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「山と渓谷」2010年12月号

2011年08月27日 23時06分15秒 | 読書(山関係)


時たま、過去の「山と渓谷」を図書館で借りて読んでいる。
これは、2010年12月号である。
P176に気になる記事が掲載されているので紹介する。
柏澄子さんによるレポート「クマ襲撃による外傷」、である。

クマの襲撃による1年間の外傷例
1980年代・・・10人
1990年代・・・20人
2000年代・・・50人
外傷の内容をみると、人間の顔や頭部をめがけて攻撃する例がほとんどある(最初に腕や肩を押して倒したあと、顔を咬む例も多い)、とある。

具体的な事例として、山岳写真家・早川輝雄さんと登山家・山野井泰史さんの事故をとりあげている。
以下、いずれも柏澄子さんの文章である。

【早川輝雄さんの事例】大尽山(青森県)
2009年5月16日午後1時ごろ、林道の終点まであと600mほどの地点で、クマに遭遇した。
クマは数十メートル先から早川さんに向かって登山道を突進してきた。早川さんは登山道脇のヤブの中に逃げたが、クマは顔をめがけて飛びかかってきた。最初は左側に避けてなんとかかわしたが、次の瞬間、振り向いたクマは再び顔をめがけて攻撃してきた。左手で顔をかくしたところ、左腕を咬まれた。その後もみあいになり、右腕、さらには頭部と顔も咬まれ、引っかかれた。衝撃で入れ歯がガシャッと壊れる音がした。(中略)クマは顔を咬んだあと、ヤブの奥へ走り去っていった。


【山野井泰史さんの事例】倉戸山(東京都)
2008年9月17日朝7時ごろ、、登山家の山野井泰史さんは、自宅裏にある倉戸山方面にひとりでジョギングに出かけた。(中略)
クマに遭遇した地点は小石がゴロゴロしていたので、山野井さんは足元を見ながら走っていた。スピードはそれなりにあったはずである。ちょっと顔を上げると、子連れのクマが自分に向かってきているところだった。母グマの後ろを走る子グマを見て「かわいい」と思ったのもつかの間、母グマが目をむいて「グォー」とうなりながら突進してくる様に、事態の深刻さを知った。
母グマは右手の上腕に咬みついたまま、首を激しく左右に振って山野井さんを倒し、体にのしかかった。顔の真ん中あたりに咬みついた。なんとか逃れようとした山野井さんは、クマを蹴飛ばし、肘鉄を食らわしたが、クマは顔に咬みついたままいっこうに離れない。あんまり強く蹴飛ばすと顔がもぎ取られそうなほどだった。
どれぐらい時間がたったか記憶は定かではないが、おそらく1分ほど格闘したのち、クマが一瞬ひるんだ隙に腹を蹴り、クマから逃れることができた。山野井さんは瞬時に起き上がり、一目散に逃げた。クマは吠えながら100メートルぐらいは追ってきたという。(中略)


山野井さんの話で印象深かったのは、「顔が変形すること」と「トラウマ」についてだ。
「外見にこだわりはないと思う私ですら、自分の顔が以前と違うことを意識した」。見栄えという問題ではなくとも、見目形は重要であり、顔はその人自身を表すものなのだから、精神的ダメージは無理からぬことだろう。(中略)
山野井さんは、これまでいくつもの大事故に遭遇したが、いずれも乗り越えてきた。しかし、クマは違う。(中略)
山野井さんは「この恐怖心は今後も消えそうにない。滑落などの事故は自分で対処していける範囲だけど、クマは違う。生き物は大好きだが、クマの恐怖心は克服できない」と語った。


以上、よかったら図書館で借りて読んでみて。
写真が掲載されていて、非常に生々しく、恐怖がストレートに伝わってくる。
頭部レントゲン写真も載っていて、骨が粉砕されている。

【関連リンク】
熊の生息地なのに無関心すぎる宮崎学さんブログ
「羆嵐」吉村昭

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