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「家族の悩みにおこたえしましょう」信田さよ子

2017年07月07日 19時54分36秒 | 読書(家族)


「家族の悩みにおこたえしましょう」信田さよ子

私の知るかぎり、最高レベルの「回答集」である。
まるで、ミステリか心理劇を読んでいるような面白さ。
質問者自身が書かなかった(書けなかった)行間を読み、
今後の道標となる絵を描いて提示している。
感服した。プロの技を見た。

P19
離婚は弱者である女性にとって最終的な切り札です。それを早く出し過ぎると、かえって足元を見られ条件的に不利になりかねません。あみだくじのように順を追って夫が変化する可能性を試し、それを確かめていけば、夫がモトコさんの希望通りの理解を示すこともあるでしょう。それは離婚という最終結論の回避を意味します。もうひとつの切り札である夫のDVについても触れないようにします。効果的に使えるタイミングを慎重にうかがうことにしましょう。
 不自然なほど丁寧な表現を使うのは、非日常的雰囲気を醸し出すことで、モトコさんの覚悟を示し夫との距離を保つために必要だからです。また、論理的破綻を示せば夫から突っ込まれる可能性があるため、「私は~思う」「私は~感じる」といったI-messageに徹することで、夫から介入される隙をつくらないようにします。
 人生の分岐点は、心がけや決心といった心理的レベルではなく、具体的な言葉や行動によっていかようにも推移していく可能性があります。

P24
復讐は狂乱と紙一重の行為であり、精神的ダメージも大きくなります。奥様は自分が崩壊することを覚悟しているのかもしれません。

P28
虐待を受けた子どもたちは、理不尽な経験をする課程で「すべて自分が悪いから」という理由づけを行って世界を理解します。これによって説明不能なことはないので、究極の合理化と言えるでしょう。言い換えれば、虐待された子どもたちは自分を否定することと引き換えに、かろうじて世界の明晰さを獲得してきたのです。ミチコさんにも痛ましいほどの自己否定感の残滓が残っているような気がします。

P33
 かわいそう=自分が救ってあげなければ=誰よりも自分に依存し必要としている、という等式が成立します。必要とされる相手を救うことで、救済者になる快感を味わうことができます。それは、救済対象を支配することで得られる満足感と同義です。この種の関係性に飢えている男性は、年齢を問わず意外に多いものです。

P54
大切な言葉を伝えるには、非日常的な場面を設定しなければなりません。

P56
母親が娘がかわいくないと感じる理由は三つあります。子どもから拒否されていると感じるとき、もう一つは嫌悪する自分の一部を体現していると感じるとき、さらに子どもに嫉妬しているときです。

P58
このように母親としての「自己中心性」こそが、一番の課題だと思います。アユミさんだけではありません。多くの母親が子どもを心配する姿を支えているのが、この自己中心性なのです。

P105
夫婦の不一致は、お互いの様子をうかがい、相手の弱点を突いてやろうという力関係を生み出します。それを察知した子どもは対立から身を守るために緊張と状況察知の感度を高めます。

P134
痛み、不幸、苦痛はきわめて個人的なものであり、比較は不可能だと思うからです。敷衍すれば、個人の尊重とはこのような個人的な負の感覚を比較せずそのまま尊重することに立脚しているのではないでしょうか。小指が痛む人と大腿骨が痛む人を比較してはならないと思うのです。

P138
娘の人生に嬉々として介入して寄生している母親は、自分の人生の不良債権のツケを娘を使ってゼロにしようとしているのだと思います。

P178
 心理学用語が人々に取り入れられるのは相応の理由があります。その好例が性格という言葉です。今や日常用語になったこの言葉は戦後社会において急速に広がったものです。人々は生まれつきの家柄や性別によって決定されるのではなく、平等な人権に基づいて生きることができるようになりました。たとえ建前であったとしてもそのことが憲法に謳われてから、性格という言葉が流通し始めたのです。もともとの性質(たち)や性根、人品とも異なる性格という心理学的な言葉は、個人を尊重し、その結果として個人の責任に帰せられる言葉でした。親がしつけや育児に際して「あの子の性格は~」と語るとき、子どもには性格という目に見えない実体が備わっており、そこに問題があるのだと主張しているのです。子どもの性格は子どものものなのですから、親に責任はなくなります。

P188-100
娘を、妻を、そして家族のことをいったい夫はどのようにとらえているのだろう、と。
 残念ながらそんな詮索はほとんど意味がありません。おそらく夫は「何も考えていない」のです。
(中略)
夫たちの主観的世界は、ほとんどが仕事の論理で構成されています。それは感情を排除し、結果だけがものを言い、努力次第でなんとかなるという信念に裏打ちされています。
(中略)
「自分はまじめに仕事をして家族を支えているのだから100点に違いない。それ以上何が必要なのか」
 これが夫のすべてだと思います。

P209
私たちに与えられた想像力こそが、体験したことのない苦しみに思いを馳せることを可能にします。
 もっとはっきり申し上げると、他者の苦しみを「わかる」ことなど私たちにはできないのです。

【ネット上の紹介】
現場で日々格闘するカウンセラーの著者は、相談者の数限りない不安や悩みに向き合ってきた。また3・11以降、「絆」の時代と強調される状況のなかで、むしろ潜在的な家族の問題が浮かび上がってきたと語っている。 老後の不安、嫁と姑の不仲、不登校、親への暴力、子育ての悩み、アルコール依存症、DV被害、共依存、アダルトチルドレン、結婚への不安……。これらさまざまな人生の悩みを、具体的にどうすれば解決できるのか? 本書は世に出回っている人生相談とは一線を画し、28通りの悩みに、臨床40年のエキスを結晶させて答える。普段のカウンセリングでは表現しきれない、著者の考えを充分に知ることができる貴重な一冊。
64歳の夫との将来の生活に不安をおぼえます
妻が不安定で困っています
親になるのが怖いのです
妻より姉の面倒をみたいのです
二人の子どもが結婚しません
どうして私は腹が立たないのでしょう?
娘から毎日のように責められます
浮気する妻に対して怒れません
長女がかわいく感じられません
別居して戻ってきた娘が私を責めます〔ほか〕

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