去國三巴遠 登楼万里春 傷心江上客 不是故郷人
盧僎詩 南樓望高 楼
わかれゆくひとををしむとこよひよりとほきゆめちにわれやまとはん
妹
とほきわかれにたへかねて
このたかどのにのぼるかな
かなしむなかれわがあねよ
たびのころもをとゝのへよ
姉
わかれといへばむかしより
このひとのよのつねなるを
ながるゝみづをながむれば
ゆめはづかしきなみだかな
妹
したへるひとのもとにゆく
きみのうへこそたのしけれ
ふゆやまこえてきみゆかば
なにをひかりのわがみぞや
姉
あゝはなとりのいろにつけ
ねにつけわれをおもへかし
けふわかれてはいつかまた
あひみるまでのいのちかも
妹
きみがさやけきめのいろも
きみくれなゐのくちびるも
きみがみどりのくろかみも
またいつかみんこのわかれ
姉
なれがやさしきなぐさめも
なれがたのしきうたごゑも
なれがこゝろのことのねも
またいつきかんこのわかれ
妹
きみのゆくべきやまかはは
おつるなみだにみえわかず
そでのしぐれのふゆのひに
きみにおくらんはなもがな
姉
そでにおほへるうるはしき
ながかほばせをあげよかし
ながくれなゐのかほばせに
ながるゝなみだわれはぬぐはん
島崎藤村「若菜集」より
*画像上:あかひと(53歳)書 <半紙> 2009. 3.20 6:30 庵にて
*画像下:あかひと(24歳)書 <条福> 1980. 4.下旬 旧庵にて