出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

取次へ見本納品

2005年02月25日 | 最初の本の苦労
1冊目の本は、取引申込と同様、勢いで…というか作業って感じで、スムーズにできあがった。DTPを友人に外注したことも大きい。DTP&印刷込みで頼んだから、印刷屋との折衝も彼がやる。

私は書くのは苦しんだけど、出版という点ではあまり苦労せず、OLのお姉ちゃんがアスクルにOA用紙を注文するのとほとんど同レベルの、ただの作業であった。

ポスターなどの印刷物は、色校が終わったら後は納品だが、本は最初に10冊程度の見本が上がってくる。知人の事務所に行って「へえ、いいじゃない」と軽口を叩いて10冊もらってきた。

トーハンから「本ができたら、持ってきてください」と言われていたので、さっそく持って行く。ちなみに、午前中に行くことと5冊持っていくことは前もって聞いてある。

実はこれは見本納品といって、すごく大事なステップだった。その本をどのくらい売りたいか、どうやって売ってくか、取次に版元としての決意の程を示す場だったのだ。

どのくらい売りたいかというのは、もちろんたくさん売れるに越したことはないのだが、やはり計画というものはある。自分の他の商売なら当たり前のことなのに、出版となると「へへっ、ベストセラーになったらいいなあ」とか思ってしまった。

どうやって売ってくかというのは、読者や書店向けにどんな宣伝を打つか(打ったか)というようなことで、まだ1冊目の私は、当然そんなビジョンはなかった(トホホ)

例の取引申込で世話になった「仕入部」の、今度はテーブルじゃなくてカウンターに行く。午前中は午後とはぜんぜん違って、忙しい&真剣な雰囲気だ。

担当者の番号札を取って、カウンターから少し離れた椅子に座って、順番を待つ。キョロキョロ見渡すと、文庫は別のカウンターらしい。

私の番が来て、5冊出す。5冊のうちの1冊は国会図書館への納品分で、うちの場合、トーハンと日販に交互に持っていけとのこと。つまりもう一方は4冊でよくて、その次の本は逆にする。

とはいっても、最近はどっちに何冊持っていこうが国会図書館から「納品のお願い」が来るので、無視して両方4冊でも構わないものだという気もする。

仕入部の人は、表紙→目次→後付と見た後、中もパラパラとめくって見ている。「この資格、人気あるんですか?」と聞かれる。例の知人にいわれて作っただけなので、知るかそんなもんと思ったが、毎年受験生が増えていると適当なことを言ってごまかす。

ごまかすとその場はごまかせるが、売れなくて困るのは結局私のほうだと肝に銘じるのは、もっと後のことだ。

それでも、取引申込のときの大風呂敷が記憶にあるのか、結構な数の納品数を提示された。次の日の午前中に同じく仕入部に電話して、数の確認をしろと言われた。

その足で日販に向かい、同じ要領で見本納品を終える。やり慣れないことをしたのでドッと疲れが出て、その日の午後はだらだら過ごしてしまった。

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