映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

君の名は。

2016年09月05日 | 映画(か行)
夢と知りせば・・・



* * * * * * * * * *

本作を単に「青春モノ」と思っていた私は、見ないつもりでいたのですが、
テレビで監督へのインタビューを見て興味を持ち、評判も良いようなので見てみました。
いやしかし、見て正解、素晴らしい感動作でした。


1000年ぶりに彗星が地球に接近するという、その1カ月前。
山深い田舎町に暮らす女子高生三葉(みつは)は、東京の高校生になった夢を見ます。
都会に憧れる三葉は、妙にリアルな男子高校生としての一日を楽しみ、
一日が終わり、翌朝目を覚ますと元に戻っている。
気まぐれのように起こるその“夢”は、週に2・3度起こり、しばらく続きます。

一方、東京で暮らす男子高校生の瀧も、
山奥の町で女子高生になっている夢を見ます。

二人は、夢のなかで互いに入れ違っていることに気付き、
その日起こったことをメモに残し、交流するようになります。
二人のそんな日常が、美しい背景描写に縁取られながら、交互に語られていきます。
ところが、ある時急にその夢が途絶えてしまうのです。
瀧は夢の記憶に残るその場所を突き止め、
実際にその町に行って三葉と会おうと決心するのですが・・・。


男女のハートが入れ替わるという話はこれまでにもあったと思うのですが、
本作は予想以上にスペクタクルで、そしてショッキングな内容でした。





冒頭、夜空に美しく流れていく彗星の映像に魅せられるわけですが、
その彗星がそもそもこんな事態を引き起こしたというわけで、
本当はのほほんと眺めている場合ではないことが、あとになってわかります。



三葉は神社の家系ということで、古来の日本の風習や田舎町の、
鄙びていてそして神秘的な出来事がなんとも言えない世界観を紡ぎだしています。
先日何かのTV番組で、監督が古今和歌集のうたから本作の着想を得たとおっしゃっていたのですが、
なるほど、それもうなずける舞台背景でした。



三葉の祖母や母も不思議な夢を見ることがあった、ということがわかり、
三葉は
「そういう家系は今、この時のためにこそあった!!」
とひらめきます。
また、三葉の父が町長であることにもまたちゃんと意義がある。
現実には出会ったはずのない二人なのに、なぜ三葉の赤い組紐を瀧が持っているのか、
という謎も最後のほうでわかります。



こんなふうに幾つもの仕掛けが、パズルのように組み合わされていて、
そしてすべてが収束してゆく様がまた、脳を刺激する。
その上にまた、とびきりのラストが用意されていて、涙、涙でした。
そうそう、本家「君の名は」を意識したシーンもありましたよね。
地震や津波、台風。
平和な日常が理不尽にも一瞬のうちに崩れ去ることが、人の世にはままある。
本作はそんなふうに命を落とした人々への鎮魂歌であるのかもしれません。



ちなみに、深海監督のおっしゃっていた歌は

小野小町「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを 」


「君の名は。」
2016年/日本/107分
監督・脚本:新海誠
出演(声):神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌

映像美★★★★★
日本度★★★★★
読めないストーリー性★★★★★
満足度★★★★★


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2 コメント

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はじめまして! (nanaco)
2016-09-10 09:17:34
nanacoと申します。
ブログ村からお邪魔させて頂きました^^

私も先日、この映画観てきました。
ハッとするような映像美に、SF展開のストーリーが相まって、
何とも心に残る映画だったなぁと、心から満足しています。

もともと新海監督作品が好きなのですが、
その中でも『君の名は。』は、最高傑作ではないかと思っています(*^^*)
もう一回、映画館で観たいなぁなんて…

ところでたんぽぽさん、北海道にお住まいなのですね!
私も札幌に住んでいるので、ちょっと親近感が湧いてしまいました(笑)
またお邪魔させていただきます♪
鮮烈 (たんぽぽ)
2016-09-10 11:45:48
>nanacoさま
コメントありがとうございます。
私もこの作品ですっかり深海監督ファンになりました。と言っても他の作品は見ておらず、慌てて「言の葉の庭」のレンタル予約をしたところですが、急に興味を持ったひとが多いらしく、なかなか順番が回ってきそうにありません。
本作は、細田守監督の「サマー・ウォーズ」を見た時に匹敵するショックでした。色々な名監督が出てくるのは嬉しい限りですね。
同じ札幌ですね。多分nanacoさんはずっと私より若いと思いますが・・・。でも、グイン・サーガもお好きですか?当ブログでもグイン・サーガの記事があるので、見てみてください。最近、続きを読むのは断念してしまいましたが。

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