうと思っていたんだけど…
朝、会場入りすると、明らかにチェロに一席だけ特等席が設けられている。ちょっとだけオケより前に出ている。
そうしたら、指揮者のLuisさんがやってきて、特等席を指し、「やぁおはよう、あ、君、今日ここ座ってね」
ん?
すると、もう一人のチェロのおじさん(明らかにこの人の方が腕が達つのだけど)も、にこにこしながら、「Today, you're our Yo-Yo Ma, hahaha」
え、まさかの、ドッキリ!!?
というわけで、なんだか思いもよらない事態に。初舞台にして、コンチェルトでのソロを、文字通りソロで演奏。
実は、この曲、過去にも一度やったことがあって、それにコンチェルトと言っても、演奏技術としては大して難しいわけではないのだけど、何しろ、どソロだ。しかも、荘厳な宗教行事の真っただ中。
大学の美術史の先生が、こんなことを言っていたのを思い出した。
「宗教芸術というのは、現代のどんな宣伝活動も足下に及ばない、史上最大の誇大広告」
なるほど、しかし、広告が広告としての威力を発揮するのは、その行為が「芸術」と称するに値する一定水準を保つものであることを前提とするのではないだろうか。
教会で聴く音楽の音程やリズムがめちゃくちゃだったら、信じるものも、信じられなくなってしまう、かもしれない。なんだ、神様なんて嘘っぱちかよ…
これはさすがに、今までにない類のプレッシャーを感じずにいられなかった。まぁ、いつものごとく、勝手に一人で抱え込んでいるだけだけど。
そんなこんなで、演奏中のことはよく覚えていないのだけど、まぁ無事終わった、と言ってよいのではないだろうか。無事、と言っても、「無難」という要素はできるだけ排除しようと心がけた。外国で一ヶ月半も生活して、だいぶ色んな場面に応用できる開き直りを覚えたかもしれない。さすがに100%のめり込む余裕はなかったけど(そこがまだ未熟ということで)、この宗教イベントを作り上げ、同時にそれに取り込まれるという体感に、ある程度身を任せることができたように思う。楽しかった。
終演後、教会主催のお茶会があった。参拝者の方も大勢参加していらしたのだけど、案の定、相当目立っていたみたいで、色んな人に声をかけられた。まぁお世辞が大部分と思って聞いていたけれど、それでもわざわざ「nice playだったよ」と一声かけにきてくれるのは、素直に嬉しい。通りすがりの旅行客も結構いたみたいで、実は色んな国の人がいた。
そして何より、お会いするのは今日が二回目だというのに、こんな舞台を用意して下さったLuisさんとHTO(オケ)の皆さんの寛大さに脱帽するとともに、ひたすら感謝するのみである。
オケは、これから長い夏休みに入り、次の練習は9月から。これは、どこのオケでも同じみたい。フィンランドの人は、この夏休みを銘々、コテージなどで、大切に過ごす。みんな別れ際に「Hyvää kesää!(良い夏を)」と挨拶を交わしていた。日本の「良いお年を」みたいなノリに近いような印象すら受ける。
結局、このシーズンとしては、滑り込みで演奏会に参加できたような形になるわけで、ラッキーだった。
それから、一昨日のお花見でご一緒したKasiとSonjaが、わざわざ聴きに来てくれた。
Kasiは、身長が全く同じということで、今日の衣装(黒スーツ)を貸してくれた。彼は、昨年一年間、東工大の西9号館に留学していたということで(ということはこっちに来てから知ったけど)、なんだか縁を感じる。
こういう面白い日に限って、色々ばたばたして、写真を撮り忘れた。
代わりに、今日の昼飯のケバブ。よく考えたら、昼に外食(学食除く)は初めてだった。
そんな中、今日は久しぶりにお目にかかった気もする、すかっと快晴。
記念すべき、フィンランドでの初舞台。演奏時間は短かったけど、色々と衝撃的に面白い出来事もあり、忘れられない一日となった。
で、演奏会と書いたけど、実は、演奏会ではなく、教会での宗教行事だった。詳細は、自分も今日初めて知ったんだけど(何しろ、前回の練習時に楽譜を渡され、集合場所と時間を伝えられただけだったので)。
日曜朝、音楽付きのミサのようなもので、オケ(と言っても弦楽のみ少人数)、オルガン、ソプラノ歌手が、交互に演奏し、合間に神父さん(?)のお説教のようなものが入る。ざっと一時間半ほどのイベントだったけど、オケの演奏時間は正味20分そこそこか。
なんでも、God service(or God's service?)という行事らしい。神に仕える者、神の僕、これがサーバント(servant)。そのサーバントが、サーバントとして為す行為、つまりこの礼拝こそが、サービス、というわけ。奉仕の対価は、信仰心の満足。日常的なサービスという言葉の意味合い(例えば「サービス産業」と言ったときのサービス)と、だいぶ違うと思った。
会場は、なんとテンペリアウキオ教会。ちょっと前までは自分の中で一観光名所だったこの場所が、フィンランドでの初舞台となるなんて、とても予想しなかったことだ。
オケで演奏したのは、コレルリの合奏協奏曲、通称クリスマス協奏曲として知られる、わりと有名な曲だ。
この曲は、バイオリンとチェロのソロがある。前回の練習時は、チェロ全員(といっても三人)でソロパートを弾いていたので、本番もそういうことなんだろうと思っていたんだけど…
朝、会場入りすると、明らかにチェロに一席だけ特等席が設けられている。ちょっとだけオケより前に出ている。
そうしたら、指揮者のLuisさんがやってきて、特等席を指し、「やぁおはよう、あ、君、今日ここ座ってね」
ん?
すると、もう一人のチェロのおじさん(明らかにこの人の方が腕が達つのだけど)も、にこにこしながら、「Today, you're our Yo-Yo Ma, hahaha」
え、まさかの、ドッキリ!!?
というわけで、なんだか思いもよらない事態に。初舞台にして、コンチェルトでのソロを、文字通りソロで演奏。
実は、この曲、過去にも一度やったことがあって、それにコンチェルトと言っても、演奏技術としては大して難しいわけではないのだけど、何しろ、どソロだ。しかも、荘厳な宗教行事の真っただ中。
大学の美術史の先生が、こんなことを言っていたのを思い出した。
「宗教芸術というのは、現代のどんな宣伝活動も足下に及ばない、史上最大の誇大広告」
なるほど、しかし、広告が広告としての威力を発揮するのは、その行為が「芸術」と称するに値する一定水準を保つものであることを前提とするのではないだろうか。
教会で聴く音楽の音程やリズムがめちゃくちゃだったら、信じるものも、信じられなくなってしまう、かもしれない。なんだ、神様なんて嘘っぱちかよ…
これはさすがに、今までにない類のプレッシャーを感じずにいられなかった。まぁ、いつものごとく、勝手に一人で抱え込んでいるだけだけど。
そんなこんなで、演奏中のことはよく覚えていないのだけど、まぁ無事終わった、と言ってよいのではないだろうか。無事、と言っても、「無難」という要素はできるだけ排除しようと心がけた。外国で一ヶ月半も生活して、だいぶ色んな場面に応用できる開き直りを覚えたかもしれない。さすがに100%のめり込む余裕はなかったけど(そこがまだ未熟ということで)、この宗教イベントを作り上げ、同時にそれに取り込まれるという体感に、ある程度身を任せることができたように思う。楽しかった。
終演後、教会主催のお茶会があった。参拝者の方も大勢参加していらしたのだけど、案の定、相当目立っていたみたいで、色んな人に声をかけられた。まぁお世辞が大部分と思って聞いていたけれど、それでもわざわざ「nice playだったよ」と一声かけにきてくれるのは、素直に嬉しい。通りすがりの旅行客も結構いたみたいで、実は色んな国の人がいた。
そして何より、お会いするのは今日が二回目だというのに、こんな舞台を用意して下さったLuisさんとHTO(オケ)の皆さんの寛大さに脱帽するとともに、ひたすら感謝するのみである。
オケは、これから長い夏休みに入り、次の練習は9月から。これは、どこのオケでも同じみたい。フィンランドの人は、この夏休みを銘々、コテージなどで、大切に過ごす。みんな別れ際に「Hyvää kesää!(良い夏を)」と挨拶を交わしていた。日本の「良いお年を」みたいなノリに近いような印象すら受ける。
結局、このシーズンとしては、滑り込みで演奏会に参加できたような形になるわけで、ラッキーだった。
それから、一昨日のお花見でご一緒したKasiとSonjaが、わざわざ聴きに来てくれた。
Kasiは、身長が全く同じということで、今日の衣装(黒スーツ)を貸してくれた。彼は、昨年一年間、東工大の西9号館に留学していたということで(ということはこっちに来てから知ったけど)、なんだか縁を感じる。
こういう面白い日に限って、色々ばたばたして、写真を撮り忘れた。
代わりに、今日の昼飯のケバブ。よく考えたら、昼に外食(学食除く)は初めてだった。