映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

人生はシネマティック!

2017年12月15日 | 映画(さ行)
人の死に意味なんかない



* * * * * * * * * *

1940年、ロンドン。
第二次世界大戦中、
ロンドンは頻繁にドイツ機の空襲を受けている、そんな時期です。
カトリン(ジェマ・アータートン)は、
コピーライター秘書として雇われたのですが、
人手不足から、コピーを手がけるようになります。
そしてその腕を認められ、情報省映画局へ。
ここでは国民の戦意高揚のための映画作品を作っているのです。
そして、ダンケルクでドイツ軍の包囲から兵士を救出した姉妹の感動秘話を
映画化する脚本チームに加わります。
しかし、ベテラン俳優のわがままや、政府や軍からの横やりが入り、脚本は二転三転・・・。



ダンケルクのことは少し前に映画で見たので、記憶に新しい。
私にとってはその映画よりも、
コニー・ウィリスの「ブラック・アウト」と「オール・クリア」で表されている
まさにその時代なので、空襲の様子とか、地下鉄駅に人々が大勢避難している様子とかが
映し出されているのがすごく興味深かったのです。



そして、女性が自身のスキルを活かして生きがいを見出していく
というストーリーもいいですね。
また、映画の制作現場の内幕が描かれているのが非常に興味深い。
ここにビル・ナイという超ベテランを配置して、
落ちぶれた老俳優が「途中で死んでしまう老人の役なんか嫌だ」とゴネている
という設定にするなどとは、なんてステキ!



アメリカの参戦を促すために、あえてド素人のアメリカ人空軍ヒーローを
出演させなければならないというのも面白い。
当前演技は目も当てられない出来なのですが、
意外とカトリンは「イケメン」だからかまわない、と思っていたりします。
カトリンがそんなことを言うシーンが二か所もあって、
それをトムが呆れているシーンがすごく好き。
カトリンの気持ちはすごくよくわかるんですよねー。
なんだかんだと言って、女はイケメンに弱い。
ま、男性が巨乳に弱いのと同じですよ・・・。



さて、カトリンには共に暮らしている相手がいたのですが、
仕事が忙しくまた、のめり込むほどに面白くもあり、
次第に彼とは気持ちがすれ違っていきます。
そして、同じ脚本チームのトム・バックリー(サム・クラフリン)に心を寄せていく・・・。
などと書くと安っぽいラブストーリーじみてしまいますが、
ここの気持ちの移り変わりはツボをおさえていてなかなか良いのです。
そして、決して安直には終わらない。


作中で、トムがカトリンにこんなことをいいます。

「人の死に意味なんかない。
映画のストーリーならば、それは次の展開に必要な悲しみだけれど・・・。」

終盤で、この言葉を思い出さずにいられません。
死はある日突然に理不尽にやってくる。
しかし、考えてみればこれこそが本作の「ストーリー」としての出来事、
という二重性に包まれている。
結局は女性の自立に男は不必要ということかなあ・・・?



ところで、ダンケルク、
アメリカ人ジャーナリスト。
スクリューに絡まった何か。
次作が空襲監視員の話

・・・などなどのところに注目すると、
本作の脚本を書いた方は、コニー・ウィリスのファンに違いないと確信します!!

<ディノスシネマズにて>
「人生はシネマティック!」
2016年/イギリス/117分
監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ジェマ・アータートン、サム・クラフリン、ビル・ナイ、ジャック・ヒューストン、ヘレン・マックロリー

時代の切り取り度★★★★☆
ロマコメ度★★★★☆
満足度★★★★.5


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