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ダマスカス近郊で死者4名 2011年4月1日

2017-04-25 23:21:32 | シリア内戦

4月1日、ダマスカスのデモで4人の死者が出た。首都のデモで死者が出ることの意味は大きい。ただし、死者が出たのはダマスカス市内ではなく、郊外の町ドゥーマにおいてである。デモの参加者の人数も多かった。2012年以後の内戦中ダマスカス市内は平和だった。しかし反政府軍が市を取り囲み、ダマスカスの郊外は激戦地となった。2013年8月にはサリン攻撃が起きた。米政府は多数の証拠を提示し、政府軍がサリンを使用したと断定したが、シリア政府とロシア政府は、サリンを使用したのは反政府軍であると反論した。その後米国内でも反政府軍が真犯人であるとする説が根強く残った。

シリアのデモは2011年の3月18日に始まったが、この時期に時期にデモが発生したラタキアやバニアスではデモが弾圧されて終わり、反政府軍は成立しなかった。両都市は内戦の間、平和だった。早い時期にデモが起き、しかも後の内戦の舞台となったのは、ダラア、ホムス、ダマスカス郊外である。

=======《Many arrested in Syria after protests》=====

                  Aljazeera    2 April 2011

4月1日、ダマスカスの郊外のドゥーマで、金曜礼拝の後、数千人の市民が街頭に集まり、政府に抗議した。2日前(3月30日)アサド大統領が改革を約束したが、ドゥーマの人々はこれを信じなかった。

治安部隊は催涙弾と警棒でデモを解散させようとしたが、効果なく、次に実弾を発射した。目撃者によれば、少なくとも4名の市民が死亡した。

によれば、市民の死は治安部隊の発砲が原因ではない。建物の屋上に武装グループがおり、彼らは市民と治安部隊の双方を銃撃した。数人の市民が死亡したが、正確な人数は不明である。数十人が負傷した。負傷者には、数人の警察官が含まれる。

デモの中に海外メディアを意識して行動した者がいる。衣服を赤く染めて、負傷したと偽る者がいた。国営テレビは、海外メディア向けの偽の宣伝を批判した。

3月18日以来、市民の死者は60名を超える、と活動家が述べた。

==========================(アルジャジーラ終了)

ドゥーマのデモについて、CNNはデモ参加者の証言を紹介している。治安部隊の対応がよくわかる。また死者の数を6名としている。    

====《Protests ripple across Syria; at least 7 dead》====

         From Rima Maktabi and Salma Abdelaziz, CNN

4月1日、ダマス郊外のドゥーマのデモで、6名の市民が死亡した。目撃者と反対派の話によれば、治安部隊がデモに発砲した。

ドゥーマの中心に位置するモスクに数千人の市民が集まった。治安部隊は電気警棒・催涙弾・実弾で彼らを攻撃した。「私はこのように恐ろしい場面を見たことがない。部隊は少しのためらいもなく、群衆に向けて発砲した」と目撃者の一人が語った。彼自信も電気警棒で頭を殴られ、6人の死者と一緒に病院に運ばれた。病院には数十人の負傷者がおり、多くが重症者だった。

「6名が病院の死体安置所に運ばれるのを見た」と住民が語っている。ある市民は、頭をゴム弾で直撃された。数十人が負傷した。

一方シリア国営放送は、武装グループが治安部隊と市民の双方を銃撃した、と伝えた。またデモ隊と治安部隊との衝突はなかったと伝えた。

同じくダマスカスの郊外のクファル・スーサでも50人以上が負傷した。治安部隊がモスクを取り囲み、中にいる人々が孤立した。治安部隊はモスクの中に向けてゴム弾を撃った。その後人々を激しく殴り、負傷した人々を治安本部に運んだ。

 ダラア県北部のサナメン市でも、デモの市民が一人死亡し、10人が負傷した。

  

 

    

ダラア周辺の町や村から、数千人の市民がダラアの近くに集まり、北のサナメン市に向かって行進した。サナメンの入り口付近の軍の検問所に到着した時、市民の数は2万5千人に増えていた。彼らが検問を無視してサナメンに入ろうとしたとき、1000人の武装した部隊が発砲した。

その場にいた市民がCNNに電話で話した。「撃たれた人の血が私のシャツにかかった。私たちは負傷者の世話をした」。電話の向こうで救急車のサイレンが鳴っていた。

それでもデモの人々はその場を去らずに、サナメンに入る許可を求めていた。発砲は中止され、抗議する人々は兵士たちに訴えた。「市民と兵士の心は一つです!我々はダラアの市民を見捨てません!」

中部の都市ホムスと北東部カミシュリでも、それぞれ数千人のデモがあった。

 

政府に批判的な活動家たちは、政治と経済の両面で多くの不満を抱えている。またここ数日、アサド大統領に対し怒っている。

3月30日の演説で、大統領は戒厳令の廃止を宣言しなかった。また一般市民の訴えに理解を示さなかった。

大統領の演説が不評だったこと気づき、政府は翌31日戒厳令の廃止を検討する、と発表した。また市民と治安部隊の死の原因について調査すると約束した。死者が多かった2地域について調査するため、大統領は委員会を立ち上げるよう、最高司法会議に命じた。

戒厳令の廃止を検討する委員会は権威ある法律家たちによって構成され、4月25日までに結論を出す、と国営放送は伝えた。戒厳令の廃止は、シリア各地でのデモの主要な要求だった。政治警察は法律の制約なしに国民を逮捕し、拷問のレベルと処刑を自分の判断で決めた。人権監視団の中東部長サラ・ウィンストンが語る。「政権が国民の信頼を回復したいと考えるなら、政治裁判所をすぐに廃止し、言論と集会の自由を否定する法律も即刻廃止すべきです」。

======================(CNN終了)

3月30日の演説によって、大統領は国民の不満を理解していないことが明らかになった。大統領の側近は国民の不満を敏感に感じ取っており、3月18日以来柔軟な対応に勤めている。しかし抗議する市民と政権の意識の隔たりは大きく、デモは徐々に拡大していった。特に最大の震源地であるダラアでは、3月末まで市民の側に多くの死者が出てしまったので、政権と反対派の溝は深まってしまった。ここまで悪化したした原因は、ダラアの政治警察が革命グループの存在を疑ったからである。そしてその疑いは正しかった。ほとんど知られていない3月11日のデモは住民の請願だったが、3月18日以後のダラアのデモは、シリア革命を目的とするグループが大きな役割を果たしていた。ダマスカスの指導部が事態を鎮めようとしても、地元ではダラアの政治警察と革命グループが妥協の余地のない戦いをしていた。革命派の目的は結局政権の打倒なので、政権には彼らとの妥協という選択肢はない。少数の革命グループと怒れる一般市民は別だという信念のもとに、一般市民に対しこれまでの乱暴な対応を謝罪し、大幅な譲歩するしかない。一般市民の信頼を得ることにより、少数の革命派を孤立させる以外にない。

しかしこれは非常に難しい。市民は政治警察の残酷さを長年の経験で知っているいるが、革命グループの危険性については想像できない。

多くの一般市民が革命グループを支持している段階で、3月23日ダラアの政治警察はモスクの掃討作戦をやり、多くの市民を殺害してしまい、ダラア市民との溝を深めた。モスクを占拠する陰謀グループとの妥協はない、という政治警察の判断は正しかったが、陰謀グループは一般市民と一体だったため、事態を悪化させてしまった。

大統領就任時の人気は陰りを見せていたが、まだアサド大統領に対する期待は消えておらず、モスクの掃討作戦を延期して、一般市民を信じ、ひたすら譲歩すべきだったかもしれない。しかしモスクに戦闘用の武器が隠されている疑いがあったので、放置することはできなかったようである。

大統領の周囲には、情勢を的確に把握している穏健派がいたが、デモの中に武装反乱を準備している 者がいたなら、政権内の強硬派を抑えることはできなかっただろう。

チュニジアとエジプトの革命の成功により、シリアの若者の間で革命の機運が高まっていたが、シリアの大都市の富裕層と中産階級はシリアの安定を評価しており、政権の支持基盤はしっかりしていた。一方で下層階級の貧困は深まり、拡大していた。これは社会の安定を脅かす危険な要素であり、少数の革命グループにとって有利な状況になっていた。火をつければ燃え上がる状況だった。ダラアの政治警察は、革命グループを危険な存在と敵視しながら、貧困の問題を軽視した。

 

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-05-26 14:52:34
投稿楽しみにしてます。

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