探墓巡礼顕彰会-墓碑調査・研究プロジェクト-

「探墓巡礼顕彰会」の公式ブログです。巡墓会企画の告知など活動報告をしています。

《平成23年・西行南游日記②》 讃岐塩屋・丸亀市 村岡箏子・宗四郎母子の墓

2012-08-15 09:59:10 | 会員の調査報告
会員のカトケンです。
一昨年に引き続き、土佐からの帰途、丸亀市を訪れました。さすが京極氏の城下だけあって、去年の大河ドラマ主役「江与」(江)の姉の嫁ぎ先とわかる系図の書いたハガキが駅の観光案内所に置いてありました。

前回偶然にも醤油屋の地下で爆弾を製造し、一朝事ある場合に備えていた村岡宗四郎母子の屋敷跡を見つけた関係から、今度は墓を訪ねてみたくなり、丸亀よりひと駅松山寄りの讃岐塩屋で下車しました。

JR讃岐塩屋駅から丸亀寄りに徒歩10分、めざす正宗寺がありました。通り沿いには法然上人ゆかりの井戸の碑とともに陸軍大将南次郎が書いた史跡案内の石碑がありますが(=写真)、これは寺の裏側で、入口は西向き、本堂は南向きになります。



本堂の南側に墓域があり、本堂側から入って真ん中西側奥に村岡宗四郎母子の墓がありました。(=写真)



入口には丸亀市文化財保護指定を受けた際に建てたであろう白い木製看板が文字も薄れて健気に建っています。

宗四郎の左側に母の墓、右側には遺族と思われる墓がありました。

宗四郎墓は正面に「村岡宗四郎墓」とあり右面に「慶応三年一月二十九日(1867.3.5)」と没年月日が刻まれています。弘化3年(1846)生まれ。享年22。

母箏子の墓碑には正面に「貞靖孺人」とだけ刻まれ、他の面には何も文字が刻まれていませんでした。母の没年月日は明治三年七月廿五日(1870.8.21)。

○正宗寺 浄土真宗本願寺派 慧日山
(香川県丸亀市前塩屋)

その後、丸亀へ足を運び前回時間が少なかったため諦めた法音寺の土肥大作の墓碑銘を筆写。これが炎天下の上、黒っぽい石に刻まれた文字が見にくく、閉口しました。

一考を案じて水をかけてみたところ、見事に文字が浮かび上がってきました。六百字近くあった墓碑銘は、変態文字が多く読むのに苦労しましたが、やはり列車の発車時刻という制約を受けながら、なんとか全文を書きとることができました。

新治県(今の茨城県の一部)参事在任中、謎の死を遂げた大作だけに撰者の無念さが伝わる文面です。羽倉簡堂門下、はじめ東京新宿光明寺に葬られたことなどがわかり、大作に少し近づけた気がしました。

ただし、一坂太郎『幕末歴史散歩 東京篇』(中公新書)では土肥の墓がかつてあったのは、四谷愛染院(塙保己一の墓がある寺)としています。

この日、関東では熱中症で倒れる方が続出したそうですが、土佐に続いて讃岐は炎天下であっても時々吹く風が心地良く、夕方にかけてだんだん日差しも弱まってきて2時間ほど外にいたにもかかわらず、事なきを得たのは幸いでした。

法音寺については一昨年の拙文をご参照願います。

実家の静岡へ向かうのに通る瀬戸大橋は、私が学生時代に行き来していたころと違い、瀬戸内海をじっくり眺められるようゆっくりと走るようになっていました。
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鶴見総持寺調査

2012-08-10 23:50:36 | 会員の調査報告
会員のカネコです。
7月8日(日)に鶴見総持寺の調査へ行って来ました。
このお寺へには何度も来ていますが、広大な墓地ですので、来るたびに発見があります。

鶴見総持寺と言えば石原裕次郎のお墓が有名ですが、他にも栗野慎一郎、内海忠勝、清浦奎吾、渡辺千秋と言った明治から大正にかけて活躍した政治家、官僚、外交官の墓があります。

今回も数家の調査をしましたが、その中から少しご紹介します。

まず思想家・ジャーナリストの黒岩涙香。
黒岩家については以前、会員のカトケンさんが投稿した「《平成23年・西行南游日記 1》高知県安芸市 黒岩治部之助直方墓」に詳しいですが、涙香はこの黒岩直方の甥であります。
この総持寺には涙香とその子孫の墓があります。
涙香の墓碑は正面に[黒岩院周六香忠天居士]と刻まれた角柱石です。



裏面には撰文が刻まれており、墓碑左横の墓誌には涙香以降の子孫の名が刻まれていました。

次ぎに三井物産創始者益田孝。



益田孝の本墓は音羽護国寺にあり、孝の長男太郎以降の子孫の墓となっています。
この総持寺にある墓には以前も来ていましたが、同墓域にある吉田家之墓というのが、孝とどういう繋がりがあるか分からずにいましたが、『鈍翁・益田孝』(白崎秀雄)という本を読んで、吉田家が側室たきの実家であり、たきの孫娘多嘉が吉田姓を継いでいたことが分かりました。
総持寺の孝の墓碑の裏面には建立者として益田瀧子の名が刻まれており、たきの系統の墓として護国寺とは別に建立された事が分かりました。

今回の調査はこの吉田家の確認作業でした。
孝とたきの子は初代小田原市長益田信世であり、その娘​多嘉は吉田姓を継いで、野球選手小川年安を婿に迎えました。年安は太平洋戦​争に出征して戦死しており、悲劇の選手として知られています。墓誌にはこの吉田年安の名も刻まれていました。
このたき-信世-多嘉の系譜は『昭和新修華族家系大成』には全く記載されていませんので、華​族家の調査は『華族家系大成』以外にも伝記等の確認が必要である​ことを再確認しました。
私事ですが、私の家内が益田孝の養女となり、三井物産参事犬塚勝之丞の妻となった益田フジと遠縁になっており、その関係で益田家一族に関して詳細に調べております。もし詳しい事をご存知の方がいましたらご教示を賜りたいと存じます。

この益田孝の墓の近くには国文学者落合直文の弟壱岐寅之進の墓があります。
落合直文は仙台藩伊達家御一家、鮎貝盛房の次男であり、三男は歴史学者鮎貝房之進、寅之進は四男にあたります。
この墓はこの日偶然見つけたものであり、総持寺にはまだまだ明治~昭和の名士達の墓があるのではないかと思います。
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荒川区・北区寺院調査

2012-08-10 01:31:55 | 会員の調査報告
会員のカネコです。
7月15日(日)に荒川区・北区内の寺院で調査をしてきました。

まず、町屋駅前の泊船軒にある武田斐三郎の墓へ行って来ました。
斐三郎は五稜郭を設計・建設した人物として知られています。



墓地に入るとすぐ右側に武田家の墓が2基あり、[武田成章家之墓]と刻まれているのが斐三郎の墓です。側面を見るとこの墓碑が昭和6年に建立されたことが分かりました。
武田家は甲斐武田氏の流れを汲むと言われていますが、墓碑に刻まれた家紋は武田菱では無く、武田菱に似た四つ目紋でした。

この後、田端へ移動し、正岡子規の墓があることで知られる大龍寺に行きました。
今回の目的は渋沢栄一の娘婿にあたる大川平三郎の墓を調査することでした。
正岡子規の墓の裏側の広い墓域は大川家の墓地です。
平三郎の母光子は渋沢栄一の妻千代の姉にあたり、平三郎は栄一の義理の甥にもあたります。
墓域には光子の墓もありました。
平三郎の墓は正面に[天龍院殿康徳櫻塘大居士墓]と刻んであり、側面・裏面の3面には撰文が刻まれていました。墓型も含め、この様式は谷中霊園の渋沢家の墓に似ていました。
平三郎夫人で栄一の4女照子の墓は正面に[天悠院慶室妙照大姉墓]と刻み、こちらも3面に撰文が刻まれていました。
ちなみに競馬評論家の大川慶次郎は平三郎の孫にあたります。
大龍寺の墓地には大川家に繋がる家の墓が数カ所に分散していました。

最後に大龍寺近くの大久寺へ行きました。
ここには小田原藩大久保家の初期の墓と、大久保忠隣の次男忠総が養子に入った伊勢亀山藩石川家の墓があります。
随分前に行ったことがあって、再度調査をしようと思ったのですが、石川家の墓地へ着いたとたん愕然としました。
東日本大震災の被害により、江戸時代の宝篋印塔の大半が倒壊していました。



震災から1年半近く経ちますが、都内にまだまだその傷跡が残っている事を目の当たりにして、改めてその恐ろしさを感じました。
長い時間がかかるかも知れませんが、これらの傷付いた貴重な文化遺産が修復されることを望みます。
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8月1日 天然理心流試衛館開設について

2012-08-01 17:14:38 | 日記
会員のカトケンです。

この度、天然理心流心武館道場の塾頭であった高鳥天真先生が晴れて独立され、8月1日に試衛館道場を開設されます。



高鳥先生が長く修業を積まれた心武館道場は明治時代に井上才市が開いたもので、この井上道場は、江戸時代は天然理心流第二代近藤三助の弟子である松崎正作とその息和多五郎の系統です。

三助が早く亡くなったことから、実質的な師は増田蔵六で、天然理心流初代近藤内蔵助の墓がある八王子戸吹を中心に稽古をしていました。近藤周斎・勇たちには伝わらなかった柔術の部分も受け継いでいる貴重な系統です。

高鳥先生は、そのような連綿と伝わる系統と試衛館道場の名跡を継がれ、天然理心流を後世に伝えつつ、古武術を通じた現代人の人格形成に今まで以上に心血を注がれることと思います。我々もその活動を後押しして行きたいと思います。

まずは8/1東京新宿区の四谷小学校で道場開き、京都でも毎月稽古を行う予定です。ぜひ一度門戸をたたいてみてはいかがでしょうか。

詳しくは天然理心流サイトをご参照ください。

天然理心流試衛館道場
コメント (2)
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