一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『無限の住人』……三池崇史監督自身の『十三人の刺客』を彷彿とさせる佳作……

2017年05月06日 | 映画


監督・三池崇史、
主演・木村拓哉の映画『無限の住人』を見てきた。


(あくまでも私個人の見解ではあるが)三池崇史は当たりはずれのある監督で、
『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲』(2010年5月1日公開)
『十三人の刺客』(2010年9月25日公開)
などの傑作をものしたかと思えば、
『藁の楯』(2013年4月26日公開)
『風に立つライオン』(2015年3月14日公開)
といった首をかしげざるをえないような作品を世に送り出し、
〈果たして同じ監督の作品なのか……〉
と、疑問に思わせたりもする。
多作が故に、
「傑作もあるが、そうではない作品もある」
ということなのかもしれないが……

『無限の住人』は、どうだったのか?

これが、なかなか良かったのだ。
141分とやや長めの作品ながら、
まったく退屈することなく、
存分に楽しむことができた。
人気コミック(国内外で高い評価を受ける沙村広明)の実写化なので、
それぞれのキャラクターに似せた漫画チックな身なりや容貌は如何ともしがたいが、
(やはり漫画に似せないと漫画のファンが怒るのかな?)
それ以外の部分では、かなり健闘していたし、
三池崇史監督作品の中では、「当たり」の方ではないかと思った。



伝説の人斬り・万次(木村拓哉)は、


妹の命を奪われて生きる意味を見失った時、
謎の老婆(山本陽子)によって無理やり永遠の命を与えられ、
死にたくても死ねない「無限の体」になってしまう。
そんな永遠の時間を孤独に生き続けるだけの日々を送っていた万次の前に、
剣客集団・逸刀流に両親を殺された少女・浅野凛(杉咲花)が現われ、
仇討ちの助っ人を依頼する。


凛の姿に亡き妹の面影を重ねた万次は、
用心棒として凛を守ることを決意し、
凛と共に剣客集団・逸刀流の首領である天津影久(福士蒼汰)の命を狙うべく、
凄絶な戦いに身を投じていく。




秦の始皇帝から不老不死の仙薬の入手を命ぜられ、日本にやってきたとされる徐福。
今なお日本各地に徐福伝説(佐賀県にもある)が残っているが、
かように人間は、不老不死を夢見てきた。
だが、死なない(死ねない)とは、やはり辛いことではなかろうか……
誰もが不老不死ならまだしも、
自分だけが死なない(死ねない)のは、なんとも哀しいものだ。
ずっと、自分であり続けなければならないのだから……
万次(木村拓哉)は、
ただ生きていること(生き続けていることに)うんざりしていたが、
凛(杉咲花)を守るという目的ができたことで、
輝き出し、生きがいを見出していく。
この万次の生きざまは、
今の木村拓哉の置かれている状況とも重なり、
なにやら意味深な物語となっている。
SMAPが解散しても、
木村拓哉はキムタクをやめることはできないのだ。


木村拓哉はキムタクであり続けなければならないのだ。


SMAP解散後の大バッシングに立ち向かう姿と、
本作での、100人の敵、そして300人の敵に向かっていく姿がオーバーラップしてしまう。
そんな彼の、木村拓哉という男の、
“哀しみ”と“覚悟”が感じられる佳作になっていると思った。



浅野凛を演じた杉咲花。


日本アカデミー賞など、数々の映画賞で助演女優賞を受賞した、
『湯を沸かすほどの熱い愛』での好演が記憶に新しく、
味の素 Cook Do(2011年7月28日~)で回鍋肉を食べる美少女のイメージもあり、
まだ十代半ばくらいかなと思っていたら、
1997年10月2日生まれなので、もう19歳。(2017年5月現在)
今年の10月には20歳(もう大人)になるのだ。
本作では、凛役のほか、万次の妹・町役も務めて1人2役を担当し、
アクションもこなしていたし、演技の方もとても良かった。


木村拓哉の相手役も務め、今年20歳になることだし、
今後、益々演技の幅が広がっていくことだろう。



逸刀流の統首・天津影久役を演じた福士蒼汰。


最初は敵役としては物足りないのではないかと思ったが、
爽やかささえ感じさせる悪役ぶりで、
これが妙にハマり、
最後には、役は役ではないかと思わされた。
最後まで見て、天津影久役がなぜ福士蒼汰なのかを納得させられる。(いろんな意味で)
福士蒼汰のファンは必見である。



意外(と言っては失礼だが)に良かったのが、
逸刀流の刺客・乙橘槇絵を演じた戸田恵梨香だ。
想いを寄せる天津影久(福士蒼汰)からの命令で、
万次を排除しに現れるのだが、
長刀と三節棍を組み合わせたような三節槍を巧みに操って、万次を追い詰める。


そのアクションが見事だし、
これほどに動ける女優とは正直思わなかった。
少林寺拳法の道場を開いていた父の影響もあって、少林寺拳法は初段で、
普段からジム通いも欠かさないとのこと。
本作でのアクションシーンでの躰の動きが美しかったし、
厳つい男優陣ばかりの中で一際輝いていた。
悲しい過去と、人を斬ることの恐怖を持ち、
天津影久がやっていることが本当に正しいのかという疑問も抱いているという複雑な心情もよく表現していた。



この他、
閑馬永空を演じた市川海老蔵、


尸良を演じた市原隼人などが作品を盛り上げていた。


中でも幕府の策士・吐鉤群を演じた田中泯の演技が素晴らしかった。


彼がいるだけで、この作品の質がかなりアップしたし、
作品もグッと締まったと思う。


三池崇史監督自身の『十三人の刺客』を彷彿とさせる佳作『無限の住人』。
映画館の大きなスクリーンで、ぜひぜひ。
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