映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「夜の写本師」乾石智子

2017年01月04日 | 本(SF・ファンタジー)
生み出し、育み、強くし、支配する 女性

夜の写本師 (創元推理文庫)
乾石 智子
東京創元社


* * * * * * * * * *

右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。
三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。
女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジストに、
目の前で育ての親を惨殺されたことで、彼の人生は一変する。
月の乙女、闇の魔女、海の女魔道師、
アンジストに殺された三人の魔女の運命が、
数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。
宿敵を滅ぼすべく、カリュドウは魔法ならざる魔法を操る〈夜の写本師〉としての修業をつむが……。
日本ファンタジーの歴史を塗り替え、
読書界にセンセーションを巻き起こした著者のデビュー作。


* * * * * * * * * *

運命の糸に操られ、1000年に渡る熾烈な魔術の攻防を繰り返すファンタジー。
最近児童向けのファンタジーをよく読む私ではありますが、
大人向けは、しばらくグイン・サーガからも遠ざかっていますし、久しぶり。
でも実のところ、魔術というのは苦手です。
だって、魔術といえば何でもありになってしまいますもんねえ・・・。
これを「大人」が読むに耐える作品にするためには、
しっかり「心の深淵」のことが描かれていなければなりません。


さて本作主人公・カリュドウは、魔道士ではなく「写本師」です。
印刷ではなく、一文字一文字を羊皮紙に丁寧に書き写し、本とする。
そしてその文字には魔法の力が込められていく。
良いですね、こんな設定は今まで見たことがない。
著者の冴え冴えとして流麗な文章が、このほの暗く陰湿な物語とマッチして、
なんとも言えない世界観を紡いでいます。


そしてもう一つ、本作の大事なところは「女性性」について。
本作で女性は月と闇と海の力を持つとしています。

「月と闇と海の力は、女が持つものなのだ。
どの女性ももち、いかなる男性でももちえぬもの。
それが私の中に集まってきている。
生み出し、育み、強くし、支配する。
すべてをのみこみ、生かし、死にいたらしめ、ふたたび創り上げる。」

通常「女性」と言うと、産んで守って育てる・・・と、
そういう面だけを思い浮かべるかもしれません。
でも、近頃私が勉強していることによれば、
生の力を持つとすればそれは同時に死の力をも持つ。
包み込むけれどもそれは支配するということでもある。
・・・と、必ずしもプラスの面ばかりではないのです。
グリム童話などに登場する「継母」は始めは「実の母」の話だったといいますが、
つまりは女性性の影の部分を言っているわけですね。
そういうところもきちんと踏まえてある本作、なかなかのクオリティ。
感服しました。


う~ん、だけれどもカタカナ名前に弱い私、
人々が生まれ変わり時が過ぎていく本作では、
誰が誰やらよくわからなくなってきて・・・、
正直、しんどい。
このまま乾石さんの著作を読破しよう!というまでの意欲はもてませんでした・・・(T_T)


「夜の写本師」乾石智子 東京創元社
満足度★★★★☆
図書館蔵書にて
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2 コメント

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Unknown (パール)
2017-03-03 20:04:37
読んでいただきありがとうございました。(作者のようなコメントですね(笑))。
本作も含めた、オーリエラントシリーズはまだ書き続けられています。シリーズといいながら、それぞれが独立した作品となっており、「魔法」の種類も様々で、魔道師は、曖昧で身近で、正邪で仕分けすることができない存在として描かれています。
本作が一番読みにくかったのですが、シリーズを読み進めるにつれ、魔道師の抱える「闇」とその対峙について引き込まれております。

カタカナ名前…覚えきれず悩まされています。
たんぽぽ様は、どんどん読み進めていらっしゃいますが、私は本当に四苦八苦しています。海外ミステリーは特に、読み終えるのに時間が…(涙)。細切れな時間で読むと、それはもう…(涙)
コツってあるんでしょうか?
カタカナ名前 (たんぽぽ)
2017-03-04 19:48:28
>パールさま
カタカナ名前を覚えるコツ・・・
そんなものがあれば、私も知りたいです。
この間読んだ「罪と罰を読まない」という本では、ラスコーリニコフをラスコと短縮して覚えたり、
ウラズミーヒンを単に馬と言ってしまったり、
マルメラードフは、関係も含めてマメ父などと呼んでいましたが、
それもいい手だと思います。
それもあまり大勢になると余計にわからなくなりそうですが・・・(^_^;)
地道にメモをとるのが良さそうですね・・・

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