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「戦争が遺したもの 鶴見俊輔に戦後世代が聞く」鶴見俊輔/上野千鶴子/小熊英二

2017年08月12日 09時27分23秒 | 読書(昭和史)


「戦争が遺したもの 鶴見俊輔に戦後世代が聞く」鶴見俊輔/上野千鶴子/小熊英二

そうそうたるメンバー。
戦後をテーマに、上野千鶴子さんと小熊英二さんが鶴見俊輔さんに聞く、という趣旨。
座談は、2003年4月11日から13日にかけて、3日間にわたり行われた。

P22
鶴見:だいたいマッカーサー自身が、学校秀才なんだよね。士官学校始まって以来の、ものすごい高い点を取って、お母さんに付き添われて卒業式に行った人なんだ。士官学校の卒業式に、お母さんに付き添われて行くっていうのはすさまじいね。

P81
小熊:上野さん、まあそのあたりでちょっと……。
(これは、慰安婦問題をテーマにしたとき、上野千鶴子が鶴見俊輔にかみついたのを、小熊さんがなだめるシーン。テーマが女性問題になると、つい熱くなってしまう上野さんである)

P98
鶴見:ブッシュというのは、裕福な家の坊ちゃんだね。英語を聞いているとわかるんだ(笑)。だけどイエール大学を出たっていうけど、あれは卒業生900人のうちで、まあ700番くらいだな。

P189-190
小熊:上野さんは、「公=国家」という図式の刷りこみが強くありませんか。
上野:ステイト・ヴァーサス・セックスという図式は、「公共的なもの」と対極に「セックス」があるという考え方ですよね。
小熊:「ステイト」というのは統治機構のことであって、必ずしも「パブリック」と同じではないと考えるのが、政治学の通例だと思いますが……。
(上野さんの思い違いを正す小熊さん…上野千鶴子に対等に口をきくだけでも感心する)

P313
小熊:私に言わせれば、国家や民族は近代資本主義の産物だというのはマルクス主義の常識だったわけで、日本の歴史学でも1950年ぐらいまでは、天皇制も「日本国民」という意識も、明治になってからできたんだと言っていたわけです。アンダーソンの『想像の共同体』も、どちらかといえば、そういった常識的理解の延長で出てきたと思います。出版印刷がナショナリズムをつくったということも、マーシャル・マクルーハンが1960年前後から言っていた。
 それを考えれば、吉本さんの『共同幻想論』は、むしろ国家や民族の起源を、わざわざ古代までひっぱった著作です。それなのに当時の学生が、「初めて国家の呪縛を蹴飛ばしてくれた」と思ったとすれば、それは彼らがものを知らなかっただけのことではないですか。私からみれば、ナショナリズムを近代の産物とみなすアンダーソンと、古代にこだわる吉本さんの『共同幻想論』が、どうして上野さんにとって並列に評価できるのか理解に苦しみますね。(再び、上野千鶴子さんの矛盾を突く小熊さん)

P324-325
上野:小熊さんは解釈を急いでおられますね。昔の私を見るようだ(笑)。
小熊:ごめんなさいね。まだ若いんでしょう。
上野:いまのやりとり、面白かったでしょ。
鶴見:ははは(笑)
(座談会3日目ともなると、雰囲気も和んでくる。このあと上野さんが和菓子を出してきて「いかが」、と。小熊さんも思わず「今回は上野さんに、ずいぶんこまやかな配慮をいただきまして」恐縮している。鶴見俊輔氏も「ねえ、あの上野千鶴子さんに」と、驚いている)

【ネット上の紹介】
アメリカでの投獄、戦時下の捕虜虐殺と慰安所運営、60年安保とベトナム反戦、丸山真男や吉本隆明との交流…。戦争から戦後を生き抜いた知識人が、戦後60年を前にすべてを語る。
原点としての生立ち
ジャワでの捕虜殺害
「従軍慰安婦」との関わり
八月十五日の経験
占領改革と憲法
『思想の科学』の創刊
丸山真男と竹内好
五〇年代の葛藤
戦争責任と「転向」研究
六〇年安保
藤田省三の査問と女性史の評価
吉本隆明という人
アジアの問題と鶴見良行
全共闘・三島由紀夫・連合赤軍
ベ平連と脱走兵援助

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