映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

母と暮せば

2016年10月15日 | 映画(は行)
今、母のもとに戻ってきた意味



* * * * * * * * * *

かなり切ない物語のようなので、見るのをためらっていましたが、
ようやく見ました。


長崎で助産婦をしている福原伸子(吉永小百合)は、
3年前の原爆で学生の息子・浩二(二宮和也)を亡くしました。
夫は先に亡くなっていて、長男は戦死。
わびしい一人住まいです。
でも、浩二と結婚を約束していた町子(黒木華)が、伸子を心配し、
いつも様子を見に来てくれています。
彼女も浩二のことが忘れられないのです。


そんなある日、伸子の前に浩二が顔を出す。
・・・つまり、幽霊ということなのですが、怖さは全くありません。
浩二は生前と同じように母に快活に語りかけます。
けれど、結局は自分が死んでしまった身であることを思い出したり、
町子のことを思い出したりして涙がこぼれると、
す~っと、姿がかき消えてしまいます。
それでも次第に二人は、町子はもう浩二を忘れて、
いい人がいれば結婚したほうが良いと思うようになっていきますが・・・。



戦死した人の話はどれも辛いものですが、
浩二のように、その死を迎える寸前までごく普通に生活をして、
瞬時に何もわからないままに命を落としたというのもつらいですね。
死の間際にお母さんや恋人のことを思い出す間もなかった。
自分の死を認識することすらも・・・。
「これが自分の運命だった」と、浩二は言うのですが、
母はいいます

「いや、違う。地震や洪水の天災なら運命だけれど、
原爆は落とさないこともできた。」

本作はあの8月9日の3年後から始まるので、
母親がその時どんなに悲しく切なく辛かったのか、その直接的な描写はありません。
でもこういうセリフの端々に、
今でも息子が命を落とさなければならなかったことへの悔しさが
消えてはいないことが伺われます。
そしてまた、本作は、亡くなった人ばかりではなく、
生き延びてしまった人たちの痛みにも触れています。



町子が新たな人生に踏み出そうとするとき、
伸子は自分が勧めたことにもかかわらず、気落ちしてしまうのです。
いよいよ自分は一人になってしまった。
この先生きることの意味さえも見失い・・・。
そうしたときのラストはとても悲しいのですが、
私たちはここではじめて、浩二が姿を表した意味を知ることになるのですね。
そうではないラストもあり得たのかもしれない。
けれども、伸子の心を思うとき、これが最大のハッピーエンドなのだと、
自分に言い聞かせる私がいます。
若い方なら不満かもしれない。
でも私くらいの年なら、ありかな、と思う。

母と暮せば [DVD]
吉永小百合,二宮和也,黒木華,浅野忠信,加藤健一
松竹


「母と暮せば」
2015年/日本/130分
監督:山田洋次
出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一
切なさ度★★★★★
満足度★★★★★
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