映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

2017年03月21日 | 映画(あ行)
新たな目で、しっかりと世界を見るように



* * * * * * * * * *

本作はドキュメンタリーとは言いながら、一風変わった作りになっています。
イタリア最南端のランペドゥーサ島。
北アフリカには最も近い風光明媚な島。
ところがそこは、アフリカや中東から
命がけで地中海を渡って来る難民や移民の玄関口でもあります。
本作は小さな船にびっしりになって乗ってくる難民たちの様子と、
その島に住む人々の穏やかで何気ない日常を交互に映し出していきます。


難民の船はこんな風。

甲板に人がびっしり、ということで驚かされますが、
実はその内部のほうがもっと悲惨。
身動きならないほどぎっしり人が詰め込まれたその船室は、
暑くて風通りもなく、水もおそらく自分で用意できるだけしかなく、
脱水症状でフラフラになってたどり着ければいい方。
多くの人がそこで亡くなったままたどり着くのです。
この船でのポジションの差はすなわち船賃の差。
…何という過酷な現実。

島の人口5500人のところへ年間5万人を超える難民・移民がやってくるそうです。
船からの救助通信を受け、救助に当たる人々の健闘も描かれますが、
最後に多くの遺体を搬出までしなければならず、
徒労感をにじませます。



一方島の人々は多くは漁業で身を立てています。
12歳の少年サムエレは、友達とパチンコ遊びに興じます。
ラジオからは島民のリクエストの曲。
同じ島で起こっている難民の受難のことは殆ど意識には登りません。
ラジオのニュースで難民の船が遭難し多くの人が 亡くなった
というのに僅かに眉をひそめるだけ。



でも、島の人達がひどいなんていえませんよね。
つまりは、ニュースを聞いていっとき心を痛める私たちと全く同じなだけなのですから。
なかで、このサリエル少年の左目の弱視が見つかり、
矯正用のメガネをかけるというシーンがあります。
今までよく見えていなかったもう一つの目で、
しっかりと世界を見るようにと・・・、
そんな願いが込められているようでもありました。



難民たちがたどり着いて、ようやく人並みのケアを受けられるのはいい。
そして世界各国に受け入れられていくのもいい。
けれども、本当は人は生まれ育ったところに住みたいものなのではないでしょうか。
なんとかそれぞれの国で、平和な生活が成り立つように援助できないものか・・・。
内紛や干ばつなどによる飢え、貧困・・・。
そういうところに自立支援できたほうがいいのに・・・。


「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」
2016年/イタリア・フランス/114分
監督:ジャンフランコ・ロージ
現実を突きつける度★★★★★
満足度★★★★☆
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