豆の育種のマメな話

北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい
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西伊豆の小さな漁村戸田港と「造船郷土資料博物館」

2017-06-02 11:33:19 | 旅よ!

5月中旬、伊豆急下田駅前から、松崎、堂ヶ島、土肥温泉を経て戸田に向かった。伊豆半島西海岸を北上する各駅停車のバス旅である。東海バス堂ヶ島行きは、伊豆急下田駅前を10時発、稲生沢川に沿って進み、蓮台寺、箕作、婆姿羅峠を経て松崎に入る。松崎1050分着、松崎バスターミナルで修善寺行きに乗り換える。堂ヶ島、田子、安良里、宇久須など漁村に立ち寄りながら土肥温泉へ。土肥温泉1150分着。

土肥温泉から戸田へ向かうバスの便数は少ない。バス停近くの松原公園で弁当を食べ、13時発の戸田行きに乗車する。バスは海岸線に沿って山道を抜け、戸田村(現在、沼津市戸田)に入る。1330分戸田着、下田からは3時間半の道程。戸田へのアクセスは、沼津または修善寺からの方が便利であるが、今回は下田からのコースを辿った。

戸田村は平成17年沼津市に併合され、沼津市戸田地区と呼ばれるが、現在戸数1,400戸余り、人口3,000人弱、地理的にも独立した集落で、戸田村と呼んでもおかしくない長閑な漁港に見える。下田で生まれ育ち、北海道に暮らす今でも年に34回は下田を訪れるが、戸田に立ち寄ることはこれまで一度もなかった。今回、戸田港を訪れようと思ったのは、開国の歴史の中で裏舞台となった入江を見ておきたいと思ったからである。

戸田港は、ロシアのプチャーチン提督率いる軍艦「デイアナ号」が安政大地震による津波で破損し(日本との国交交渉のために下田港に停泊していた)沈没した折、ロシアの技術者と当地の船大工たちが協力して日本初の洋式帆船「ヘダ号」を建造した所縁の場所である。その資料は、この地区の「沼津市戸田造船郷土資料博物館」「造船記念碑」「宝泉寺(プチャーチン宿泊所)」「大行寺(日露条約修正交渉場所)」などで見ることが出来る。

江戸幕府がデイアナ号の修理港として戸田を選んだのは、当時ロシアがクリミア戦争でイギリス・フランスと敵対関係にあったため、外洋を航海するイギリス・フランス艦隊に見つからないよう、この港を指定したのだと言う。確かに、戸田港は御浜岬によって包み込まれるように覆われ、駿河湾から戸田港は見えない。御浜岬の松林が裏山と一体化して、港の存在を消しているのだ。

造船郷土資料博物館は御浜岬の先端近く、松林の中にある。岬の内湾に面しては、諸口神社、御浜海水浴場となる波静かな砂浜が続いている。

造船郷土資料博物館には、デイアナ号の津波による被災から沈没、さらにヘダ号建造に至るまでの経過が紹介されている。入口の外には、向かって右側に「デイアナ号の錨」が置かれ、左側に「日ソ友愛の像」が建っている。駿河湾から引き揚げられたデイアナ号の錨を野晒しにしてあるのかと思いながら写真に収める。館内には、デイアナ号やヘダ号の模型、ヘダ号建造時の資料などが保管され、当時の動きを知ることが出来る。

戸田港は日本近代造船発祥の地とされる。沈没するデイアナ号から運び出された「スクーナー型」と言われる帆船の設計図をもとに、近隣の船大工たちが言葉の壁を乗り越え、韮山代官江川英龍建造取締役のもと僅か3か月で100トンほどの帆船(ヘダ号)を造り上げたのである。さらに、同タイプの船(君沢型)6隻が建造され、幕府は函館などに配備したという。ヘダ号建設に係った船大工たちは、各地で造船技術の普及指導にあたった。

プチャーチン一行はヘダ号でロシアに帰国したが、プチャーチン及びその子孫と戸田村民との友愛はその後も続くことになる。本稿では触れないが、興味ある方は拙ウエブログ「豆の育種のマメな話」から下記の項目を参考にされたい。

①   プチャーチン、日本を愛したロシア人がいた(2014.5.17

②   橘耕斎、幕末の伊豆戸田港からロシアに密出国した男(2013.5.27

③   日露交渉の真っ最中、下田を襲った安政の大津波(2012.9.28

博物館から岬内の遊歩道を通り、内浦湾に沿って市街地まで歩く。途中で「造船所跡の碑」を眺め、市街地までの所要時間は約30分。磯割烹の宿「山市」では戸田温泉につかり、駿河湾深海の「タカアシガニ」を味わった。

駿河湾は日本一深い湾であるという。戸田には、深海魚や深海のタカアシガニなどを見よう、食べようと訪れる旅人が増えている。最近は深海魚の方が戸田観光の主役かも知れないが、長閑な自然の中で開国外交の裏舞台となった戸田の歴史に触れてみるのも面白い。

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