映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

サウスポー

2016年06月11日 | 映画(さ行)
倒すのは昨日の自分だった



* * * * * * * * * *

ボクシングを題材とした映画は数多くあって、
そして私は特別にボクシングファンでもなんでもないのですが、
見るとつい引きこまれてしまいますねえ。
少し前には「クリード チャンプをつぐ男」を見たのでしたが、それもよかった。



本作の主人公はライトヘビー級世界チャンピオンのビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)。
本作は無名のボクサーがチャンピオンになるまでを描く作品ではなくて、
主人公はまず始めから無敵とうたわれたチャンピオンです。
しかし、彼は「怒りをエネルギーに変える」などと評されており、
つまりはケンカ戦法とでもいいましょうか、
あまり防御は構わず、とにかくひたすら打とうとする。
そのため最近では一試合終われば顔も体もボコボコの傷だらけ。
それを心配した妻モーリーンは言うのです。
このままでは、パンチドランカーになって選手生命も危うい、と。
しばらくは次の試合も控えるようにと。

妻に全幅の信頼を置いているビリーは、その言葉に従おうとするのですが、
しかし、生来の切れやすく粗暴な性格は変えられない。
ある時、ビリーが起こした乱闘騒ぎに妻が巻き込まれて、
命を落としてしまうのです。
ボクサーライセンスは剥奪され、収入が途絶えたため家屋敷を処分しなければならず、
おまけに娘レイラを養育する資格がないとして、
レイラは養護施設に入れられてしまいます。
そのレイラには
「お母さんじゃなくて、あんたが死ねばよかった」
と言われてしまうのです。



すべてを失いどん底に落ち込んだ彼が、どのように再生していくのか。
そこが見どころ。
世界チャンピオンがみすぼらしいジムの掃除などをしながら、
トレーナーのティック(フォレスト・ウィッテカー)の元で、
新たなボクシングスタイルを身につけていきます。



ストーリーは始めから予測がついてしまいます。
にも関わらず、次第に胸が熱くなってくる。
それはやはりビリーの更生しようという真摯な決意と、地道な努力が、
ホンモノだとわかるから。
本当の強さが身についたなら、仮に人から何を言われても動じない、
そういうものかもしれませんね。
だから、以前の彼は本当の強さや自信をまだ持っていなかったのかもしれません。
キャッチコピー「倒すのは昨日の自分だった」、
真の敵はダメな自分自身というのが
正に的を得ています。



ジェイク・ギレンホールは本作のために6箇月のトレーニングをして、
ボクサーとしての体型や動きを身につけたそうですが、
実際、素晴らしい肉体・・・。
撮影もスタントなし、すべて本人が行ったとのこと。
役者さんも大変ですが、ダメ男のビリー・ホープぶりもすばらしい。
レイラ役のウーナ・ローレンス、まだ幼いのですが、
時としてひやりとするほどに大人びた表情を見せていました。
数年後には、主役級の女優に成長するかも。

「サウスポー」
2015年/アメリカ/124分
監督:アントン・フークア
出演:ジェイク・ギレンホール、レイチェル・マクアダムス、フォレスト・ウィテカー、ウーナ・ローレンス

ダメ男の再生度★★★★★
ボクシングの迫力度★★★★☆
満足度★★★★☆


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