映画と本の『たんぽぽ館』

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「チームバチスタの栄光 上・下」 海堂 尊

2007年12月11日 | 本(ミステリ)

「チームバチスタの栄光 上・下」 海堂 尊 宝島社文庫

「このミステリがすごい!」大賞受賞作ということで、以前から読みたかった本です。
文庫になってうれしい!

チームバチスタとは、東城大学医学部付属病院の心臓移植の代替手術である「バチスタ手術」専門の外科チーム。
このスタッフを率いるのが天才外科医桐生。
ところが、なぜか立て続けに3件生じた術中死。
どう考えても手術は成功と思われるのだが・・・。

心臓手術のためには、いったん心臓を停止させるのですね。
言ってみればその時点でその人は死んでいる。
そこで手術を施し、その後また心臓を蘇生させる。
そこでは、いつものように迅速かつ鮮やかな手さばきで、
間違いなく目的の手術がなされたはず。
ところが、いざ、心臓を蘇生させる時点で、心臓が作動しない。
手術室の凍りついたような空気・・・。

何らかの医療ミスを疑った院長の依頼で、万年講師田口が調査に乗り出します。
この田口はこの病院の「不定愁訴外来」を担当していますが、影では「愚痴外来」と呼ばれている。
体の不調や医師に対する不満、さらには、家族や友人間の不満、
そんな愚痴を延々と訴え続ける「患者」の話を聞くのが主な仕事。
出世街道とはまったく外れたこのポジションで、
それなりに平和で満足していたのに、突然降ってきた大役。
このキャラの立ち位置がなんだか味があって、いいのです。
だからといって不真面目なのではなく、成果も上がっているというところもよし。

さて、上巻では、結構普通の医療小説の味なんですが・・・、下巻、キョーレツな人物が登場して本のイメージががらりと変わる。
厚生労働省の変人役人、白鳥。
抜群に頭がいい、キレ者なのは間違いないのだろうけれど、
まったく彼独自の論理・言動で動いているので、周りの人たちはただ、目が点。
つまり、ここから「このミス」らしさがやっと出てくるのですが、
変人探偵登場、ということで、田口がワトソン役になるわけです。

手術室というのは確かに、衆人監視の中の密室。
ここで、医療ミスでなく、誰かが故意に手術を失敗させようとたくらんだら・・・それはやはり殺人事件。
いったい誰が、どうやって、何のために・・・?
これまでにないテイストのミステリでした。

この本は、続編がまだまだあるんですよね。
間髪を入れず、文庫化してほしい!

ちなみに、年末恒例で出る宝島社「このミステリがすごい!」の2008年版に、書き下ろし短篇でこの田口・白鳥シリーズが載っていまして、これもおススメです!!

満足度 ★★★★★



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