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LION ライオン 25年目のただいま

2017年04月13日 | 映画(ら行)
自分を取り戻すために



* * * * * * * * * *

1986年、インドのとある街のスラム街。
5歳の少年サルーは兄と仕事を探しに出かけ、
兄を待っているうちに停車中の電車の中で眠り込んでしまいました。
それは回送列車で、何日も降りることも叶わず、
家からはるか遠く離れたカルカッタ(コルカタ)まで来てしまうのです。
そこは大都会。
言葉も通じず、自分の住んでいた街の名前も口にしてはみるのですが、
誰にもわかってもらえません。
行き場もなく浮浪児としてしばらくの間一人で暮らしたりもしていましたが、
やがて孤児の収容施設に保護されます。
そして養子に出されオーストラリアで成長します。

幸い養父母は愛情深く、サルーは何不自由なく大学まで進みます。
それでも、なんとか本当の家族に会いたい、
家族もさぞ心配したまま自分の帰りを待っているだろう
との思いを消すことができません。
そんな時友人が「Google Earth」なら、世界中を探すことができるというのです。
サルーはそれから夢中になって、記憶の断片からインドの街を調べ始めます。



25年を経て、やっと自分の故郷を探し当てるサルー。
これが実話だというのが凄いです。
しかもその手段がGoogle Earth。
今だからこそあるストーリー。
すごいですね・・・。
最後に故郷で対面する母と息子のシーンが、
実物の二人のシーンに入れ替わります。
この奇跡の重みに圧倒されます。



5歳のサルーを演じたサニー・パワールくんの演技が素晴らしい。
すごく可愛らしいことも確かですが、
その目がリアルに感情を表現しています。
一人ぼっちの暗い目。
けれどもそこに、いつか必ず帰るという何か強い意志すらこもっているようにも思われる。



ニコール・キッドマンは、はじめ登場したときには思わず目を見張るおばちゃんパーマ。
でもこれはサルーの養母ご本人に似せていたのですね。
インドの孤児をわざわざ引き取って育てるというのも、実は凄いです。



さて、この日は「はじまりへの旅」と本作2本を見ました。
「はじまりへの旅」は結局アイデンティティの物語なのだろう、と思ったのですが、
こちらも同じですね。


自分が生まれ育った場所。
共に過ごした家族との時間。
そういうものが自分を形作る。
でもサルーにはそこが抜け落ちていたのです。
それを知らなくてはこの先進むことができないという思いに駆られたのでしょう。
それこそ仕事も恋人もなげうって、インド探索に打ち込んでしまう。
自分を取り戻すために、それはとても大切なことなのです。


そうそう、最後の最後にどうして本作の題名が「ライオン」なのかが明かされます。
これには「はあ~・・・」と思わず吐息が・・・。
なんとも素晴らしい作品でした。

「LION ライオン 25年目のただいま」
2016年/オーストラリア/119分
監督:ガース・デイビス
出演:デブ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、デビッド・ウェンハム、サニー・パワール
アイデンティティ探索度★★★★☆
満足度★★★★★
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