映画と本の『たんぽぽ館』

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「紙の動物園」ケン・リュウ

2017年05月15日 | 本(SF・ファンタジー)
東洋と西洋を結ぶ物語の数々

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)
伊藤 彰剛,古沢 嘉通
早川書房


* * * * * * * * * *

香港で母さんと出会った父さんは、母さんをアメリカに連れ帰った。
泣き虫だったぼくに母さんが包装紙で作ってくれた折り紙の虎や水牛は、
みな命を吹きこまれて生き生きと動きだした。
魔法のような母さんの折り紙だけがずっとぼくの友達だった…。
ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作など、
第一短篇集である単行本版『紙の動物園』から7篇を収録した
胸を打ち心を揺さぶる短篇集。

* * * * * * * * * *

ケン・リュウ、日頃SFを読むことの少ない私にははじめての作家です。
しかし、ヒューゴー賞等3冠というのはすごい。
興味を惹かれて手に取ってみました。
そもそもこの方は何者?ということで・・・。

中国生まれ。
11歳にしてアメリカ移住。
ハーヴァード大学卒。
弁護士にしてコンピュータープログラマー・・・。
なんとグローバルな天才!


そして表題作「紙の動物園」
アメリカ人の父は、香港で出会った中国人の母を連れ帰り結婚し、
ぼくが生まれます。
ぼくの幼いころ、母はよく折り紙で虎や水牛などの動物を作ってくれた。
その折り紙は命を持って動き回り、
幼いぼくの遊び友達となってくれた・・・。
そんな美しい思い出は過去のこと。
ぼくは長じるに従って、このいつまでも英語を覚えようとしない母に
いらだちを感じるようになるのです。
一人ぽっちの異邦人である母。
息子が生まれ、自分が愛しまた愛される対象ができたときにはどれだけ嬉しかったことか。
しかし成長した息子は自分を疎ましく思い、近寄りもしない・・・。
そうして語られる母の過去・・・。
なんて切なく幻想的な物語なのでしょう。


著者が生まれ育った中国から米国に渡ったのが11歳の時、
というのが結構重要ですね。
もうほとんど人格形成ができていて、
彼自身のアイデンティティは中国人の方にあるのかもしれない。
そうして米国に渡ったときには様々な葛藤があったに違いありません。
そんな思いが底の方にあって、
生まれてきた多くの宝石のような物語の数々だと思います。


最後の「文字占い師」では、漢字の成り立ちの話が出てきたりして、
これは通常のアメリカ人には書けないですね。
中国と台湾、日本、そしてアメリカの複雑な過去を苦く描き出しています。
そして否応なくそれらに巻き込まれてしまった名もなく貧しい人々の悲しみ。
圧倒されます。


著者は、東洋と西洋を結ぶ稀有で天才的な、
まさにこれからの世界を形作る一人だと思います。

「紙の動物園」ケン・リュウ ハヤカワ文庫
満足度★★★★★
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