出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

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著作隣接権

2012年04月17日 | 出版の雑談
電子書籍が普及してきて、著者が一人で好きに「出版」できるという話が、細かいことを抜きにすれば出てきている。細かいことというのは編集抜きに好きで出したものが面白いかってことなんだが、とにかくいろんな立場の人たちのいろんな意見を目にする。

以前は単純に編集の必要性に関する議論だったのが、電子書籍が出てきて、それを売ろうとするときの問題と、それを他社に売られるときの問題がごっちゃになってきた。

いろんな意見を読んでいると、理論立てて主張しているようで、しかしその理論の前提が「今その人が置かれている立場」に立っているので、あまり参考にならない。著作物が完成するまでに出版社あるいは編集者としてどれだけインプットしたかというのは、会社やその出版物の性格によって違うので、そういう背景抜きの考えを知りたいなと思う。おそらく著作権が専門の法律家なんかの意見がそうじゃないかと思うのだが、そもそもニーズあっての法律だし、ニュートラルな意見がすべての人を満足させるわけでもない。難しい。

個人的には、著作権のありかをどうにかすればいいんじゃないかと思う。ある本の著者として世に名前が出る人だけを著作権者とするから、面倒くさくなる。

著作物を生んだことに対してオノレのインプットを権利として主張したいのであれば、著作の部分でも権利を確保しておけばいいと思う。編集者は黒子とかいう話も聞くが、黒子ならば黙っていればいいのにそうでないのは、著作物を生んだことに対して、著者(表に出る著者名)一人のおかげではないという不満を残したまま、出すからだと思う。

著者ではなくて出版社であるという立場がオノレの仕事の拠り所であったのが、未実現の損を想像して、著作という行為にも貢献したと言いたくなってしまっているのが問題なのではなかろうか。

出版社の儲けは、いっぱい刷って(コピーして)ブツとしての売上を上げることである。私はどちらかというと「金を出して商品を作った者が一番儲けて当たり前。著者は商品を作るための下請けである」という考えが強いほうだが、著作物を生むことで儲ける権利はないと自覚している。

以前から雛形として出回っている出版契約でも、例えば「すぐに同じようなものを他社から出さない」などコピー屋としての権利は守られていて、それは著者側も納得できること、納得すべきことだと思う。印税という金を払うのだから、ある程度の排他的権利を得るのは当然だ。実用新案などに絡む契約も、同じような考え方になっている。

電子書籍で問題になるのは、最初の版元で在庫が残っている、それも年数経って残っている不良在庫ではなく、普通に世に出すためにまずは刷ったものが残っているときではなかろうか。残っちゃってるのに他でも売るとなれば、ちょっと待ってとなる。なぜなら、排他的に売れる計算をして本体価格を決めているから。

が、作り上げたとたんにあちこちで売りたいと言われるのなら、印税率を変えて計算を成り立たせる。つまり、販売量が減ることを見込んで原価を下げるわけである。仮に現在の相場が10%として、他にも4社から同時に出すなら、その数で割って各社から2%ずつの印税でいいんじゃないですか?と、交渉すればいいと思う。しかし、オノレがよく売ったからもっと売れた…というのは、気持ちは分からんではないが、テメエの商売以上の権利を主張できるものではない。

うちも10%の印税率ではないときもあるが、著者の営業力を考えて交渉する(無名な著者だから安くする)のではなく、完成原稿を作るにあたって著者になる人が何割の仕事をしたかによる。著者自身が完成原稿を作り上げないのであれば、その分低くする。しかし、だからといって、生まれた著作物に関して「生まれたのは私のおかげ」と権利を主張したりはしない。これはポリシーじゃなくて、今までそういうケースだったということだが。

そうじゃなくて、「この著作物を生んだのはあんた一人の力ではなくて編集者である私の貢献もバカにできないだろう」というときもあるだろう。あるだろうが、それは出版社の人間の編集という仕事の範囲内と考えるか、いやいやそれ以上であると考えるかによって、権利関係の契約そのものを変えるべきだと思う。

著作物を生んだ権利を主張したいなら、オノレも著作権者になれば話は単純だ。不動産に共同オーナーとか共有オーナーというスタイルがあるように、「売るときはお互いの発言権割合に則って決める」なり「売れたときはお互いの持ち分に則って利益を得る」なりすればいい。

隣接権などと言うから面倒くさいのである。黒子などと気取ってないで、堂々と著作権を保持すればいいではないか。

憲法や民法違反の契約は無効らしいが、著作権そのものを確保した上での契約なら、そういうことにはならないだろうと思われる。どうでしょう?
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