バカブンド

探し物はなんですか?

「ディナーダ」風がふくままに ドラマみたいな昭和の裏舞台 これが懐かしく思える

2017年08月30日 06時14分03秒 | ロード人
旅はこうして始まった・・・

その時、下の方で声がした。
「そっちに行った」
「反対に回れ」
物干し場から下を見ると、警察の人達が何人もいて騒いでいる。俺は先生に、
「何かあったのかな」
「ドロボーでも入ったじゃないか」
「怖いね」
「大丈夫、ここには来ないから」
「何で」
「この家じゃ盗む物もないし、ここの住民を見て逆に怖がるよ」
「家が貧乏だから、ドロボーも入らないのか」
他の人達から見れば、ここの住民は怖いおじさん達かもしれない。
「複雑だ」
そこへお父さんが来た。
「ここから、変な人間が見えなかったですか」
皆、誰も見えなかったと答えた。
お父さんは慌てて降りて行った。
入れ違いに人がきた。この人は、家に来て間もない人で名前もよく知らない。
「暑いですね、ドロボーが近所に入った見たいですよ」
先生は、
「そうなの」
「世の中が貧しいから、そんな人間が出来る」
又、下の方で警察の人達の声が聞こえてきた。
「この辺のどこかに隠れている、捜せ」
すると、俺の隣に座っていた最近に来た人が、
「ヤベー」
とつぶやき、さっと屋根に方に走り、隣の家の屋根からあっと言う間に下に降りて行った。
警官の人の声が、
「ここにいたぞ」
笛がピーピーと鳴った。
「家の住民の人がドロボーだった」
今までいて話していた人がドロボーなんて、怖いようだけど何となく興奮した。
先生は落ち着いて、
「俺達にはなんにもしないよ、同じような境遇の人間だから」
どうも捕まったらしい。お父さんが又来た。
「何にもなかったですか」
「大丈夫」
と先生が言った。
「彼がここに上って来た時、足の裏が真っ黒だったので、こいつがドロボーだとピーンきたよ」
すると、お父さんは、
「お前、いつまでも起きていないで寝なさい」
「はい」
直ぐに子供をじゃまにする。
「明日になると、今夜のドロボーの話が学校でいっぱいだろうな」
友達から聞かれても、
「ドロボーは、家の住民とは言えない」
でも、ドロボーと捕まる前まで隣に座り、話していたと自慢したかった。
そうした長い夏の夜も、佐久間荘にはあった。

あの時の貧乏は、ドラマみたいな昭和の裏舞台。
本当に貧しかったのに、今では懐かしく思えるのが不思議だ。

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