映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

わたしに会うまでの1600キロ

2015年09月03日 | 映画(わ行)
自分と向き合う3カ月



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さて、オーストラリアを行く「奇跡の2000マイル」に続いて
今度はアメリカ「わたしに会うまでの1600キロ」。
アメリカ西海岸を南北に縦断する「パシフィック・クレスト・トレイル」という遊歩道を
一人の女性、シェリル・ストレイドが踏破した実話の映画化です。
遊歩道なんていうとなんだか生ぬるく聞こえてしまいますが・・・
男性でも音を上げる険しい山道、酷暑の砂漠などもある
メキシコ国境付近からカナダ国境付近まで続く大変な道のりです。
本作のオフィシャルサイトに、その地図が
日本列島の大きさと比較できるように乗っていますので、ぜひご覧あれ。
日本縦断より長いです。



そもそも、彼女がこの旅を思い立ったのは
母親(ローラ・ダーン)が亡くなり、その虚しさから逃れるために
麻薬とセックスに溺れ、夫と離婚することになってしまった。
そんなどん底の自分から立ち直ろうと思ったのがきっかけです。
映画は、長く険しい道のりを描写する傍ら、
シェリルの脳裏をよぎる過去のフラッシュバックを描写することにより、
彼女がこのような旅に出るまでの出来事をたどることができるようになっています。
シェリルにとって母親は道標であり希望の光だったのでしょう。
暴力をふるう夫と別れシングルマザーとして2人の子どもを育てながら、
いつも明るく前向きだった母。
その母の望む姿こそが自分のあるべき姿だと思っていたシェリルにとって、
母の死は自分の生きる方向を見失うことでもあったのです。



だがしかし、これまで彼女は山歩きの経験も何もなかったのですね。
バックパックに荷物を詰め込みすぎて立ち上がるのもやっと・・・、
歩き始めた直後にすでに後悔。
おまけに靴のサイズが合わずに大変なことに・・・。
テントを張るのも四苦八苦。
うーん、せめてベテランに少しはノウハウを学ぶべきでしたね・・・。
まあ、途中できちんとアドバイスしてくれる方もいて、良かったですが。
でも、いかにもそういう勢いだけで、というところが女性らしいし、
その後呆れるほどの困難に遭いながらも諦めなかったというのが、
やはり女性ならではという気がします。
でも女性の一人旅。
ガラガラヘビよりもむしろ“男”が怖いこともあるのが、辛い。



よろよろといかにも心もとなげな彼女の歩みが、
次第にしっかりしたものに変わっていきます。
大自然の中を一人歩む時、
母と過ごした幸せな時間、そして母の死と、その後の自分の惨めな姿
・・・いろいろなことが頭に浮かんできます。
良いことも悪いことも、全て太陽の光にさらされて、昇華していくような・・・。
そしてまっさらな自分に戻れそうな、そんな気がしてきます。



でも、本作の邦題は、いかにも「自分探し」の旅を強調しすぎていて、
あまり好きではありません。
原題は“WILD”といたってシンプルです。



作中「コンドルは飛んで行く」の曲がずっと見え隠れしていますが、
ラストでやっと実のサイモンとガーファンクルによる曲がかかります。
そういう演出もステキでした!!



そしてまた、エンドロールで実のシェリル・ストレイドさんの写真が紹介されるのですが、
これがまた、目に力のある美しい方。
ロビン・デビッドソンさんと共通の雰囲気が感じられました。


「わたしに会うまでの1600キロ」
2014年/アメリカ/116分
監督:ジャン=マルク・バレ
出演:リース・ウェザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー、ミキール・ハースマン、ギャビー・ホフマン

旅の過酷度★★★★☆
達成感★★★★★



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