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街中のニセアカシア一本木


それは、雨の中で、すらりと高く、美しく立つ樹でした。

札幌市、東区、北21条、東1丁目。
通りに沿って、一本の高い高い樹が、立っていました。

この樹のことを私は知りませんでした。
教えてくれたのは、古くからブログにコメントをくださり、この秋、ライダーに復帰してRG400Γ(ガンマ)に乗る、Mさんでした。

札幌市内に大きくて背の高いニセアカシアがあるというのです。

私は、この日、午前中、雨が降る前にGPZの冬眠の準備をすませ、当地を訪ねてみたのでした。
ちょうどお昼頃、天気予報通り、雨が落ちてきていました。

最初、位置を北31状とカン違いしていた私は、その辺りには高い樹の記憶ないがなあ…と思いながら南下していたのですが、
21条が近づいてくると、その樹の背の高さは、すぐにあれだと分かりました。

道路沿いに、ひときわ背が高く、見えていたからです。

近づいてみると、やはり相当に高い樹でした。

ニセアカシアは、秋田の海沿いの街でもよく見かけた樹です。
非常に繁殖力が強いので、砂地の地面に植えられていたように記憶しています。
海の防風、防砂林には松林、海から少し離れたところにニセアカシアの林があり、その樹のトンネルのような道を、小学校へ通ったのでした。
その林は、小2の時に、道の拡幅工事のために切られ、後に宅地化して、消えていきました。

ニセアカシアは北アメリカ大陸の原産。
繁殖力が旺盛で、痩せた土地でも生える、パイオニアプランツです。
成長も早く、あっという間に背が高くなります。
その分、寿命は短く、100年を超えることはあまりないようです。
同じようなパイオニアプランツにポプラの樹や白樺の樹がありますね。
成長が早く、痩せた土地に生えますが、寿命は短い樹です。
以前、北大のポプラ並木が老化して倒れるおそれが高まり、伐られたことがニュースになったことがありましたが、そうしたタイプの樹なのです。



近づいて、まずいつものように私なりの挨拶を樹にささげ、そして写真を撮っていると、不意に私の名を呼ぶ人がいました。
振り向くと、そこに立っていたのは、Mさんでした。
なんということでしょう。

しばらく、Mさんと、この樹の下で、話をしました。
この樹のこと、バイクのこと。



この樹、ニセアカシアとしては、私がかつて見たこともないような大きな、太い樹です。
幹も一人では抱えきれない太さを持ち(華奢なニセアカシアとしては大変珍しい)、幹の表皮のひび割れも、深く、年齢を感じさせます。

Mさんの話しだと、古くからこの近くに住んでいる人に聞くと、50年以上前からここに立っている樹だということです。

ニセアカシアは、もともとこのあたりに自生していた樹ではありません。
明治初期、「北海道」の「開拓」と同時に持ち込まれたものです。

花は白く美しく房になってさき、甘い香りがして、密も豊富。
そのため、養蜂家にも愛され、ハチミツの生産に大きく寄与してきました。

また、前述のように痩せた土地でも生えるために、堤防や道路の工事の後の荒地の緑化などにも積極的に植えられてきました。

北海道でも「アカシア」は北原白秋作詞の「この道」で歌われるなど、愛されてきた樹です。街路樹にも植えられてきました。
おそらくこの樹も、札幌から北へ向かうこの街道沿いに植えられたものではないでしょうか。
また、早く大きくなり、禿山を覆うので、森林資源を伐採した後に植えて、その成長の早さを利用して薪としても重宝がられたといいます。
北海道の「開拓」とともに、外からやってきた樹なのです。

それにしても、寿命が短く、早く背が伸びるので倒れやすいこの樹としては、よくぞここまで太く、そして長く、この地に立っているものです。



しかし、このニセアカシア、最近では、「要注意外来生物」として登録を検討されています。
一度植えられると在来種を侵犯しながら猛烈に広がり、伐っても根まで完全に除去しないとまたすぐに生えてきて、手に負えなくなるからです。
植物界の「ブラックバス」といわれることもあり、天竜川や千曲川の流域では、伐採駆除の取り組みも始まっているくらいなのです。

今アメリカでは日本から入った葛(くず)が猛烈に繁殖を始めてこれも「グリーンモンスター」と呼ばれていますが、どちらも元々の環境の中では、そんなに大繁殖して他を圧倒してしまう状態ではなかったようですね。

動物も、植物も、人間が自分の都合で安易に移動させたことが原因で、移動先で大問題となることがありますが、このニセアカシアもまた、そうした種類の樹のひとつなのです。

環境保護の観点に立てば、ニセアカシアが増えすぎたことは、好ましいことではないのでした。

例えば、緑化のために植林する際に、以前の自然を復活させるために、なるべく多くの樹種を混植する場合でも、ニセアカシアだけは植えず、生えてきても若木のうちに完全に根本から引っこ抜くように処分する専門家もいるくらいで、この樹の繁茂は今ではかなり問題らしいのでした。



Mさんの話では、毎日、この樹の下を通り、この樹に触れて行く地元の年配の方もいらっしゃるようです。
その方にとっては、昔からこの地に立ち、変わっていく街並みを変わらず見守っている、昭和~平成時代の生き証人のような、幼い頃からの思い出の詰まった、記念碑のような、そんな樹なのかもしれません。

なにより、この立派な大きな樹は、力強く、やさしく、大きく、この地に立っていました。

私とて、他の地からやってきた外来人。
北海道は、先住民族のアイヌの人々の暮らす土地に、一度に本州以南から「開拓民」が殖民され、国の方針で開拓されることで、開発され、今日に至ります。
その、北海道の近代史を、ある意味で象徴しているのが、こうした外来植物なのかもしれません。

例えば街中の公園、北大のキャンパス、大通り、中島公園などには、開拓前からこの地に立っていた巨木がたくさん残されています。
しかし、このあたりには、そうした樹はほとんど残っていません。
今生えている多くの樹は一度伐られた土地に後から植えられたものです。

このニセアカシアは、だれが、いつ、どんな思いで植樹したのでしょう。

周囲はびっしりと市街地化し、繁茂しようにも、その空き間はあまりなく、この樹は、こここで、寿命まで、初夏には白い花と甘い香りで、道行く人や、セイヨウミツバチ(…が、いればですが)たちを喜ばせ、秋の終わりまで、その緑の葉を風にそよがせることでしょう。(ニセアカシアは紅葉しないのです)

やはり素敵な、大きな、やさしい存在感のある樹だった。
私が感じたのは、そういう感情でした。

ニセアカシアの寿命は樹としては短いのです。
私は今後ニセアカシアを植樹することには、いくら明治以降のノスタルジアがあっても賛成しませんが、
同時にまた、この樹には、どうか生まれたこの地で、天寿を全うしてほしい…とも思ったのでした。

それは、本当に身勝手な、気まぐれな、旅するライダーの感傷に過ぎないのかもしれないのですが…。

時々会いに行きたくなる樹が、また一本増え、
私は次第に強くなってくる雨の中を、帰っていったのでした。
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コメント
 
 
 
ようこそ、おいでくださいました。 (M)
2010-11-19 18:30:39
こんにちは、樹生さん。

日曜日はようこそおいでくださいました。
お会いできうれしかったです。

偶然、外を見ると木を眺め熱心に写真を撮るヒトが・・・
”もしかして・・・”と思い
お声を掛けました。

自分の木では当然ないのですが、
大きな良い木でしょう?自慢の木です。
実はこの木の根元は雑草もひどく生い茂り、ごみを捨てられたりでとっても景観がよろしくなかったのです。

さすがに見かねて今年の6月ごろに除草
(木の事を考えると除草剤は使えず、すべて手作業となりました)、土を掘り起こし肥料を入れてから
芝桜を植えました。
まさにちょっとした開墾でした。

芝桜は花の季節が終わってしまっていましたので
お花は来年の楽しみです。

ニセアカシアの木について、いろいろと教えていただき
ありがとうございました。
やはり木の事を知ると今まで以上に想いが強くなります。

近くのポプラが今年全部伐採されました。
アレルギーなどいろいろな事情があるのだと思いますが
大きな木が姿を消すのはちょっと悲しいですね。
木の守番として出来る限り見守っていきます。

今日のニセアカシアは随分と葉が落ち、いよいよ
幹と枝だけになりそうです。
木も厳しい冬に備えています。

樹生さん、来年の芝桜の時期
この木を見上げてバイク話に花をさかせましょう。
長々と失礼いたしました。
 
 
 
のびのびと (樹生和人)
2010-11-19 21:08:44
Mさん、こんにちは。
あの樹の周りを、そんな風に整備されていたのですね。
ニセアカシアにシバザクラは、とても合うことだろうと思います。

私の家の庭はとても狭いのですが、ほとんど放置状態で、お恥ずかしい限り…。
来年からは少しずつ、手を入れていこうかと思います。

ポプラはポプラで、アレルギーやら、倒れる危険性やら、いろいろあるらしいですが…。
その樹が、その樹らしくあれる環境で、伸び伸びと枝を伸ばす様が、たぶん一番見ていても気持ちいいのだと思います。

シバザクラの頃、樹を見上げてバイクを並べて、バイク談義、なんだか素敵ですね。実現するといいですね。
 
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