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編集者の苦悩……誰がニュースを選ぶのか

2012-02-20 10:37:47 | 日記
 刻々と届く膨大なニュースを前に、産経新聞東京本社の近藤豊和編集長(47)は赤ペンを手に大机へ向かっていた。午後2時、東京・大手町の同社編集局。複数いる編集長のうち、この日の当番として1面のニュースを選んでいた。

政治部、社会部など8つの出稿部が特ダネを売り込みに来る。通信社からは「朝刊メモ」と呼ばれる記事の配信予定が十数ページ送信されてくる。テレビは最新のニュースを伝えている。

 「1面に収容できる記事は3、4本しかない。何がより多くの読者に必要とされる情報なのか。日々模索、試行錯誤している。インターネットがそれに拍車をかけているように思う」

 隣の長机ではニュースサイト「MSN産経ニュース」の編集が続いていた。サイト上では、紙面には載らないニュースもしばしばネット利用者から選ばれ、ランキングの上位となる。

 ニュースをネットで読む人が増え「新聞離れ」が進む中、朝日新聞は昨春から東京本社版の1面題字下に「本日の編集長」として当番編集長の氏名の掲載を始めた。同社は「『顔の見える紙面』をめざす取り組みの一環だ。紙面作りにはツイッターなどの情報も参考にしている」と説明する。

 東京都内にある大手IT企業の男性役員(44)は電車内で、携帯電話のアイフォーンを手に「自分にとってのニュース」を選んでいた。「RSSリーダー」という機能により、あらかじめ登録したニュースサイトやブログの新着記事が一覧表示される。読みたい記事へ印をつける。

 「オフィスのパソコンで一気に表示させて読む。有益な記事はボタン一つで社内で共有できる。その記事が新聞社のサイトのものなのか、ブロガーが書いたものなのかは関係ない。新聞は読みませんね。ニュースサイトさえ見なくなった」

 平成22年、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の際、民間団体が都内で行ったデモへ数千人が集まったことを当初報じたのは、CNNなど欧米の報道機関だけだった。ネット上でそのことを知った人々から「なぜマスコミは報じないのか」と疑問の声が上がった。

 インターネットの普及により、マスメディアだけが情報の選び手だった時代は終わりを告げている。

メディアの未来を見通したかのような動画が2004年、米国の2人の若手研究者により公開された。「EPIC2014」。

 動画は、検索サービスのグーグルと電子商取引のアマゾンが08年に合併して「グーグルゾン」が誕生し、消費者がブログやソーシャルメディアを通じて自ら情報発信する新たなメディアが生まれると予言した。その結果、14年にはニューヨーク・タイムズ紙がネットから撤退し、エリート層と高齢者向けの紙媒体になるさまが描かれていた。

 慶応義塾大学の砂原秀樹教授(51)=情報工学=は「架空の巨大企業にメディアが独占されるとの予言だったが、12年まで来てそのような状況はない。逆にフェイスブックなどのソーシャルメディアによって情報は多様化しており、大量の情報を人々が判断しきれない情報リテラシーの問題が生じている」と話す。

 朝刊の編集は午前2時に終わった。近藤編集長はひと息ついた表情で話した。

 「新聞は人々の『情報共有箱』として、まだ社会の安定に寄与できているとは思う。ただ、情報環境がこれほど変容する中、必要とされる情報、伝えねばならない情報とは何なのか。先輩たちも日々悩んで紙面を作っただろうが、現在のほうが苦悩は深いのではないか」

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