一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『舟を編む』 ……松田龍平の演技が素晴らしい今年前半NO.1の傑作……

2013年04月18日 | 映画
2年前の2011年5月1日に、このブログで、
映画『八日目の蝉』のレビューを書いた。
そのとき、私は、次のように書き出している。

今年これまで見た邦画では、間違いなくNO.1の傑作である。
今年は4月が終わったばかりなので(今後どんな傑作・秀作が現れるやも知れないので)
「今年のNO.1」とは、まだ言えないが、
少なくとも「今年前半のNO.1」とは断言してもイイのではないかと思っている。
それほどの愉楽を私にもたらしてくれた。
愉楽とは、映画を見る歓びである。
脚本に、演出に、演技に、撮影に、編集に……と、
感心させられ、感動させられた。
映画は多くの人が集まり創り上げる総合芸術であるが、
スタッフ、キャストそれぞれの優れた仕事ぶりを見ることができるということは、
何にも増して嬉しいことである。


昨日(4月17日)、会社の帰りに、
映画『舟を編む』を見た。
そして、2年前に映画『八日目の蝉』を見たときと同じ感想を持った。
だから、次のように宣言しよう。

今年これまで見た邦画では、間違いなくNO.1の傑作である。
今年はまだ4月の中旬なので(今後どんな傑作・秀作が現れるやも知れないので)、
「今年のNO.1」とは、まだ言えないが、
少なくとも「今年前半のNO.1」とは断言してもイイのではないかと思っている。



原作は、
辞書編纂という地味な題材を、
ユニークな登場人物のキャラクターで評判を呼んだベストセラー小説、
昨年(2012年)の本屋大賞第1位に選ばれた三浦しをんの『舟を編む』。
辞書は、広大な「言葉の海」を渡る「舟」。
辞書(舟)を編集する(編む)人たちの物語。


出版社・玄武書房の営業部に勤める馬締光也(松田龍平)は、
真面目すぎて職場で少々浮いている。
しかし言葉に対する卓越したセンスを持ち合わせていることが評価され、
新しい辞書『大渡海(だいとかい)』の編纂を進める辞書編集部に異動となる。


今を生きる辞書を目指している『大渡海(だいとかい)』は、
見出し語が24万語という大規模なもの。
完成まで15年。
編集方針は、「今を生きる辞書」。
個性派ぞろいの辞書編集部の中で、馬締は作業にのめり込む。


そんなある日、
大家の孫娘で、女板前の林香具矢(宮崎あおい)に、
馬締は一目で恋に落ちる。
なんとかして自分の思いを彼女に伝えようと思うが、
言葉のプロでありながら、なかなかふさわしい言葉が出てこずに苦悩する。


問題山積の辞書編集部、
果たして、『大渡海』は完成するのか……
馬締の思いは伝わるのだろうか……


監督は、『川の底からこんにちは』(2010年)の石井裕也。
そう、満島ひかりが主演した作品。
(で、満島ひかりと2010年10月25日に入籍。嗚呼!)
佐賀ではかなり遅れて公開されたので、
このブログにレビューは書いていないが、
とても面白く、優れた作品だった。
その石井裕也が監督した作品だったので、
かなり期待して見に行った。
そして、その期待は、裏切られることがなかった。

主人公の馬締光也を演ずる松田龍平が、とにかくイイ。


以前、映画『横道世之介』のレビューを書いたとき、
冒頭にTVドラマ『最高の離婚』を紹介し、
次のように記した。

映画『横道世之介』を語るのに、
なぜ『最高の離婚』を持ち出しているかと言えば……
あれっ、なんでだっけ?(笑)

そうそう、瑛太演じるところの主人公の性格が、
横道世之介の性格に通じるものがあるからである。
ちょっとオタクっぽくて、
植物系的な男子で、ナヨッとしてて、
世間の常識とかけ離れたところで生きている……そういう感じ。

最近、この手の男を主人公したTVドラマや映画が多くなっているような気がする。
映画『僕達急行 A列車で行こう』では、
瑛太と松山ケンイチがそうであった。
瑛太は『僕達急行 A列車で行こう』で鉄道オタクになりきっていた。
ちょっと引いてしまうくらいに……(笑)
あのときの体験が、『最高の離婚』にも活かされていたような気がする。


そうなのだ。
映画『舟を編む』の主人公・馬締光也も、この手の人物なのである。
ちょっとオタクっぽくて、
植物系的な男子で、ナヨッとしてて、
世間の常識とかけ離れたところで生きている……そういう感じ。
この人物を、松田龍平が演じたところに、配役の妙がある。
松田優作の長男で、
どちらかというと、クールな役柄の多い彼が演じると、
意外性も手伝って、実に魅力的なのだ。
映画『僕達急行 A列車で行こう』で、瑛太と松山ケンイチがそうであったように、
映画『横道世之介』 で、高良健吾がそうであったように……

彼は、この作品で、たぶん、
本年度の各映画賞の主演男優賞にノミネートされるだろう。
もしかしたら、最優秀主演男優賞を獲るかもしれない。
それほどの名演技であった。

林香具矢を演じた宮崎あおいも良かった。


普通なら誰も相手にしないような変人・馬締光也を理解し、
いつも静かに見守っている香具矢を、
繊細な表現力で好演していた。
ふとした表情、ちょっとした仕草に魅了された。


その他のキャストも素晴らしい演技を見せていた。
加藤剛、八千草薫、渡辺美佐子、小林薫の超ベテラン陣はさすがの演技であったし、





オダギリジョー、池脇千鶴も実に良かった。




特筆すべきは、伊佐山ひろ子。
契約社員の編集者という役柄であったが、
彼女なくして辞書編集部はなかったと思えるくらい存在感があり、
シブイ演技で、好い味を出していた。


そして、黒木華。


3月12日に映画『草原の椅子』のレビューを書いたとき、
私は彼女について、次のように記している。

遠間憲太郎(佐藤浩市)の娘を演じた黒木華も良かった。
数年前から舞台で活躍していた女優で、
映画やTV ドラマの出演は少ない。
私は、NHK朝ドラ『純と愛』で、彼女を知った。
1990年3月14日生まれというから、
明後日(2013年3月14日)で23歳。
蒼井優を彷彿とさせる容姿と表現力、それに存在感。
これからの活躍を予見させるものを持っている稀有な女優だと思う。
2013年4月13日公開予定の『舟を編む』にも出ているので、こちらも楽しみ。


そう、『舟を編む』で彼女に逢えるのを楽しみに見ていた。
そして、黒木華は、期待に違わぬ演技をしていた。
今後、
石井岳龍(石井聰亙)監督作品『シャニダールの花』(2013年7月20日公開予定)、
山田洋次監督作品『小さいおうち』(2014年1月公開予定)と、
楽しみな出演作が控えている。
必ず見に行くつもり。

あれも書きたい、
これも書きたいと思うが、
時間がない。
時間ができたら、書き足していくことにするので、
この辺で、ご勘弁を……

最後に、
これもまた、映画『八日目の蝉』のレビューを書いたときの言葉で締めくくることにする。

今年もまた邦画の傑作に出会うことができた。
……そのことが、何より嬉しい。

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