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ヒトラーへの285枚の葉書

2017年08月10日 | 映画(は行)
今だからこそまた、意義深い




* * * * * * * * * *

ドイツ人作家ハンス・ファラダが
ゲシュタポの文書記録をもとに執筆した小説「ベルリンに一人死す」を映画化したもの。



1940年6月、ベルリン。
フランスがドイツに降伏したとして、街は悦びで賑わっています。
そんな時、労働者階級のオットー(ブレンダン・グリーソン)とアンナ(エマ・トンプソン)、
クバンゲル夫妻のもとに一通の手紙が届きます。
それは彼らの一人息子ハンスの戦死の知らせでした。
悲嘆に暮れるアンナ。
オットーは戦争に息子を奪われたことに、どうしようもない怒りを感じます。
そこでオットーはヒトラーに対する批判を綴ったポストカードを街中に置きます。
夫婦でこのささやかな抵抗を続けていきますが、
やがて、ゲシュタポ(秘密国家警察)の捜査の手が迫ります・・・。



戦時中のドイツ国内も決して一枚岩ではなかった、ということですね。
勝ち続けているときでも常に戦死者は出ます。
自分の息子や孫が戦死した家庭はそれこそいくらでもあるでしょうけれど、
こんな風に抗議の声を挙げる例は殆どなかったということでしょう。
それというのも、この政権の弾圧があまりにも大きいから・・・。

私、若干タカをくくっていましたが、本作のラストには震撼とさせられました。
死刑といえばまあ、銃殺かと思ったら・・・。



クバンゲル夫妻は直接ヒトラー宛ての手紙を出したわけではありません。
宛名のないポストカードを、街なかのアチラコチラに置いて歩いたのです。
もしその行為を誰かに見られたら一巻の終わりです。
非常にスリルがあります。
葉書は指紋が残らないように手袋をはめ、
筆跡がわからないようにじっくりと書きます。
そう簡単に量産はできません。
それをなんと285枚! 
葉書はクバンゲル夫妻の予想以上に多く警察に届けられてしまいます。
担当のエッシャリヒ警部(ダニエル・ブリュール)が、
大きな地図に葉書の置かれた場所に赤いフラッグを立てていくのですが、
それは最後の方には真っ赤になっているのです。
体制を批判するものに対して、警部ははじめ怒りを感じ、
使命感に燃えて犯人を突き止めようとしますね。
犯人を見つけられないことで上から嫌がらせを受けたり(パワハラ!)
そのため、誤認逮捕で死者まで出したり・・・。
実は夫妻の葉書をすべて読んだのがこの警部で、
いつしか彼自身その葉書や、犯人の熱意に感化されていく
・・・というあたりが本作の凄いところです。
もちろん、組織ではなく個人で命がけのレジスタンスを続けた
夫妻は言うまでもありませんが。



しかし冷静に考えてみましょう。
この285通がたとえ1000通だとしても、
それが一体この体制にどれだけの影響があるでしょう。
今のように、SNSであっという間に拡散してしまうというのなら話は別ですが・・・。
そんなとるに足らないことにも血まなこで犯人探しをし、命までを奪うという、
あまりにも理不尽なことが公然と行われていた・・・。
権力というのはその力が間違った方向に働くとこんなにも恐ろしいことになってしまうのです。
今だからこそまた、意義ある作品だと思います。



この日本がそんな国にはならないように・・・。
つい祈ってしまうのでした。



「ヒトラーへの285枚の葉書」
2016年/ドイツ・フランス・イギリス/103分
監督:バンサン・ペレーズ
出演:エマ・トンプソン、ブレンダン・グリーソン、ダニエル・ブリュール、ミカエル・パーシュブラント、モニーク・ショーメット

歴史発掘度★★★★☆
現代への警鐘度★★★★★
満足度★★★★☆
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