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「はなとゆめ」 冲方丁

2016年11月16日 | 本(その他)
女の意地で、“はな”と“ゆめ”に仕立てられた物語

はなとゆめ (角川文庫)
冲方 丁
KADOKAWA/角川書店


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なぜ彼女は、『枕草子』を書いたのか―。
28歳の清少納言は、帝の妃である17歳の中宮定子様に仕え始めた。
華やかな宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、その才能を開花させていく。
機転をもって知識を披露し、清少納言はやがて、宮中での存在感を強める。
しかし幸福なときは長くは続かず、
権力を掌握せんとする藤原道長と定子様の政争に巻き込まれて…。
清少納言の心ふるわす生涯を描く、珠玉の歴史小説!


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「はなとゆめ」
大好きだった少女漫画雑誌ではありませんよ。
これまで「天地明察」「光圀伝」など、硬い題名がイメージの冲方丁さんが、
ガラリと変えて平仮名の題名。
しかも「はなとゆめ」というのですから、オドロキます。


でもこれは清少納言の物語。
女性で平仮名を用いて書かれた「枕草子」を扱うには
やはりこういう題名でなくては・・・。
清少納言が一条帝の中宮・定子に仕えた宮中でのことを、
「はな」であり「ゆめ」であったと言っているのです。
しかし実際は、権力を我が物にしようとする藤原道長により、
定子方一族が次第に苦境へ追い込まれていくという、
なんとも無残な物語なのです。
それでもなおかつ、清少納言は
「枕草子」にはそのようなつらいこと苦しいこと恨みごとには一切触れず、
「はなとゆめ」の定子の身辺のことを書き上げた。
女の意地ですね。
ということで、非常に興味深い物語ではありますが・・・。


あくまでも清少納言の視点、ということで、定子の人物像については、
夢のように美しく聡明で、しっかりしていると、
そういうふうにしか描かれていません。
はじめて宮中に上がったとき、清少納言は28歳、定子はなんと17歳。
清少納言は、ただひたすらに宮中の人々に対して気後れし、
イジイジとしており、そして定子のことは大絶賛。
時代性から言って、それが真実だったのだろうと思いながらも、
現代感覚としては少しイライラしてしまいます。
しかし、定子の父で、道長の兄である道隆の死後、
道長がやりたい放題で道隆方の一族を追い込んでいくあたりから、
物語としては面白くなってくるわけですが。
清少納言はともかく、定子の立場が、一条帝の御心その一点にのみ支えられている、
というのがいかにもつらい。
私としては「はな」も「ゆめ」も取っ払って、
定子その人の内心に触れた物語が読みたくなってしまいました。
ということで、やや物足りない感じ・・・。

「はなとゆめ」 冲方丁 角川文庫
満足度★★.5


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