久しぶりだよ、飯も食わずに本読み続けたなんて!あり得ない、何はさておき食事は抜かない男だぜ。それが、あと少し、もうすぐ終わる、こんなところで止められるかよ、ってとうとう夕食そっちのけで読み通してしまった。
『桶川ストーカー殺人事件ー遺書』清水潔著。サスペンス小説なんかじゃない。いや、小説なんかはるかに超えたスリリングなノンフィクション。それも圧倒的な臨場感、興奮、そして、感動!
18年前、埼玉県桶川駅前で女子大生が暴漢に襲われ命を落とした。残された遺書と、彼女の友人たちが伝えたのは、常軌を逸したストーカー男の存在だった。激しい嫉妬、凶暴性、執着心。さらに恐ろしいのは、金もあれば、意のままに動く仲間や手下も持っていること。「自分で手を下さなくても金さえ出せばなんでもできる」、恐ろしい!
最近流行りのストーカー殺人ね、すぐ捕まるだろ、犯人わかってんだし。ささっと動くはずさ警察。が、その警察が動かない。ストーカーからの危害を恐れた被害者と家族からの告発状を、面倒はお断りと握りつぶしていたからだ。
ずるずると捜査を長引かせるだけの所轄署。あらぬ彼方に誘導する大新聞メディア。真相を察知した写真週刊誌「FOCUS」の記者=著者がカメラマンとともに犯人の追跡に飛び込んで行く。徹底した聞き込み、張り込みの結果、実行犯の顔写真を撮影し、居場所の特定にも成功。実行犯はようやく逮捕されるのだが、ストーカー被害を認めたくない警察は、敢えて主犯をつきまとい男の兄にすり替えて行く。記者の戦いは、真犯人の追跡、さらには警察の不当捜査へと突き進んでいく。「被害者は男と警察に殺された」との家族や友人の言葉を支えとして。
警察がひた隠す真実に単身迫っていく「FOCUS」記者の勇気と根気と忍耐が圧巻だ。次々にあばかれる真実にただただ引きずり込まれ、手に汗握る。週刊誌記者の取材の実態に度肝を抜かれ、その心意気にも大いに打たれる。大新聞やテレビ記者との落差も初めて知った。警察発表を鵜呑みにして世論を場違いな方向へと誘導するマスメディア。それを良いことに責任逃れに走る警察権力。気を付けなくっちゃ!!
この事件とこの記者の献身的な働きによって、ストーカー規制法ができた。でも、未だに同質の事件と対応の手遅れが後を絶たない。今も十分に読まれる価値のある著作だ。巻末に被害者の父親が感謝の一文を寄せている。記者=作者のひたむきな誠実さがさらに重く伝わって来る。
簡単に紹介してみたが、中身はもっともっと濃い。そいつぁ、ぜひ直に読んで味わって欲しいね。絶対、損はしないから。
さて、最後のまとめは、この本とどうやって出合ったか、ってことさ。ここはやっぱり、アマゾンなんだよね。たまたま南京事件関係の資料をを探していて、この作者の『「南京事件」を捜査せよ』に出会ったんだ。ああ、あの評判のテレビ番組『日テレNNNドキュメント 南京事件 兵士たちの遺言』の元になった本かぁ。うん、これは読んでみなきゃね、と思いつつ、その隣りを見たら、あったんだ、『桶川ストーカー殺人事件ー遺書』が。な、なんじゃとぉぉぉ!!??評価が星五つ!それも200人を超す人たちがコメントを寄せている。こりゃすげぇや、CDなんかならたまにあるけど、本でこれだけのコメントと五つ星、どんな本なんだい?読む価値ありそうじゃないか、まずは取り寄せておくかって、注文した、もちろん中古、ものなんだ。
コメントや評価の星の数なんかにはあまり振り回されたくないんだけど、この本なんかにぶち当たってみると、これも大切な情報だよな、って思いを強くする。それと、この偶然の出会いだ。興味の触手があっちこっち張り巡らされて、考えてもいなかった本と巡り合う、これ、やっぱりアマゾンだからだ。あなたへのお勧め、なんて、うるせいやい!って突っ張りたい気持ちもあるけど、こんな感動の出会いを演出してくれるわけだから、個人情報を集められても文句は言えない。一人勝ちってのは、なんとも癪だが、こちとら如きの浅学が、刃向かう相手じゃないってことだよな。せいぜい、アマゾン様のお力におすがりして、未知の世界に誘っていただこうじゃないか。