田中雄二の「映画の王様」

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『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

2017-05-17 11:52:12 | 新作映画を見てみた
緩急自在の語り口



兄ジョー(カイル・チャンドラー)の死をきっかけに、ボストンから故郷に戻ったリー(ケーシー・アフレック)。
兄の遺言で16歳のおいパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人となるが、
それはリーが過去の悲劇と向き合うことを意味していた。

マット・デイモンのプロデュース作。
そのためか、デイモン自身が脚本、主演し、心に傷を持った師弟の再生を描いた
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)にも通じるところがある。

本作は、冒頭でリーの情緒不安定な様子を映し、彼が何か問題を抱えていることを観客に知らせる。
そして、現在と過去(回想)を交錯させながら、次第にリーの心根やそこに至った原因を明らかにしていくという、
一種の謎解きドラマを展開させるのだが、時折ユーモアを挿入して重苦しさを緩和させる。
ラストもリーとパトリックの再出発の“予感”にとどめ、安易なハッピーエンドにはしない。

こうした緩急自在の語り口のうまさでケネス・ロナーガン監督はアカデミー賞の脚本賞を受賞した。
本国では「ある家族の姿を淡々と描いたロナーガンは小津安二郎に最も近いアメリカ人だ」とする評もあるほど。

また、同じく主演男優賞に輝いたアフレックに加えて、チャンドラー、ヘッジズ、
元妻役のミシェル・ウィリアムズの好演も心に残る。

悲劇(火事)のバックに流れる「アルビニーノのアダージョ」が印象的。
これは向田邦子原作のNHKドラマ「あ・うん」にも使われていたことを思い出した。
劇的効果の高い曲だ。

https://www.youtube.com/watch?v=yNyXLSyrGi4
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