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グリップ感とトラクション

(マン島。コーナーをフルトラクションで脱出していくジョイダンロップ。写真はネット上で公開されたもの。)

グリップ感を高める。
ライダーがバイクを走らせるときの安心感や自信につながるタイヤの「グリップ感」。
どうすればグリップ感を失わずに気持ちよく走れるでしょうか。
その条件は二つあります。
 1 正しいセッティング
 2 グリップ感を高めるライディング
の二つです。

まずは「正しいセッティング」。タイヤの状態を正しくセットすることがまずは必要ですね。
つるつるに減ったタイヤではグリップもしないし、グリップ感も少ないのは想像できます。
つるつるでなくても、すり減ったタイヤはグリップ力もグリップ感も低下しています。
タイヤが地面に接しているトレッド部分のゴムの厚みが減ると、その分、タイヤが横方向にたわみながらグリップする能力は落ちます。溝の浅くなったタイヤは雨のときの排水性が落ちるだけではなく、ドライ時のグリップ感も低下、ハンドリングにも徐々に悪影響を及ぼしていきます。
あまり贅沢に履き替えるのも「もったいない」ですが、タイヤはけちってはいけないパーツの代表といえます。


(軽量車のレースではコーナリングスピードを高めることも重要となる。しなやかに旋回Gを受け止めるサスが決まってこそ、タイヤのグリップ感もリアルに感じられる。出典同上)

空気圧も重要です。例えば前後タイヤの空気を指定よりもかなり多めに入れ、パンパンにすると、ハンドリングが軽くなる反面、いつ足元からすくわれるかわからないような嫌な不安感に襲われます。グリップ力も落ちるので危険です。やらないでね。

空気圧が不足するとどうでしょうか。サーキットを高速で走るときは空気圧を指定よりも少し下げることが有効なこともあります。指定空気圧は二人乗りの荷重も計算されているので、一人乗りの場合、そして高速で走り、タイヤ内の空気が高温になり、膨張することも考えると若干下げる事もあるようです。しかし、これも路面状況も走行条件もわかっているからそういう手が使えるので、冷たい雨の中、ずっと車の後ろをだらだらと走っていて、急に前方の車が事故!急ブレーキで回避!なんてこともないと言えない公道ではお薦めできません。

基本的に指定空気圧をきちんと守り、自己責任でわずかに増やしたり減らしたりしながらあらゆる状況下でベストな空気圧を探っていくのがよいのでしょう。
しかし、大概の場合、空気圧には無頓着な人が多くて、いつの間にか空気圧が低下し、指定圧まで戻しただけで「このバイク、こんなにハンドリングよかったっけ!?」となることも多いのです。
グリップ感に空気圧は重要!これは動かしがたい事実ですね。

サスペンションのメンテとセッティングも重要ですが、詳しい話はここでは端折ります。


(自分の体重をリアタイヤにうまく荷重してトラクションを高めようとするジョイダンロップ。出典同上)

次にグリップ感を高めるライディングについて。
グリップ感がタイヤのたわみ情報、特に加速・減速・遠心力のような接地面に対して横にずれるようなたわみからくるのであれば、タイヤの能力内では適度にタイヤがたわんでいる状態、つまり、加速や減速、旋回のGがタイヤに掛かっている状態の方が、グリップ感は高いことになります。

実際に、確かに転がっているだけのタイヤより、加速中や安定した減速中の方が、ライダーはグリップ感を豊かに感じられますし、安定感、安心感も感じているのです。

この大事なタイヤのたわみを生む力。
路面に対してタイヤをただ転がすのでなく、こすり付けるように働かせる力をトラクション(traction){=粘着摩擦、牽引力}と言います。
バイクは、タイヤを路面にこすりつけて、その粘着摩擦力により路面をタイヤが蹴るようにして駆動力を得て進みます。それがトラクション。そしてトラクションコントロールがバイクライディングの真髄なのです。
バイクライディングとは、エンジン出力による加速のトラクション、ブレーキングによるマイナスのトラクションを操ることにより、タイヤのグリップ力を適切に引き出し、バイクの状態をライダーの意志下に収め、自在にコントロールすることに他なりません。

グリップ感を高めるライディング。それは、タイヤの地面へのこすり付け方、タイヤへの駆動力のかけ方を、適切なタイヤのたわみを生むようにコントロールすること。つまり、状況に応じ、ライダーの意志を反映したグリップ力を発生させる、積極的なトラクションコントロールなのです。

次回は具体的なバイクライディングの状況を取り上げ、どのような操作がグリップ感を高めるか、具体的に考えてみたいと思います。

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コメント
 
 
 
Unknown (nobby)
2008-02-14 17:01:57
お~懐かしいマン島レースの神様的ライダー、ジョイ・ダンロップ!



公道レースこそグリップ感重要ですよね~!

マン島、マカオGP、究極の自動車レース・モナコ。

どのレースも舞台は「公道」。

グリップ感がハッキリしなければ、足周りのセッティングも出ないし満足にタイムも出ません。





一般公道ではレース程シビアなセッティングを必要としないとは言え安全に走る上では重要な要素かも知れません。







私もフロントサスペンションオイルを変えて半年たちますが、良く動き過ぎる感じでいまいちグリップ感が分かりませんので、そろそろFサスのセッティングしようと思っています。



空気圧は現在高めで、更に接地感も鈍めです。

 
 
 
nobbyさん、こんにちは。 (樹生和人)
2008-02-14 18:16:29
nobbyさん、こんにちは。
グリップ感はタイヤそのもの、サス、車体、ライダーの走らせ方等すべてが影響しますので、分解して話すと難しくなりますね。

レースシーンでは意図的なスライドの感覚も含んできますし、結果的に速くなければ意味をなさないので、グリップ感はいかにトラクションが得られるかという話に集約されて行くように思います。
対して一般公道(舗装路)ではグリップ走法が基本となりますから、絶対的なグリップではなく、タイヤがグリップしているという安心感や自信の方が重要になると思います(公道でもスライドコントロールに持ち込む人はいますが…)。
なりゆきでなく、低い速度でも常にトラクションを意識した走法が安全上も充実感でも大切かと思います。
この説明の準備は時間がかかりそうなので、ちょっと記事に間が開くかもしれません。
それにしてもこんな記事を書きながら自分はすんごく遅いし上手くもないというのが、なんだか後ろめたくなっても来ている樹生でした。
 
 
 
Unknown (kita)
2008-02-14 19:07:49
昔GPzに乗っていた頃
金が無くて、ツルツルのタイヤで走っていたら
バーストしたことがあります(汗)

直線でさほどスピードが出て無かったから大事には至りませんでしたが、それ以来タイヤの減りには気を使っています(汗)

タイヤの減り、空気圧、公道でも結構重要ですよね。
 
 
 
えっ! (樹生和人)
2008-02-14 19:59:08
き、kitaさん、それは、凄すぎます!
よくぞご無事で。

勝つためにすべてを集約すればいいレースよりも、公道の方がある意味(ある意味ですよ、ある意味)過酷だと私は考えています。
レースなら対向車もいないし、駐車場から急に飛び出してくる車もいないし。

それにしてもkitaさん、すごいですね。
すごい体験です。あーびっくりした。
 
 
 
やっぱり大切ですね。 (まーしー)
2008-02-15 12:34:45
グリップ感は、個人の感覚によっても違ったり、
オートバイの状態によっても違ったり、
いろいろ考え始めると奥が深いですね。
グリップ感が養われてくると、安全運転にも役立ちますし、大好きな峠道も楽しくなりますし、
もっともっと精進しようと思います。
 
 
 
Unknown (田亜山)
2008-02-15 20:52:49
kitaさんのコメントにビックリ!
・・・は置いといて。

自分の悩んでいる感覚・・・
その、グリップ感をいかに高めるか。
トラクションコントロールをどのように実践、表現するのか。
難題に挑戦されていますね。
どんどん楽しくなってきています。
 
 
 
まーしーさん、こんにちは。 (樹生和人)
2008-02-16 00:53:10
実のところ何を以ってグリップ感を感じるかを、数値的に解明するのはかなり難しく、「感じ方」によるところも大きいと思います。

「グリップ感を養う」ことは、私もとても大切だと思います。車で「ハンドルを切れば曲がる」、バイクは「傾ければ曲がる」という感覚から、グリップ感覚、トラクションコントロールへの移行が、運転をより案善により楽しめるかどうかの大きなポイントのような気がします。
 
 
 
田亜山さん、こんにちは。 (樹生和人)
2008-02-16 06:55:03
やっと話がトラクションまでたどり着きました。
グリップ感の基本的な話をするにはやはりトラクションコントロールについて書くことは欠かせないと思うんです。
しかし、現実に冷えたタイヤでグリップ感を得るためのライディングとか、雨の日にグリップ感を得るための工夫とか、グリップ感の話って、ホントはそっちに行ったほうがいいんでしょうね…。

しかししかし、理屈屋の私としては、バイクライディング、グリップ感の本質に、なんとか迫ってみたいんです。ですが、行けるのか…。お励まし下さり、ありがとうございます。
次回はコーナリングに触れていきます。
 
 
 
トラクション走行をマスターしたい。 (山賊)
2009-12-09 13:08:09
スリップキング改めバイクの名前から山賊としました。
バンディット1250無印ABS付きを所有しております。
また宜しくお願いします。

トラクションの内容はよくわかりましたが、自分ではまだ自信がないのと、実践できるようにとの思いから後付けのトラクションコントロールを注文しました。

これを装着してバイクに助けられようとの試みです。

関東もここ数日かなりの冷え込みですので峠でのテスト&トライは来春までおあずけです。

このブログ2度目の読破を目指しております。
情報が多いので一度では全部頭に入らず、2度読みして頭に叩き込んで、後は体で実践します。
 
 
 
山賊さん、改めてよろしくお願いします。 (樹生和人)
2009-12-09 21:06:15
改めまして、山賊さん、よろしくお願いいたします。
装置としてのトラクションコントロールは、アクセルの急開による後輪の空転を(前後のホイールの回転数差から)読み取って、点火カットなどを行い、後輪のスピンを防ぐ機構ですね。
雨の日など、ベテランでもお世話になることがある装置です。

一方、スピンしない程度にトラクションをかけて安定して旋回していくのは、バイクライディングの醍醐味の1つです。
無理なく、徐々に、スムーズに、自分のものにして行っていただければと思います。

記事2順目の読破ということで、大変うれしく、光栄で、かつ身の引き締まるような思いです。ありがとうございます。

私のライテク記事は「こうしろ」とはあまり書いてなくて、「これはこういうことだ」というような、バイクライディングで起きることの認識についての記事が多いです。その分、難解でもあり、抽象的なことも多いと思います。ヒントは文章やDVDにあっても、答えはいつでもバイクの上に、走りの中にあると思います。
自分の操作でバイクが今どうなっているか、それを感じながら、フードバックしながら乗ると、楽しいと思います。(楽しくなくちゃね、です)そして、その感覚を元に、また記事を読んでいただくと、同じ記事が全然別の意味で立ち上がってくることもあるかと思います。

いつでも、楽しく、バイクには乗りたいものですよね。
私は4月、雪解けまで乗れませんが、どうぞ、冬の間も気をつけて、バイクライフをお楽しみ下さい。
また、いつでもご質問をお待ちしています。

 
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