「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。

小林多喜二を通じて、現代の反貧困と反戦の表象を考えるブログ。命日の2月20日前後には、秋田、小樽、中野、大阪などで集う。

戦時下の画家たち展―板橋区立美術館 1/21まで

2008-12-22 09:27:30 | 多喜二の美術
佐伯祐三を紹介したついでに、以下の展覧会もごらんになることをお勧めしたい。

20世紀検証シリーズNo.1
新人画会展
――戦時下の画家たち 絵があるから生きている

板橋区立美術館
2008年11月22日(土)~2009年1月12日(祝)

午前9:30から午後5:00
(入館は午後4:30まで)

月曜日
ただし11月24日・1月12日は開館し11月25日は休館、年末年始(12月29日~1月3日)

以下は、同美術館ホームページより。

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 「新人画会」は、第二次大戦末期の1943年に靉光、麻生三郎、糸園和三郎、井上長三郎、大野五郎、鶴岡政男、寺田政明、松本竣介の8人の画家の交友により結成されました。

言論や表現への制限が敷かれた時代であっても、彼らは描きたいものを描き、空襲警報の鳴り響く銀座で展覧会を開きました。戦争による混乱やメンバーの死により、展覧会はたった3度開かれたのみでしたが、彼らの作品や活動は今も語り継がれています。

 本展は、新人画会展出品作のみならず、貴重な戦前の作品や戦後の日本の美術史に残る8人の作品を一挙に公開いたします。また、新人画会展の開催された画廊の再現と共に、当時の写真や資料も展示し、新人画会の時代の空気もご紹介いたします。

 「絵があるから生きている」これはメンバーの一人、寺田政明さんが戦後、新人画会について語った言葉です。自分の描きたいものを描き、生きること、新人画会の8人の画家の作品から考えてみませんか?


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一般600円
高・大生400円
小・中学生150円
20名以上団体割引、65歳以上高齢者割引、身障者割引あり
毎週土曜は小中高生無料

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展示内容
油絵約80点
その他資料(写真、印刷物等)



  作家名列/ 作品 /制作年/ 技法・材質/ 所蔵者
1 井上長三郎 風景(下板橋) 1926-27年 油彩・キャンバス  
2 糸園和三郎 静物 1929-30年頃 油彩・キャンバス 大分県立芸術会館
3 靉光 キリスト(黒) 1932年頃 グワッシュ、墨・紙  
4 寺田政明 海辺の花束 1936年 油彩・キャンバス  
5 大野五郎 異国の子 1936年 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
6 靉光 葡萄 1934年 油彩・板 練馬区立美術館
7 糸園和三郎 無題
(デカルコマニー) 1938年 水彩絵具・紙 名古屋画廊
8 鶴岡政男 髯 1935年 墨・紙  
9 井上長三郎 静物(骨と布) 1935年 油彩・キャンバス  
10 寺田政明 宇宙の生活 1938年 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
11 麻生三郎 リュ・ヴァンダム 1938年 油彩・キャンバス  
12 麻生三郎 ファリゲール 1938年 油彩・板  
13 松本竣介 お濠端 1940年 油彩・キャンバス 横須賀美術館
14 松本竣介 黒い花 1940年 油彩・板  
15 松本竣介 街にて 1940年 油彩・板 下関市立美術館
16 井上長三郎 スエズ 1943年 油彩・キャンバス 横須賀美術館
17 井上長三郎 トリオ 1943年 油彩・キャンバス  
18 麻生三郎 花(アマリリス) 1943年 油彩・キャンバス  
19 麻生三郎 自画像 1943年 油彩・板  
20 松本竣介 鉄橋近く(下絵) 1943年 木炭・墨・紙 板橋区立美術館
21 靉光 海 1943年 油彩・キャンバス 広島県立美術館
22 大野五郎 静物 制作年代不明 油彩・板  
23 松本竣介 Y市の橋 1943年 油彩・キャンバス 東京国立
近代美術館
24 松本竣介 並木道 1943年頃 油彩・キャンバス 東京国立
近代美術館
25 寺田政明 月光によりて 1943年 油彩・板 広島県立美術館
26 寺田政明 花 1943年 油彩・キャンバス 広島県立美術館
27 麻生三郎 花 1943年 油彩・キャンバス サヱグサギャラリー
28 麻生三郎 うつぶせ 1943年 油彩・キャンバス  
29 麻生三郎 女 1943年 油彩・キャンバス 神奈川県立
近代美術館
30 麻生三郎 女 1943年 油彩・板  
31 麻生三郎 女 1943年 油彩・キャンバス 広島県立美術館
32 松本竣介 りんご 1944年 油彩・板 小野画廊
33 寺田政明 花と骨 1943年 油彩・キャンバス 練馬区立美術館
34 寺田政明 さかな(悲哀) 1943年 油彩・板 広島県立美術館
35 麻生三郎 女 1944年 油彩・板  
36 麻生三郎 一子像 1944年 油彩・キャンバス  
37 麻生三郎 子供 1944年 油彩・板  
38 麻生三郎 紫陽花 1944年 油彩・キャンバス  
39 大野五郎 喜久枝 1943年 油彩・キャンバス 八王子市夢美術館
40 大野五郎 婦人像 1944年 油彩・キャンバス 八王子市夢美術館
41 井上長三郎 風景 1944年 油彩・キャンバス  
42 靉光 静物(雉) 1941年 油彩・キャンバス 東京都現代美術館
43 靉光 静物(魚の頭) 1941年 油彩・キャンバス 広島市現代美術館
44 靉光 花と蝶 1941-42年頃 油彩・キャンバス 練馬区立美術館
45 靉光 グラジオラス 1942年頃 油彩・キャンバス 横須賀美術館
46 靉光 ダリア 1943年 油彩・キャンバス 府中市美術館
47 靉光 花 1944年頃 油彩・板 府中市美術館
48 井上長三郎 王朝の森(巴里) 1941年
/後年改作 油彩・キャンバス 横須賀美術館
49 井上長三郎 漂流 1943年
/後年改作 油彩・キャンバス  
50 松本竣介 橋(東京駅裏) 1941年 油彩・キャンバス 神奈川県立
近代美術館
51 松本竣介 立てる像
12/3より展示 1942年 油彩・キャンバス 神奈川県立
近代美術館
52 寺田政明 昆蟲(化石) 1941年 油彩・キャンバス 福岡市美術館
53 寺田政明 野菜など 1943年 油彩・キャンバス 広島市現代美術館
54 寺田政明 かぼちゃと山 1943 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
55 糸園和三郎 犬のいる風景 1941年 油彩・キャンバス 大分県立芸術会館
56 糸園和三郎 少女像 1943年 油彩・キャンバス  
57 糸園和三郎 歩行補助器 1943年 インク・紙 名古屋画廊
58 大野五郎 俊介君 1940年代 油彩・キャンバス 八王子市夢美術館
59 大野五郎 俊介君 1945年 油彩・板 八王子市夢美術館
60 靉光 梢のある自画像 1943年 油彩・キャンバス 東京藝術大学
61 松本竣介 彫刻と女 1948年 油彩・キャンバス 福岡市美術館
62 鶴岡政男 死の静物
(松本竣介の死) 1948年 油彩・キャンバス 神奈川県立
近代美術館
63 鶴岡政男 若い男 1947年 油彩・キャンバス 横浜美術館
64 鶴岡政男 薬を飲む女 1948年 油彩・キャンバス 浅尾空人
65 鶴岡政男 二人 1949年 油彩・キャンバス 広島市現代美術館
66 鶴岡政男 重い手 1949年 油彩・キャンバス 東京都現代美術館
67 鶴岡政男 物乞う人
(辻楽師) 1950年 油彩・キャンバス 練馬区立美術館
68 鶴岡政男 いちゞく 1950年 油彩・板 浅尾空人
69 大野五郎 俊介の像 1946年 油彩・キャンバス 広島県立美術館
70 大野五郎 婦人像 1948年 油彩・キャンバス 八王子市夢美術館
71 大野五郎 三人 1969年 油彩・キャンバス  
72 寺田政明 灯の中の対話 1951年 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
73 寺田政明 自画像 1966年 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
74 糸園和三郎 老夫 1946年 油彩・キャンバス 東京都現代美術館
75 糸園和三郎 風船と少女 1949年 油彩・キャンバス 大分県立芸術会館
76 糸園和三郎 母子像 1952年 油彩・キャンバス 大分県立芸術会館
77 糸園和三郎 鳥をとらえる女 1953年 油彩・キャンバス 大分県立芸術会館
78 糸園和三郎 像 1955年 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
79 糸園和三郎 架 1955年 油彩・キャンバス 大分県立芸術会館
80 井上長三郎 東京裁判 1948年 油彩・キャンバス  
81 井上長三郎 静物 1950年 油彩・キャンバス  
82 井上長三郎 復古調 1966年 油彩・キャンバス  
83 井上長三郎 白い椅子 1969年 油彩・キャンバス 板橋区立美術館
84 麻生三郎 赤い空と人 1957年 油彩・キャンバス 横須賀美術館



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小林多喜二と佐伯祐三

2008-12-21 10:15:44 | 多喜二の美術
2008年12月21日放送のNHK「佐伯祐三  パリの下町へのまなざし」を見た。

高橋源一郎さん(作家)氏のコメントに共感した。
高橋氏のコメントは、佐伯が過ごした1920年代のパリを現代の格差社会にも通じる社会状況とし、そこに多喜二と佐伯の同時代性をみ、佐伯が作品に込めた鬼気迫る思いを探ろうとするものだった。

佐伯祐三の絵画展は1920年後半に札幌でも開催され、そこで多喜二は佐伯の絵画を見ている。

多喜二はその作品にほれ込み、盗んででも自分のものにしたいと友人の一人に語ったという(もちろん、実行されることはなかった)。

多喜二もまた、画家を志望した時代があった。おそらく、佐伯の作品を見て、自らの限界を知りもしただろうが。






                 ◇
没後80年を迎えた洋画家、佐伯祐三(1898~1928)。1920年代後半、パリの下町の光景を繰り返し描いた。それまで誰も描かなかったような裏通りの荒れ果てた酒場や、靴屋など、その作品は人々の生活を色濃く感じさせる。佐伯はなぜ下町にひきつけられていったのだろうか?
佐伯は、東京美術学校を卒業し、絵を学ぶためにパリへ渡った。自信作の裸婦を携えて巨匠ヴラマンクを訪ねるが、その作品をアカデミックだと激しく批判される。自分だけの表現とは何か、苦悩の果てにたどりついたのがパリの下町だった。汚れた壁やはがれかかったポスターに美しさを見いだし、華やかな表通りに背を向けるようにして制作に没頭していく。佐伯は、工場が連なる大阪の下町に生まれ育ち、労働者や農民を数多く描いたゴッホを心から尊敬していたという。創作の根底には、労働者への深い共感があったことが浮かび上がる。しかし、佐伯が人物を描くことはほとんどなかった。それは一体なぜなのか?
番組では、現代の格差社会にも通じる当時のパリの社会状況を絡ませながら、佐伯が作品に込めた鬼気迫る思いを探る。


写真は、小樽文学館に寄贈された多喜二の絵画を紹介する、玉川学芸員。

以下に、佐伯の晩年の年譜を紹介する。

1923(大正12) 25歳= 東京美術学校西洋画科卒業、同級生等と卒業後の発表グループとして「薔薇門社」を結成し第一回展。1月フランスへ向け家族とともに出発。 「自画像」「裸婦」「パレットを持つ自画像」

関東大震災

1924(大正13)26歳=1月パリ着、3月パリ郊外のクラマールに移住
初夏、里見勝蔵の紹介でフォービズムの実力者ヴラマンクを訪ねるが「アカデミズム野郎」と怒号を浴びる。11月モンパルナスのリュ・デュ・シャトーに移住
「ノートル・ダム」「パリ郊外風景」「立てる自画像」


1925(大正14) 27歳= 6月兄祐正を迎えにマルセイユへ、アヴィニヨン、アルルなどゴッホの足跡を追う。第18回サロン・ドートンヌ展に米子とともに入選。11月体調を崩し病床に就く、病身を心配した祐正のすすめで帰国に同意
「エッフェル塔の見える通り」「リュ・デュ・シャトーの歩道」「ノートル・ダム(マント・ラ・ジョリ)」「壁」「コルドヌリ(靴屋)」「煉瓦屋」「村役場」「アネモネ」「人形」
東京放送局、ラジオ放送開始

1926(昭和 1) 28歳= 3月帰国、光徳寺に帰る。
木下、前田、小島らと「1930年協会」結成第一回展を開催 第13回二科展に特例として19点出品二科賞受賞、米子も入選。
下落合風景連作、再び渡仏の準備を始める。
「滞船」「蟹」「肥後橋風景」「下落合風景」
クロード・モネ没

1927(昭和 2) 29歳= 第2回1930年協会展開催、8月再び一家でパリに向かう 10月プールヴァール・デュ・モンパルナスに落ち着く。
第20回サロ・ドートンヌ展に入選、「カフェ・レストラン」の連作始まる 
「リュクサンブール公園」「広告塔」「新聞屋」「ガス燈と広告」「カフェ・レストラン」「鐘楼のある風景」。

金融恐慌起こる 
リンドバークが大西洋無着陸横断飛行に成功

1928(昭和 3) 30歳= 2月山口、荻須らとパリ郊外モランへ写生旅行
3月小雨の中の写生がたたり風邪をひき喀血、病床に就く。翌月リュ・ド・ヴァンブへ転居し療養、6月親友山田が渡仏見舞いに訪れるが、結核とともに精神分裂症気味となり重症、自殺騒ぎを起こす 
椎名らの尽力でヴィル・エブラール精神病院に入院療養するも8月16日午前11時過ぎ30年の短い生涯を閉じる。同30日彌智子も後を追う。 


11月光徳寺で本葬、祐三の戒名は「巌精院釈祐三」、彌智子は「明星院釈尼祐智」


「サン・タンヌ教会」「パンテオン」「一軒の家」「モラン風景」「モランの寺」「煉瓦焼」「扉」「黄色いレストラン」「郵便配達夫」「ロシアの少女」

日本で初の普通選挙

アムステルダム五輪で織田、鶴田が初の金メダル獲得


コメント (1)
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