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「鍵の掛かった男」有栖川有栖

2017年03月20日 | 本(ミステリ)
孤独な男の真実

鍵の掛かった男 (幻冬舎単行本)
有栖川有栖
幻冬舎


* * * * * * * * * *

2015年1月、大阪・中之島の小さなホテル"銀星ホテル"で
一人の男・梨田稔(69)が死んだ。
警察は自殺による縊死と断定。
しかし梨田の自殺を納得しない人間がいた。
同ホテルを定宿にする女流作家・影浦浪子だ。
梨田は5年ほど、銀星ホテルのスイートに住み続け、
ホテルの支配人や従業員、常連客から愛され、
しかも2億円以上預金残高があった。
影浦は、その死の謎の解明をミステリ作家の有栖川有栖と
その友人の犯罪社会学者・火村英生に依頼。
が、調査は難航。
梨田は身寄りがない上、来歴にかんする手がかりがほとんどなく
人物像は闇の中で、その人生は「鍵の掛かった」としか言いようがなかった。
生前の彼を知る者たちが認識していた梨田とは誰だったのか?
結局、自殺か他殺か。
他殺なら誰が犯人なのか?
思いもしない悲劇的結末が関係者全員を待ち受けていた。
"火村英生シリーズ"13年ぶりの書き下ろし!
人間の謎を、人生の真実で射抜いた、傑作長編ミステリ。

* * * * * * * * * *


本作、図書館の貸出予約を入れてからかなりを経て、
ようやく読むことができました。
でも、待った甲斐がありました!!
"火村英生シリーズ"13年ぶりの書き下ろし、ということで、力が入っています。
舞台は大阪、中之島の小さなホテル。
中之島という地区の歴史や光景がたっぷり紹介されていて、
これもなかなか興味深いのです。
いわゆる観光地ではないけれど、ちょっと歩いてみたくなりました。


さて、本作はこれまでのシリーズとは少し趣が違う。
大抵は殺人事件があって、火村とアリスがその犯人を突き止めていきます。
ところが本作は、ホテルの一室で男が縊死。
警察はそれを自殺と断定するのですが、
彼を知る人々が、そんなはずはないと申し立て、火村とアリスに調査を依頼するのです。
犯人探しよりもまず、自殺なのか、事故なのか、
それとも殺人なのか、それを探らなくてはならない。
普通のスタート地点よりもっと前段階からの出発です。


さてしかし、ちょうど大学の入試準備期間で火村が多忙なため、
まずアリスがデータ収集に当たります。
亡くなった男・梨田は5年間"銀星ホテル"のスイートに住み続けていました。
人当たりは悪くはないのだけれど、
顔なじみの客も従業員も、彼の個人的なことを殆ど知らないのです。
ボランティア活動に勤しみ、訪ねてくるものはない。
身よりもなさそうだ。
まるで彼に鍵がかかっているかのように、彼の過去や身の上のことが何もわからない。
しかし熱心なアリスの聞き込みによって、少しずつ、鍵が緩み始めます・・・。


けれども、彼の身の上がわかったところで、やはり自殺か殺人かはわからない。
後に火村の体が空いて調査に加わったところで、
新たにわかることなんてないでしょう・・・と思われたのですが。
いやはやそこがやはり凡人の考え。
さすが名探偵は、登場するやいなや、ある事実を指摘。
やはり殺人なのでは?という風に話が傾いていきます。


それにしても一体誰が、何のために。
そして、梨田について現れる真実は感動的です。
次々に現れる真実の姿に、心地よく翻弄されて、読了しました。
最後の最後に語られる犯人の動機というのがまた、
極めて現代的だったりするのが、やはり今の物語なのでした。
やっぱりこのシリーズのファンは止められない。

「鍵の掛かった男」有栖川有栖 幻冬舎
満足度★★★★★
図書館蔵書にて
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