映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

2009年01月27日 | 映画(ら行)
一見幸福な家庭に巣くう”虚ろ”

         * * * * * * * *

レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットといえば、どうしても「タイタニック」を思い出します。
あれから11年。
タイタニックは若い二人の情熱が燃え上がる一瞬を描いたものでした。
その二人が11年を経て、円熟味を増し、このようなストーリーで共演。
これもまた、映画界の興味の尽きないところですねえ・・・。

この作品は、二人の情熱的な恋愛シーンは思い切り省いて、
すぐに結婚生活に突入。
郊外の閑静な住宅地。
白い壁の素敵な家に、二人の子ども。
誰もが夢みる幸せな家庭、お似合いの若夫婦。
でも、少しずつその家庭に、どうにもならない”虚ろ”が広がっていた・・・。
夫は死ぬほど退屈な仕事に倦み、
妻は家に閉じ込められていると感じている。
若い頃、自分たちはもっと違う何者かを目指していたのではなかったか。
何か、自分にしかできない何かを・・・。


この作品の時代背景というのは1950年代半ば。
アメリカは経済成長まっしぐら。
男は大きな資本主義システムの中でいくらでも替えの利く一つの部品。
そしてまた、女は男を社会へ送り出し、家庭を守り子どもを育てるもの。
そういう役割を知らずのうちに押し付けられ、それが幸福と思わせられている。
そのような概念が固められた時代といえるのかも知れません。
日本も少し遅れて同じ波がやってくる。
・・・今はだいぶ薄れてはいるものの、かなりその思い込みは残っていますね。
自分がこのシステムの中にはめ込まれた一つの部品であると気づいてしまった。
これは気づいてはいけないことなのかも知れません。
いや、みなわかっていても気づかないふりをしているだけなのか・・・。
それをしっかり見抜いて公言するのは、
この映画の中では精神を病んだ1人の男だけ。
彼の言葉はぐさぐさと二人の胸に刺さります。
結局、あきらめを優先し、ぬるま湯の幸福に甘んじようとしたのは夫の方。
この辺が、面白いですね。
大抵は自由を求めて旅立とうとするのが男で、
それを縛りつけようとするのが女。
・・・でも、解るような気もしますよ。
毎日家事と育児だけの女の生活。
この閉塞感は・・・。

この妻エイプリルは妥協を許さない。
パリへ行くことを断念しなければならなかったその喪失感は
次第に狂気へと変わっていくのです。
ラスト付近の朝食のシーンが怖かったですね。
この、すごく穏やかな”幸せな”朝食のシーンが・・・。


何やらいろいろと考えさせられてしまう作品です。
自分は今、何を幸せとしているのか・・・。
自分がかつて抱いていた夢って、何だったのか。
それは叶ったのか・・・。
でも、今が終着点ではないし、これからどこを目指そうとしているのか。

夢を持つことが大事だと、多くの映画は語ります。
でも、このような現実に縛り付けられているのも事実。
どこまでを自分にゆるし、どこまでをあきらめるのか。
・・・つまりその折り合いが、それぞれ一人ひとりの人生なのかもしれないなあ・・・なんて、しんみりと考えてしまうのでした・・・。

2008年/アメリカ/119分
監督:サム・メンデス
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、キャスリーン・ハーン


Revolutionary Road (レボリューショナリー・ロード)2008 HD Trailer