映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

2017年12月12日 | 映画(は行)
真実を照らす“光”



* * * * * * * * * *

「光」、あの、三浦しをんなのに暗いやつ・・・と、
本を読んだ記憶が蘇り、若干見るのを躊躇しましたが・・・。


東京の離島である美浜島。
中学生の信行は、幼馴染の美花と付きあっています。
ある時信行は、島を訪れていた男に美花が犯されているのを目撃。
美花の訴えにより、信行は男を殺害してしまいます。
そんな場面を、信行を慕う年下の少年、輔(たすく)が目撃していた。
その翌日、島に地震による大津波が押し寄せ、村落は壊滅。
信行、美花、輔と数人の大人たちだけが生き残りました。
そのため信行の殺人は発覚にもならずそのまま・・・。
そしてそれから25年。
輔(瑛太)が信行(井浦新)の前に現れ、過去の事件のことをほのめかします。
信行は女優となっている美花(長谷川京子)を守ろうとしますが・・・。



原作の文中に、こんな言葉がありました。

「暴力はやってくるのではなく帰ってくるのだ。
自らを生み出した場所―――日常の中へ。」

これこそが本作のテーマと思われますが、
また、本作中にこんな台詞もありました。

「暴力を暴力で返したものは、人間ではいられない」


そして、海を青白く照らす白々とした月の光が印象的に映し出されます。
これは真実を照らす光。


自分が犯した暴力は、自身の胸の底で月の光に照らされていつまでもそこにある。
その光は決して「悔改めよ」などと呼びかけることはない。
にも関わらず、それがそこにあるだけで
人はおのれの犯したことに絡め取られ続ける・・・。
そしてその光は自分を狂わせ、
結局はまた新たな暴力を呼び戻すのでしょう。



重厚なテーマを、きっちりと瑛太さんと井浦新さんが演じきったと思います。
三浦しをん作品には、たいてい男二人の粋なつながりが描かれるものですが、
本作の二人の関係は相当歪んでいる。
輔は信行の犯した罪などは本当はどうでもよくて、
ただただ彼に近づきたく、関心を引きたかったというだけなのです。
だからそこに彼の父親(昔から輔を虐待していた)さえ現れなければ、
もう少しことは穏やかだったのかもしれない・・・。
しかしその父親は、誰に「殺害」されることもないというのは皮肉です。



そしてもう一つのエピソード。
信行の幼い娘が変質者にいたずらされるということが起きてしまいます。
信行の妻は、自分が浮気をしたとこの罰なのではないかと思ってしまう。
その罪悪感のイライラは、娘へと帰っていくのもつらいですね。
妻が終盤で信行の過去の罪を知った時、
何故かほんの少し笑っているように私には見えたのですが・・・。
それはもしかしたら、娘の事件は自分だけのせいではない。
夫の犯した罪の罰なのだ・・・と、そう思うことで
自分の罪が軽くなったような・・・
妻はそんな気がしたのではないかと思ったのは、
私の考え過ぎでしょうか・・・?



ところで結局本作で一番怖いのは、信行ではなくて美花ですよね・・・。
まあ、それはあのはじめのシーンでわかっていたことではありますが・・・。
彼女に月の光は届かないのか。
確かに直接的に暴力を奮ったわけではないけれど・・・。
女は、月の光を浴びても女であり続けるだけ・・・。


映画館を出て、闇の淵に沈んだ心が浮上するまでにしばらくかかりましたーーー!



<ディノスシネマズにて>
「光」
2017年/日本/137分
監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん
出演:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ、梅沢昌代
原作再現度★★★★☆
満足度★★★.5

コメント (2)
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