一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『るろうに剣心』 ……キャスティングとアクションシーンが素晴らしい……

2012年08月23日 | 映画
映画館に映画を見に行くと、
上映前に必ず“近日公開作品の予告編”を見せられる。
それを嫌う人もいるけれど、
私はそれを案外楽しみにしている。
まったく興味のない作品でも、
予告編を見て、
〈おっ、見てみようかな……〉
と思うことが少なくないからだ。

映画『るろうに剣心』も、最初は興味が湧かなかった。
漫画の映画化ということや、
佐藤健や武井咲が出演しているというだけで、
鑑賞候補から外していた。
だが、予告編を見てみると、
共演者がなかなかイイ。
吉川晃司、蒼井優、香川照之、奥田瑛二、江口洋介……
実に魅力的なキャスティングなのだ。
それに映像の方も、スピーディで、
理屈抜きに楽しめる作品に思えた。
〈公開されたら見に行こう〉
予告編を見て、そう決めた。

映画『るろうに剣心』の公開日は8月25日(土)。
〈今日(8月23日)はまだ見ることができないな〉
と思いながら、
行きつけの映画館のHPで上映スケジュールを見ていたら、
本日上映作品の中に、『るろうに剣心』があった。
調べてみると、
急遽、8月22日(水)からの先行上映が決まったとのこと。
で、私も急遽、『るろうに剣心』を見に行くことにしたのだった。


明治になって10年――
東京では、“人斬り抜刀斎”を名乗り、手当たり次第に人を斬る男が現れる。
無謀にも一人でその男に立ち向かう神谷薫(武井咲)を助けた見知らぬ男。
彼こそが、幕末に名を馳せた反幕府軍の暗殺者“人斬り抜刀斎”(佐藤健)その人だった。


いまは緋村剣心と名を変え、斬れない刀(逆刃刀)を手に、人を助けるための流浪の旅を続けていたが、薫が亡き父から引き継いだ道場に居候することになる。


偽者の人斬り抜刀斎の正体は、
実業家の武田観柳(香川照之)に用心棒として雇われた鵜堂刃衛(吉川晃司)だった。


観柳は、女医の高荷恵(蒼井優)に作らせた阿片で得た莫大な金で武器を買い、世界を支配しようと企てていた。
元・新選組で、今は警官を務める斎藤一(江口洋介)が、
観柳の陰謀を嗅ぎつけるが、金で買った絶大な権力には手が出せない。


邪悪な計画の手始めに、神谷道場一帯を手に入れようとした観柳は、
罪もない人々の命を奪おうとする。
苦しむ人々を見た剣心は、戦いを決意。
だが、観柳の護衛は250人。
剣心の味方に名乗り出たのは、喧嘩屋の相楽左之助(青木崇高)だけ。
果たして、剣心は、斬れない刀で、大切な人たちを守り抜くことができるのか――
(ストーリーはパンフレットより引用し構成)


上映時間が2時間14分ということで、
〈退屈な作品だったらどうしよう……〉
と、ちょっと心配していたのだが、杞憂であった。
いや~、面白かったです。

監督は、大友啓史。
1966年生まれ。
1990年にNHKに入局。
TVドラマ『ハゲタカ』の監督や、
大河ドラマ『龍馬伝』のチーフ演出を手がける。
2011年4月にNHKを退局し、大友啓史事務所を設立。
最新作に、2013年公開予定の『プラチナデータ』が控えている。


谷垣健治をアクション監督に迎えているとはいえ、
これほどアクションシーンが多く、
アクション志向の強い作品とは思わなかった。

大友啓史監督は語る。

NHKをやめて、やりたいことのひとつに、ちゃんとしたアクション映画というのがあったんです。97年から2年間、30歳の頃に、アメリカで映画を改めて勉強したんですが、ロサンゼルスに行ってみて、やはり言語の問題がものすごく大きいと感じたんですね。人種のるつぼで、いろんな人がいるその場所に自分の足で立ったとき、ことばをのりこえて、映像として訴えていく力が、ものすごくつよいのがアクション映画だということを痛感しました。(『キネマ旬報2012年9月上旬号』より)

この映画は、もともとワーナー・ブラザーズが開発していた企画。
なかなか監督が決まらなかったとかで、
その頃NHKを辞めた大友啓史に白羽の矢が立った。

「るろうに剣心」は、アニメが『サムライX』という題で北米のアニメチャンネルで放送されていて、認知度も人気もある。原作も海外23ヵ国で翻訳されているし、うまくいけばシリーズ化もできるし、いいんじゃないかと。ワーナーさんとはご縁だと思って。「燃えよドラゴン」の会社ですからね。そして「ダーティハリー」とか「バットマン」とか、ヒーローが得意な会社ですから。(『キネマ旬報2012年9月上旬号』より)

ワーナーと大友啓史監督との思惑がピタリと一致し、
このような面白い作品が生まれたというワケだ。

緋村剣心役の佐藤健。
時代劇初挑戦となったNHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)で岡田以蔵役を演じているので、大友啓史監督が彼を抜擢したのは、その縁があったからだろうけれど、これほど涼しい顔で軽やかにあれだけのアクションシーンをこなせるとは……正直、思っていなかった。


私は彼に(勝手に)あまり好いイメージを抱いていなかっただけに、
良い意味で期待を裏切られた。


神谷薫役の武井咲。
若き日の吉永小百合を思い出させるような正統派美少女。
演技力はまだまだで、それを心配していたのだが、
この作品ではそれはあまり気にならなかった。
むしろ、彼女の清潔感と純粋性が際立ち、好感を持って見ることができた。


TVドラマやTVCMなどでも大活躍だが、
これからは映画の方でも大いに活躍してもらいたい。


鵜堂刃衛役の吉川晃司。
『必死剣 鳥刺し』(2010年)での帯屋隼人正役があまりに素晴らしかったので、
とても期待して見に行った。
そう、今回は、吉川晃司の演技を見に映画館へ足を運んだと言ってもイイほど……
そして、その期待は裏切られなかった。
やはり、時代劇の吉川晃司はスゴイ!
殺陣、所作、表情、科白……
どれをとっても一級品。
これからも映画にたくさん出てもらいたい。


高荷恵役の蒼井優。
大好きな女優なので、
蒼井優が出ているというだけで、その映画は見る価値ありとなる。
出演を承諾したものの、
漫画の高荷恵と、自分自身のイメージがあまりに違い過ぎていたので、
役作りに苦労したとか。


でも、さすが蒼井優。
暗い過去をもつ謎の美女を実に巧く演じていた。


武田観柳役の香川照之。
今の邦画界で、とにかくスゴイのは、
女優では寺島しのぶ。
そして、男優では香川照之。
この作品でも、香川照之はスゴイ。
どんな風にスゴイかというと、思わず笑ってしまうほどスゴイ。


その壊れっぷりがスゴイ。


……スゴイとしか言いようがないんだよね~(笑)


斎藤一役の江口洋介。
映画の出演作はそれほど多くはないが、
どの作品でも印象深い演技をしている。
この作品でも、元新撰組三番隊組長で、明治政府の警官という役を、
クールに、そして時に激しく演じている。
そういえば、蒼井優とは『洋菓子店コアンドル』(2011年)で共演していたな~と、
これを書きながら思い出した。


相楽左之助役の青木崇高。
大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)で後藤象二郎を、
大河ドラマ『平清盛』(2012年)でも鬼若(後の弁慶)を演じていたし、
映画『一命』(2011年)にも出ていたので、
時代劇俳優というイメージが強かったが、
NHKドラマ10 『はつ恋』(2012年5月22日~7月10日)では、
木村佳乃の夫役をして好評であった。
(この『はつ恋』というドラマ、私も見ていたが、なかなかの作品だった)
映画『るろうに剣心』では、
体を張ったアクションシーンを数多くこなしている。
これから本当に楽しみな男優である。


キャスティングの素晴らしさ、
アクションシーンの美しさ、
ストーリーの面白さ……
2時間14分、たっぷり楽しませてもらった。
シリーズ化されたら、
次回も必ず見に行こうと思った。
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