映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ガタカ

2008年09月25日 | 映画(か行)
ガタカ

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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遺伝子が社会生活のすべてを決定するという、サスペンスタッチの近未来SF。
遺伝子を解読することにより、その人の性格や疾病傾向、
およその寿命まで推測できてしまう、
というようなニュースが伝えられたのも、そう古くはないことだと思います。
この作品はこのことが一人歩きして、
遺伝子がその人の価値を決定付けてしまうという、
あり得なくもなさそうなところが怖い、ストーリー。

胎児の間に劣性遺伝子を排除し、出産するということが普通に行われる世界。
主人公ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、
そのような操作なしで、自然な形で生まれました。
ところが、さっそくの検査で、「心臓が弱く、寿命30年」と宣告される。
確かに病気がちでやせっぽちの彼は、
その後遺伝子操作で生まれた弟よりも、かなり見劣りがする。

彼は子どもの頃から宇宙飛行士になる夢を抱いていました。
しかし、宇宙開発ガタカ社は、優秀な適正遺伝子を持つものしか採用しない。
この世界では、優秀な遺伝子を持つものだけがエリートとして優遇され、
そうでないものは下層社会の中から決して浮かび上がることはできない、
そんな社会なのです。

しかし、そんなところには必ず裏のルートがあるもので、
ある組織を通じて、彼は、ジェローム・モロー(ジュード・ロウ)という男と知り合う。
彼こそは、完璧な遺伝子の持ち主で、エリートの道を約束されていた。
しかし事故のため、下半身不随。
ヴィンセントはジェローム・モローの名前と遺伝子、つまり、血液・尿など・・・を借りて、ガタカ社入社を果たすのです。

遺伝子や名前は借り物でも、入社後は、やはり彼自身努力するしかありません。
必死に学び訓練に耐え、彼は土星の衛星タイタンへの飛行士の座を得る。
日常的にある血液や尿検査のため、
彼は毎日ひそかにジェロームの血液や尿を持ち込み、たくみに検査をすり抜ける。また、彼自身の体毛など遺伝子の痕跡を落とさないよう、
毎日細心の注意を払いヒゲをそり、垢を落として出勤する。

一方この、完璧な遺伝子を持つ男をジュード・ロウが演じるというのはすごく説得力あります。
確かにそうだよねえ・・・と、ついため息が漏れてしまう。
彼は水泳選手だったのですが、どうしても金メダルが取れず、銀メダル止まり。
「金メダルを取るべく生まれたのに、銀メダルしか取れない」 
このことに傷ついた彼は自殺を図り、半身不随となっていたのです。
この二人の間に友情が芽生えていく、
ここのところが、この映画のいいところなんです。
彼は、遺伝子の情報など無視しひたすら努力するヴィンセントに自らの夢を託す。
これはほとんど愛ではないか、と思うほどの・・・。
いえ、勝手に妖しい想像をして楽しんでるだけで、
そういう映画では決してありません!

そんなときに、社内で殺人事件が起こるのです。
いっそう厳しい遺伝子の検査、刑事の疑惑の目に、彼は耐え切ることができるのか・・・!?

遺伝子の情報なんて、単なるその人の一面を表すものでしかない。
そんなもので計れないもっと大きな可能性を私たちは持っている、と思いたいですね。
今、血液型で人を計るような風潮がありますが、
しゃれのうちなら良いですが、入社の判断材料にまでしてはいけませんよね。
ちょっと話は別かも知れないけど、学歴で人を計るのもやめた方がいい。

とてもいい作品に加えてジュード・ロウなので、紹介していただいたCDさんに感謝!!です。

1997年/アメリカ/106分
監督:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、ローレン・ディーン



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2 コメント

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Unknown (CD)
2008-09-26 15:15:50
たんぽぽさん、こんにちは!
感謝!なんて言ってもらってこちらこそ感謝!です。
おすすめした映画を気に入ってもらえるのって
すごくうれしいですね。ありがとうございます。

この映画、本当にいいですよね。
主役の3人といい、映像・音楽といい、美しく端整な
映画という側面もありながら、伝わってくるのは
人間賛歌的な熱いものだったりして、すごく良かったです。
ジュード・ロウも良かったですねー。
最後はたまらなかったです。


Unknown (たんぽぽ)
2008-09-26 20:58:26
>CDさま
一見無機質な未来社会。
でも、やはり人と人とのふれあい、つながりは熱い。
そんなところが魅力なんですねー。
こんなところでもどろどろの殺人事件が起こったりするのもまた・・・。
いつでも、どこでも人の心は変わらないということですね。

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