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中国経済の正体

書名:中国経済の正体
著者:門倉貴史(BRICS経済研究所代表)
出版社:講談社現代新書(2010年3月出版)

最近、新聞・雑誌を読んでいても「中国」という字を見ない日がないくらい注目されている中国経済。2010年にはGDP(米ドル換算)で日本は抜かれ、米国に次ぐ2位になることがほぼ確定していると聞く。上海万博もなんとか無事開催されて益々その勢いを増している様子だ。また、昨今のグーグル問題で再認識したが、「検閲」なんかをやっているところをみるとやっぱり中国は社会主義国家だった。社会主義国が経済大国???
一体、中国の経済はどうなっているのか、今中国で何が起こっているのか、今後の日本やアメリカに対する影響等を知りたくて本書を購入。本書のボリュームは200ページ程であるため、あまり詳細には触れられていないが、概要を知る入門書としては面白かった。
何回か「へえ〜」と言っている自分がいました。


【中国経済について】
2008年9月のリーマン・ショック以降、世界景気は金融危機の震源地となった米国を中心に、あたかも高い崖から転落するかのように急激に悪化した。それまで高成長を続けていた中国も、欧米向けの輸出の落ち込み等によって打撃を受けたが、他の先進諸国と比べるとそれほど大きなものでなく、また立ち直りも早かった。その理由は主には2つ。1つ目は国内の金融不安が広がらなかったこと。これは中国の金融機関がサブプライムローン関連の金融商品にあまり手を出さなかったことが要因。2つ目は中国がこれまでの輸出主導の経済成長から内需主導の経済成長への変貌したためである。リーマン・ショック以降、迅速な政策対応により内需を刺激し早期に景気回復を実現した。
政策対応は先進国より中国は早い。中国は社会主義国であるため、政府が公共投資を実行する際、用地取得等を迅速に行えるから設備投資等が即効果として現れる。現在、中国は新車の販売台数は世界第一位。液晶TV市場も09年は前年比約2倍。09年携帯電話の契約数も対前年+1億加入となっている。ただ、課題も多い。この内需を支える個人消費の多くは沿岸部のニューリッチ層によるものが大きい。沿岸部と内陸部の所得格差は今後大きな国内の課題となるであろう。また忘れてはならないのが中国は一党独裁体制の社会主義国家であるという点。企業の利益は党幹部や役人の口利きで大きく変わるのが実態らしい。このような土壌で適正な市場経済が機能するかどうか。

【中国と米国関係】
09年7月ワシントンで開催された「米中戦略・経済対話」でオバマ大統領は「米国は世界中のどの国よりも中国との関係を重視しますよ」と宣言したらしい。なぜ、米国はそこまで中国との関係を重視するのか。そこには米国と中国の経済関係が極限まで強まり、中国と協調しなければ共倒れになってしまう現実があるからだ。簡単にいうと中国は対米貿易黒字世界でダントツ一位であり、その関係から米国の国債を世界で一番もっている国である。これは中国の米国債の扱い一つで米国の金融市場が大混乱に陥る可能性があるということを意味する。但し、一方で中国も世界で最も信頼のある米ドルで多くの資産を保有している。ドルの価値低下は中国資産の目減りを招く。要するに現在の米中関係は離れようにも離れられない関係になっているのが実態のようだ。

一方軍事面では米中は緊張関係にある。発端は台湾への武器の売却をオバマ政権が決めたこと。これに対して中国は強烈に憤慨した。ただ、そもそも武器売却を米国が決めたのは中国の軍拡に対する脅威が強まっており、「中台の軍事バランス」を重視したという背景がある。他にダライラマとの会談問題、対イラクへの制裁問題等多くの問題で対立している。もともとイデオロギー自体がまったく違う大国同士であり、また中国人の根底には「中華思想」(自分たちが世界の中心)という考え方が根付いている。そう簡単には仲良しにはなれないだろう。

【日本と中国と米国関係】
この3国の関係は少しずつ変化を見せている。小泉政権時代は日米が密接で日中・米中はギクシャクしていた。安倍・福田政権時代は日本と中国の関係が徐々に修正され、日米中の関係は日本と米国の距離は近く、中国とは少し距離を置いた二等辺三角形状態だった。現在の鳩山政権はこの3国の関係を均等状態=正三角形状態論を唱えるようになった。これは少し米国と距離を置いて、中国に接近していくことが望ましいというものだ。
但し、日米中が三角形の状態を築くのは極めて難しいといわざるを得ない。先ず、「対日感情」等、国民感情の問題が大きい。修復までにはかなりの時間と努力を要する。次に安全保障上の問題になるが、中国が軍事大国化していく中にあって、日本が中国と米国に等しい距離を置くとすれば、それは日米同盟の絆を壊すことになり、アジアの軍事バランスはこれまで以上に中国有利と働くだろう。従って、日本の立場からみた三ヶ国の関係はこれまでのように「二等辺三角形」の形を維持するに留めるべきではないかと著者は主張している。
我々は経済面で中国が「機会」になっている現状に満足するばかりでなく、軍事面での中国の「脅威」が強まっていることをもっと強く意識すべきである。

以上

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