童話の星屑たち

みついただしの描く小さなお話たちです。

絵本「ぼくがすて犬になった日」(石風社刊)
全国書店にて好評発売中

雲の楽隊〜13

2012-05-27 | 雲の楽隊
 モウはユウタが吹き始めたメロディーを聴いて、「後は7番のアッコル(調和させて)で・・・」とみんなに言いました。

 ♪〜〜ピーピィ〜〜ルルルル〜〜♪〜〜ピリリリ〜〜ピルルルウ〜〜♪〜〜

 ユウタは目を閉じて〜(青空にポッカリと浮かんだ白い雲)〜を思い浮かべ、早く元の白い雲に還れるよう願いながら吹いていました。
ユウタの吹くメロディーと、楽隊の演奏するメロディーは違っているのですが、不思議とうまくシンクロし合いお互いの気持ちをどんどん乗せていきました。
 「ユウタのメロディー・・・、いいね」
ハイドがドドンと大太鼓をリズム良く敲きながら、隣のモウに話かけました。
「そうだな・・・」モウは頷き、どんどん明るくなっていく空を見つめ何か考え込んでいました。
(こんなに荒れてしまったのに・・・、いやに雲たちが素直だ)

 灰色の雲の中から、一本の光の筋が伸びると、その周りからいくつもの光の筋が地上に射し込んできました。
「ユウタ、空を見てみろ」
一心不乱に吹き続けるユウタにモウが声をかけました。ユウタは目をギュッと閉じていたので、目を開けると明るい日差しがまぶしくてしかたありません。
「・・・還っていく」
目が慣れてくると、クラゲの雲が次々と白いうす雲の中に溶け込んでいくのが見え、ユウタは胸が熱くなりました。
 「仕上げだぞ。ユウタの旋律を穏やかにゆっくりと、繰り返し吹き続けるんだ」
モウがユウタに言うと、他のメンバーも演奏しながらユウタに「ヨクヤッタ」と目で合図をしました。
 しばらくすると、黒いちぎれ雲やくらげ雲もすっかり消えてなくなりました。ユウタの願った、白い積雲の浮かぶ穏やかな空に戻ったのです。
 モウが閉めの小太鼓を、タタタンと鳴らし「演奏終了!」と告げました。
「いい演奏だった」シュウがユウタの肩をたたきました。ベンとハイドはユウタとの相性は最高だったと、小突き合いながら喜んでいました。そのなかで、モウは何故か浮かない顔をしています。

 空から大きな雪のような氷の結晶が風に乗り、ユウタたちの前に落ちました。
「氷花だ!雲たち俺たちにありがとうって、言ってるぜ」ベンがひとつ拾い上げ、「たまに雲たちがお礼の印にくれるんだよ」と、ユウタの手に乗せました。
氷花はユウタの手の中で見る見る溶けてしまい、黄色の模様のついた青い小さな石が残りました。
モウはその石を見ると、ユウタの手から取り投げ捨ててしまいました。
「すまないユウタ。何だが、・・・うまく出来すぎている・・・」
 モウは氷花の降ってきた空をしばらく見つめていました。


 「モウは邪魔ね。でも、あの子すてきじゃない、何とか欲しいわね・・・マーレ」
モウの見つめる空の先では、雲使いのトゥーランが、モウの投げ捨てたのと同じ石を手にして楽隊を見つめていました。
トゥーランの隣で、マーレはフルートを抱いて白く微笑み、トゥーランとは違う空を見つめていました。

  つづく


 音楽用語で、「調和させて」というのはアコルデとかアコルダン(ともに仏語)と言います。今回のお話で、アッコル(調和させて)と先の用語をもじって使いました。調べるといろんな用語があって驚きました。本格的に音楽を勉強している方はすごいですね〜。

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雲の楽隊〜12

2012-05-19 | 雲の楽隊
 雲のバスは風に乗り、雲の峰を縫うように軽快に走っていましたが、ふいに黒い雲の群れが現れると乱気流に巻き込まれてしまいました。
「そろそろのようだ・・・」
モウが窓の下を指差しました。ユウタが覗き込むと、バスの下の空は灰色の雲海が波打っていて、ときおり雲の間から小さな稲光が見えました。シュウがバスを安定させると、雲海の中にゆっくり降りて行きました。

 雲の下に降りるとあたりは薄暗く、黒いちぎれた雲が無数に漂っていました。見上げると、クラゲのような黒い雲が、いくつもあっちにいったりこっちにいったりとさまよっています。
「さあ、みんな行くぞ」バスが止まり、モウが声をかけると、みんな楽器を持ってバスの上に上がりました。
外は生暖かく、上空をクラゲの雲が通り過ぎるたびに細かな雨が降りました。

 「痛ましい空だ・・・」モウが悲しげにつぶやきました。
「見てみろ、下もひどいことになってしまった」
シュウが地上を指差しました。広大な畑が洪水でメチャクチャになっていました。
「トウモロコシ畑か・・・。雲使いめ、今度は穀物商社と手を組んだのか」
ベンが言うと、ユウタが「どういうこと?」と聞きました。
「畑を洪水でつぶして、トウモロコシの値段を吊り上げひと儲けしょうという魂胆さ」
ユウタは泥に押しつぶされている畑やトラクター見て怖くなりました。
「詮索は後だ。この空を元に戻そう」
モウが小太鼓をタンと叩くと、みんなも整列して楽器を構えました。
「雲たちは無理やり焚き付けられて、まだ興奮している・・・、いや怯えているようだ」
モウは空を見上げ、一呼吸置いて言いました。
「まずは、落ち着かせねばいけない。空撫曲9番から始めていこう」    

 ♪〜〜プヮ〜〜プヮ〜〜プロロォ〜〜〜♪〜〜♪〜〜
ベンのトロンボーンが低く同じメロディーを何度も繰り返しました。そして、ゆるやかに楽隊の演奏が始まりました。
今回はメロディーがあります。
「教室と同じだ・・・」ユウタはついていけず、どうしていいのかオロオロしてしまいました。
「ユウタ、無理して合わせなくていいぞ」
モウが低く落ち着いた声で言いました。モウを見上げると、ユウタに振り向くこともなく厳しい表情で演奏していました。
「大丈夫、ユウタは怖がっているだけだ。心を鎮め、この可哀想な空を全身で感じていなさい。必ずユウタの旋律が生まれる」
 モウの口元が少し微笑んだような気がしました。

 ユウタはリコーダーを唇から離すと、深呼吸して空を雲を見上げました。
雲の隙間に微かに青空がのぞくのですが、厚い雲がすぐふさいでしまい、雲が晴れるのを拒んでいるみたいです。クラゲの雲が雨を降らすのですが、地上につく前に蒸発してしまいました。クラゲ雲は疲れ果てているようでした。
ふとユウタの心に、穏やかな青空に白い雲の風景が浮かび、何故か・・・悲しみがこみ上げてきました。

 「・・・もう還りたい」「雨はもうこれだけなの・・・」「いったい何しているの?私たち・・・」

 あれ?・・・ユウタの目に涙があふれてきました。
「・・・いったい何?君たちなの・・・」
ユウタの中に雲たちを何とかしてあげたい、苦しみから救ってあげたい。という気持ちがみるみる膨らんできました。

 ユウタはリコーダーを唇に押し当てると、静かに吹き出しました。

  つづく


 クラゲの雲は、尾流雲をクラゲに例えてみました。尾流雲は雲の底から雨や雪が降っていて、地上には届きません。届くと降水雲になります。雲の底から伸びる雨の筋が尾のように見えるのでこのような名前になりました。
小さな雲だったらクラゲみたいですよね。

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雲の楽隊〜11

2012-05-12 | 雲の楽隊
 ユウタは家の中をちゃんと案内されていないので、何処をどう行けばということがわかりません。
      ♪・・・ヒュルル〜〜・・・ヒィルルル・・・♪〜〜・・・
迷いながらも小さな階段のホールに来ると、上からフルートの音がします。階段は狭い螺旋階段で、ドアが開いているのでしょうか上の階から風が流れてきます。
 「・・・・マーレがいるのかな・・・?」
ユウタはちょっと躊躇しましたが、勇気を出して階段をグルグル上っていくと灯台の灯室に出ました。頭上では灯器が回り、夜空に光を投げかけています。

 「子供は早く寝なきゃダメじゃない」
ノルがとまどった顔をして、灯台の外の回廊から灯室に入ってきました。手にはフルートを握られています。
「フルート吹いていたの、ノルだったの・・・?」
ユウタが聞くと、ノルがそっけなく「そうよ」と言って風の吹き込むドアを閉じました。
「昼間、マーレが吹いていたのと同じだった」
「フルートはマーレに教えてもらったの。似ているのは当然よ」
ノルは手のフルートに目を落とすと、胸に抱くように持ち替えました。
「昨日も聞こえたけど・・・」
ユウタの話している途中で、ノルは「ここは狭いわ」と外の回廊に出ました。ユウタも後に続きました。

 「・・・すごい」
雲ひとつない、満天の星空が上にも下にも広がっていました。見上げると灯台の光の帯が星空の中に溶け込むように回っています。
 ノルは手すりに腕を乗せ、もたれかかるように星空を眺めています。
「気の向いたとき、マーレが居たときのようにここで吹くの」
ノルは星空の一点を見つめて言いました。そんなノルの様子を見て、ユウタはマーレを想っていて泣いてしまったんだと思いました。
「マーレが好きだったんだね。どうして雲使いのところに行っちゃったの?」
ユウタが聞くと、ノルはちらっとユウタを見て、また遠くの星空を見つめました。
「・・・やっぱり子供ね。聞けばなんでも話すと思っている」
ユウタは、恥ずかしくなって顔が赤くなっていくことがわかりました。
そして、小さく「・・・ゴメン」と謝りました。
 「早く部屋に帰って寝たほうがいいよ。明日は雲使いが荒らした空に行くようだから」
ノルがドアを開け、ユウタに帰るよう促しました。ユウタは灯室に戻り、階段を下りていきました。背後からの風の中に、ノルの吹くフルートが聞こえました。


 次の朝、ユウタが食堂に行くと楽隊のみんなは天気図を囲んで何か話し合っていました。
「おはよう、ユウタ。今日は少し危ない空に出かける」
モウが紅茶を飲みながら言いました。ユウタは昨日ノルが言っていた、雲使いの荒らした空の事だと思いました。
「さぁ、みんな。しっかり食べて出かけよう」モウが言うとみんな席につきました。
 ノルが「おはよう」と微笑んでユウタの前のカップに紅茶を入れてくれました。
てきぱきと働いているノルはまるで、昨日のことなど忘れてしまったかのように思えました。

  つづく


 以前描いた、楽隊の家のイラストには灯台の回廊は描いてありません。正直あの家のデザインは気に入っていないので、もう一度再考しようと考えています

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いまだ・・・聖地のようです

2012-05-05 | つれづれ
  (駅前にある案内板)

 京王線聖蹟桜ヶ丘駅周辺は、ジブリ映画「耳をすませば」の舞台として知られています。それにしてもずいぶん前の映画にもかかわらず、いまだ訪ねる人が絶えません。
 そんなわけで、ネタもないし・・・近所だし、周辺を撮影したので紹介しますね。


聖蹟桜ヶ丘駅前です。映画でもこんなアングルの絵だったかと思います。


「いろは坂」入り口。映画では、猫を追いかけて登っていきましたね。


「いろは坂」の階段。車道の間をワープするかのように階段がかかっています。来られる人は二十歳前後のカップルがほとんどです。


こんな感じで、急なペアピンが3・4回続いています。短いですが車で走ると楽しいです。たまに自転車で猛スピードで駆け下りる人がいますが、危険ですから止めましょう。


地球屋の帰り、雫がこの階段を駆け下りて行きましたね。この日は初夏の木漏れ日が綺麗でした。


坂の終点のロータリーです、当然ですが地球屋はありません。ロータリー沿いにある洋菓子店で、みなさん何かお土産を買っていくようです。


ロータリー周辺からの眺望、多摩ニュータウンが一望ですね。そういえば、平成たぬき合戦「ぽんぽこ」も多摩ニュータウンの造成が舞台です。
宮崎さん・高畑さん・近藤さんが若い頃、ここの近所にある日本アニメーションで「未来少年コナンや母をたずねて三千里、赤毛のアン」など傑作を作り続けていたんですよね。そのせいか、この辺りに想い入れあったんでしょうね〜。


 最近、聖蹟桜ヶ丘の駅の電車到着メロディーが主題歌の「カントリーロード」になったりして、話題になりました。だとしても、GWのせいもあるのでしょうが、主な舞台となった「いろは坂」をいまだ多くの人がカメラ片手に来ていたのは驚きました。それだけ、観た人それぞれの想いの残る映画だったんでしょうね。
 アニメや映画のロケ地を回るのを、聖地巡礼といって流行っているようですが、私も大林映画が好きで、若い頃尾道や柳川に行きました。追体験したい気持ちはよくわかります。

 駅から歩いて、1時間ぐらいあれば余裕で回れるので、過去「耳をすませば」を観てキュンとされた方、ぶらぶらしてみては?
(注意!映画同様、周辺は何にもない静かな住宅街です。訪れる際は騒がずマナーを守り散策して下さいね)


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雲の楽隊〜10

2012-04-26 | 雲の楽隊
 「・・・マーレ、あの娘は私らの妹だ・・・」
「モウ!」シュウが止めようとしましたが、モウは「ユウタも家族なんだ、知っていてもいい」と話を続けました。
 「私らは雲を操ることなど決してしてはならないが。マーレの吹くフルートは美しく、雲が素直に聴きすぎて、いつのまにやら虜にしてしまう」
ユウタは先ほどのフルートの音色とドラゴンの雲を思い浮かべました。
「私はマーレを楽隊に加えるのは、まだ時間が必要だと考えていたのだが・・・いろいろあってな、そこを雲使いにつけこまれてしまった」
「マーレは心の風が奪われてしまった。今のあいつはからっぽの凪の空だ!さっきの雲と同じように雲使いに支配されてしまったわけさ」
ベンが悔しそうに空を見上げました。みんな黙って雲使いの去った方向を見つめています。
 「余計な邪魔が入ってしまったな。ユウタには、いずれまた話す機会もあるだろう」
モウはユウタを見つめ言いました。モウの目は怒りと悲しみで震えているようでした。

 午後の応援は先ほどのことが原因でしょうか、みんななかなか集中できません。雲に見向きもされず、空回りした演奏が続きました。ユウタもマーレや、雲使いのことが気になってリコーダーを吹くことに身が入りませんでした。
「ええぃ!もう今日は止めにしょう」
モウの一言でみんなホッとしたようでした。みんなも心乱されていたので、今日はもう無理だとわかっているようでした。

 「あら、今日は早いのね?」
雲の楽隊が家に帰ると、ノルが不思議そうな顔をして迎えました。
「マーレに会ったよ」モウが言うと、ノルは目を輝かせて「元気だった?」「フルート聞かせてくれた?」などと矢継ぎ早の質問を浴びせました。
「ああ・・・フルートは性質が悪くなってしまった。雲使いに操られてな・・・」
ノルは急に怒り出し「どうして、連れ戻してこないの!」と、モウや他のメンバーに詰め寄りました。
「お前だって、マーレが望んで雲使いのところへ行ったのはわかっているだろう?トゥーランはとても手強い、マーレが気づかないことには手の出しようがない」
モウはノルの肩を抱いて言うと、ノルはシクシク泣き出してしまいました。気まずい空気が流れ、みんなはノルの肩をポンと叩いたり、慰めの声をかけてから家に入りました。
 今のユウタには何もできず・・・、泣いているノルの横を目を伏せて静かに通り過ぎました。

 夕食を早く済まし、明日の予定を決めてしまうと、みんな部屋に戻り休みました。
「今日はいろいろなことがあったな・・・・」
ユウタは眠ろうとベッドに潜り込んで目を閉じるのですが、いまだ興奮していてなかなか寝付くことができませんでした。
  「あっ、あの音は・・・」笛の音がします。昨夜と同じように微かに聞こえてきました。
「あれはマーレのフルートと同じじゃないか!」
ユウタはフルートの音を確かめようと、部屋を出ました。

  つづく


 誰かに服従させられたり支配されるなんて、考えるだけで身の毛がよだつ恐ろしさを感じます。そういえば・・・芸能人がマインドコントロールされたとマスコミが大騒ぎしてましたが、最近ぱったりと聞きませんね。

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