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「銀のほのおの国」 神沢利子

2016年12月12日 | 本(SF・ファンタジー)
生きていくために食べる

銀のほのおの国 (福音館文庫 物語)
堀内 誠一
福音館書店


* * * * * * * * * *

剥製のトナカイのガラスのひとみに炎がゆれて、たかしとゆうこの冒険がはじまった。
人はなぜ、他の生きものの命を奪わなければ生きられないのだろう。
重たい問いを抱きながらふたりは、
いにしえのトナカイ王国復興をめざし、動物たちの国の壮絶な戦いにたちあう。
日本で生まれた本格ファンタジーの傑作。


* * * * * * * * * *

たかしとゆうこの兄妹は、
家の壁にかけられていたトナカイの剥製に引きずられて、異界へ舞い込みます。
トナカイは二人を置き去りにして風のように去ってしまう。
家へ帰るすべさえない二人は、やむなくあのトナカイの後を追うことにし、
辛く厳しい旅が始まります。


う~ん、これを小学生が読むんですか、と言いたくなるような、
厳しい内容の物語です。
この時点でこの世界は、青イヌ(オオカミ)が支配しており、
他の動物たちは青イヌに襲われることに怯えながら細々と暮らしています。
その昔、トナカイと青イヌが覇権を争い、
トナカイは破れて、北の山で眠りについていたのです。
しかしこの度、蘇ったトナカイのはやてがトナカイたちの眠りを覚まし、
再び、青イヌとトナカイ、そしてそれぞれに加担する動物たちの
壮絶な戦いが幕を開けようとしています。
たかしとゆうこは、その戦いに立ち会うことに・・・。


この兄妹は、ふとしたことで心がすれ違ってしまいます。
ゆうこは弱ったライチョウを見つけ、必死に看病するのですが、
彼女が眠っているうちにそのまま死んでしまいます。
たかしは、これからの厳しい旅のために、この肉を食べなければいけないと判断し、
ゆうこにもそれを黙って食べさせてしまうのです。
しかし真実にきづいてしまったゆうこは言う。

「うそつき、うそつき! 
お兄ちゃんがあの鳥を殺したんなら、青イヌとおんなしだ。
お兄ちゃんはオオカミだ!」

正に、本作のテーマとも言うべきこの言葉。
彼女は本作の最後の方でまた、このように問いかけられます。

「ゆうこよ、青イヌが食う肉とおまえさまが食う肉と、どこがどう違うか、わかるかの。
そいつを家に帰ってからとっくり考えるのじゃな。」

そしてまた、続いて

「だが・・・忘れるかもしれぬ。
そうよ、おまえさまはまもなく忘れてしまうじゃろう。
しかし、わしのこの問は忘れられぬ。・・・」


確かに、「ゆきてかえりし物語」なのです。
遥かな異界を旅して帰った者は、具体的なことは忘れてしまう。
だけれども、魂の底で感じ、刻み込まれたものは一生消えることはない。


最近ファンタジーといえば、夢と魔法の世界・・・と思われがちなのですが、
本当はこんな風に、現実に立ち向かう何らかの力を、無意識の中に得るためのもの・・・。
たかしとゆうこは実際に剣を持って敵と戦いはしません。
(たかしには自己防衛的に青イヌを倒すシーンはありましたが)
二人はヒーローになるためにそこへ行ったのではない。
生きていくために食べること、戦うこと、そういう意味を知るための旅でした。
そこには、残酷な殺戮や裏切りがあります。
けれども、知恵や勇気や自己犠牲という大切なこともまた、示されるのです。
とすればやはり、小学校高学年くらいには是非読んでおくべき本なのかもしれません。
私も、その頃読んでみたかった・・・。
えーと、本作が本にまとめられたのは1972年ということなので・・・、
あ、少なくとも小学校の時に読むことはできなかったわけでした!!

「銀のほのおの国」神沢利子 福音館文庫
満足度★★★★★
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