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「ゲド戦記Ⅰ 影との戦い」 ル=グウィン

2017年03月05日 | 本(SF・ファンタジー)
自己の深遠と向き合う

影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)
ルース・ロビンス,Ursula K. Le Guin,清水 真砂子
岩波書店


* * * * * * * * *

アースシーのゴント島に生まれた少年ゲドは、
自分に並はずれた力がそなわっているのを知り、
真の魔法を学ぶためロークの学院に入る。
進歩は早かった。
得意になったゲドは、禁じられた魔法で、自らの"影"を呼び出してしまう。

* * * * * * * * * *

さて、ファンタジーの超大作「ゲド戦記」に突入です。
外伝も含めて6巻まであります。
まあ、じっくり行きましょう。


この物語では「名前」がとても大切です。
人の名前のみならず、物の名前、時には地理上の地名、
それらがそのものの「本質」を表すのです。
だから人はめったにその「本当の名前」を口にしない。
ゲドというのも「本当の名前」なので、
彼はふだんは「ハイタカ」という呼び名を使用するのです。
彼の本当の名を知るのは、名付け親と心からの友のみ。
もし不用意に知られるべきでない者にその名を知られてしまうと、
災いが生じることになるでしょう。
おとぎ話等にもよくありますね。
魔物が本当の名を言い当てられて退散するような話が・・・。
魔法を使うにはその「本当の名前」を知っている必要があるので、
ゲド、いえ、ハイタカが無数のものの「本当の名前」を
暗記しなければならないというシーンもあります。
なるほど、魔法の呪文というのはそういうことなのか・・・と、
妙に納得してしまった私。


さて、魔法を学ぶためにロークの学院に入ったハイタカは、
もともとの素質もあって、優秀な成績を修めていくわけですが、
このあたりまでは読んでいてもハイタカの驕り高りぶりが気になります。
得意の絶頂にある彼は、
ライバル心を燃やしているヒスイへの対抗心もあって、
決して使うべきではない魔法を使ってしまうのです。
それは恐ろしい結果を生みました。


つまりこの物語はここが本当の始まりなのです。
彼が呼び出してしまった"影"というのは彼自身の分身。
自身の影に呑み込まれてしまいそうになるハイタカは怯え、逃げ惑います。
けれど、彼の恩師はいう。
どこまで逃げても影は必ずついてくる。
これを終わりにしたいのなら立ち向かうしかないのだ、と。
まだ少年のハイタカにとってなんという大きな試練なのでしょう。
これが子供向けのファンタジーというにはあまりにも厳しいものですが、
しかし、これまで辿ってきたファンタジーも結局は皆そうでしたね。
「ファンタジーに夢がある」なんて言わせない。
そこにあるのは自己の深遠と向き合う厳しさがすべて。


本作の舞台、アースシーの世界には大海原にいくつもの島々が散らばっています。
そのため、航海のシーンがとても多い。
ハイタカが旅をしながらどんどん船や航海の技術を身に着けていくところも見どころです。
長いハイタカの旅は始まったばかり。
次は青年ゲドの物語です。


「ゲド戦記Ⅰ 影との戦い」ル=グウィン 岩波少年文庫
満足度★★★★★
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