映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

草原の実験

2016年07月03日 | 映画(さ行)
ラストまで見てやっと分かる「実験」の意味



* * * * * * * * * *

ほとんど予備知識なしに見たこの作品。
まずはセリフも説明も一切なし、ということに驚きますが、
実際そんなものは必要ないのでした。
登場人物たちの表情やしぐさが何よりも雄弁に状況を物語っています。
本作は、旧ソ連・カザフスタンで起きた実際の出来事から着想しているそうなので、
とりあえず、それくらいは頭に入れておくと、状況は飲み込みやすいですね。


見渡す限り地平線しかない草原の真ん中の一軒家。
そこで平和な日々を送る父と娘。

しばらくはそんな二人の日常が描写されます。
父親は毎日何処かへ出かけていきます。
どうも軍の基地あたりで仕事を得ているようではあります。
娘が父親を途中まで見送った帰りには近所の青年が馬でやってきて、
家まで送り届けてくれます。
近所とはいっても、
用事があれば銃を発砲して来てもらうように合図しなければならないほどの距離。


ある日、近くを通りかかり、水を分けて貰いに来た青年が
彼女を一目見てトリコになってしまいます。
それも無理はない。
本当に美少女なんですよ、この娘が・・・! 
まだ固い青いリンゴのような清々しさをたたえた美少女。
でもある時、二人の青年がはち合わせをしてしまい、
彼女をめぐって喧嘩を始めた・・・。



いかつい顔のくせにちょっと無邪気な少年のようなところのあるお父さんとか、
この二人の青年とか、
ほんのりとしたユーモアを漂わせながら、ストーリーは展開していきます。
しかしある夜、このささやかな平和は軍の訪れによって破られる・・・。



なんと意外にも、兵士が持ってきたのはガイガーカウンターなのです。
あまりにも異質です。
そこで一つの大きな悲劇が起こるのですが、
ラストで、それは単なる伏線であることがわかります。


そもそも「実験」などという即物的な題名に、始めから違和感があったわけですが、
ラストまで見てはじめてその意味がわかるのです。
こんなのどかとしか言いようのない場所で、
ささやかに営まれているどこにでもありそうな人々の小さな幸せ。
それを簡単に踏みにじる巨大な「何か」。


セリフがないからこそ、饒舌な作品以上に食い入るように見てしまう。
そして、言葉を使わなくても伝わるそのメッセージ。
忘れられない作品となりそうです。

草原の実験 【プレミアム版】 [DVD]
エレーナ・アン,ダニーラ・ラッソマーヒン,カリーム・パカチャコーフ,ナリンマン・ベクブラートフ=アレシェフ
TCエンタテインメント


「草原の実験」
2014年/ロシア/97分
監督・脚本:アレクサンドル・コット
出演:エレーナ・アン、ダニーラ・ラッソマーヒン、カリーム・パカチャコーフ、ナリンマン・ベクブラートフ=アレシェフ
美少女度★★★★★
衝撃度★★★★★
満足度★★★★☆

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